映画@4月
◆パフューム
パトリック・ジュースキントの小説、「香水 ある人殺しの物語」(1985年)の映画化。
監督:トム・ティクヴァ
数キロ先の匂いまで嗅ぎ分けられる、
超人的な嗅覚を持った孤児・ジャン=バティスト・グルヌイユ。
町で出会った赤毛の女性が放つ匂いに惹きつけられたグルヌイユは
匂いを永久に保存する技術を学びたいと最下層から這い上がり、香水調合師に弟子入り。
そして、もっと高度な技術を学びにグラースという町へ行く。
そこで出会った美しい少女・ローラの放つ匂いが、以前出会った運命の香りと同じだったことから
その香りを求め、グルヌイユは禁断の香水を創りはじめる。
目的にへ盲目的に向かっていく。
天才的な能力をもつ反面、善悪の判断に欠け、自らの体臭がない彼は
どこか生身を感じない。
でも、彼は人として愛されたいという内なる切望を静かに表し、禁断の香りをもって昇華する。
香りを漂わせる映像。
香りを感じる音楽。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が映画音楽を担当するのは初めてなのだそう。
香りというのは、さまざまな記憶や感情を思い出させるが、手に取ることはできない。
手の間からすり抜けていく砂のよう。
観終わった後は、そんな感覚が残る。
ちなみに、グルヌイユはフランス語で「カエル」なのだそう。
フランスではカエルは食材として用いることが普通なんだよね。
それを踏まえると、グルヌイユの最後はファンタジー的な中にも怖さがある。
◆絶対の愛
ここのところ観まくっているキム・ギドク監督の最新公開作。
原題は『TIME』
流れていく時間には逆らえない。
愛も止まったままではいてくれない・・・と思う脅迫観念。
恋人・ジウに「いつも同じ顔でごめんね」っていうセヒは
新しい顔でジウの心を繋ぎとめようとする。
その真実を知ったジウは意外な行動に出る。
・・・整形返し?!
顔を整形し、名前をスェヒに変えたけど、中身はまんまセヒなわけで
ジウがスェヒに惹かれていくのは望んでいたことであるのに
なんだか虚しい・・・
整形大国と呼ばれたりする韓国では、すぐさま思いつく
「恋人を繋ぎとめる方法」なのかも知れないけれど
結局、非常に複雑な心情が自分を支配する。
スェヒを演じたソン・ヒョナは二重瞼と歯茎の整形をカミングアウトした女優。
涙で化粧が流れ落ち、鼻水がたれた顔がアップになろうが渾身の演技で
狂気の沙汰へ進んでく彼女に引き込まれる。
どのギドク作品も、ところどころ芸術の香りを漂わせている。
監督自身がフランスに美術留学するぐらいだからだね。
この劇中、何度か出てくるペミクミ彫刻公園。
その中の、左右の手が上下に並び、その先に天空へ続く階段がある彫刻がすごくいい!
潮が満ちて海の中に浮かぶこの彫刻もまた幻想的。
(ご興味あるかたは「絶対の愛」公式HPに画像があるので見てみてね)
愛する思いが強いゆえ、
メヴィウスの輪に絡めとられたジウとセヒはスェヒを伴い
永遠に抜け出せないのだろう。
ギドク監督にまたまた降参です。
♪「この映画がすごい!」5月号(宝島社)に
私が大好きな俳優・大森南朋さんとギドク監督の対談がっ!!
ぜひこの二人が組んだ作品が観たいーーーーーっ
もし、実現したら舞台挨拶付のチケット頑張って取るぞぉ ===33
◆蟲師
漆原友紀原作の人気漫画を実写化。
監督・脚本の大友克之さんは「AKIRA」の原作者
小学生だった頃、映画「AKIRA」を観てめちゃくちゃ衝撃を受けたのを今でも思い出す。
細かいものがザワザワと大群で動くのが苦手の私は、予告編をみて「うぅ。ダメかも。」と思ったけれど
大友監督に、オダジョー・大森南朋さん・蒼井優さん・・・と、好きな俳優さん達ばかりということで
逃しては後悔する!と思い観てきた。
ストーリーはそんなに複雑ではないけれど、ちょっとギモンに思っちゃうと理解できなくなるかも。
ラストは特に。でも、個人的には好きな物語。
VFXを用いての画は実写と相まって、ものすごく幻想的かつ、幽玄的。
妖怪でも精霊でもない蟲。
人に害を与えるためではない蟲。
その蟲と共存するために、蟲を癒し、人を癒す蟲師。
俗にいう「むしの知らせ」は、この蟲たちの知らせ。
汚れていない自然が豊かだった頃は、人々は見たり感じたりできたはず。
でも、現代でも「むしの知らせ」を感じとることができるのだから、
まだまだ人間が昔持っていた能力はあるのかも。
◆イカとクジラ
監督賞や数多くの脚本賞を受賞した作品。
監督・脚本:ノア・バームバック
1986年NY・ブルックリン。
元人気作家のパパと現在人気作家のママが突然離婚!!
二人の息子・ウォルト16歳とフランク12歳が大人の事情に振り回される。
親に褒められたくて、ピンク・フロイドの曲を自作の曲としてコンテストで歌い、
優勝しちゃったり(あとでパクったのがバレ、セラピー通いさせられちゃう)
母親に暴言を吐いて反発するウォルト。
学校での素行が問題になったり、ビールを飲んだり
父親に反発する割には、母親の浮気に妙に冷静なフランク。
大人になりきれない両親と大人になりたい子供たちの
ユーモアとリアリティのある物語。
思春期の不安定な揺れとあがきをしっかりと表現していた二人。
ウォルト役のジェス・アイゼンバーグは新人(らしい)とは思えぬ演技。
フランク役のオーウェン・クラインは、ケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの愛息だそう。
フィービー・ケイツ、なつかしー! 「グレムリン」に出ていた少女ですよー。
俳優の両親の血をしっかりと受けついでいるようです。
両親が作家という、監督自らの環境が設定元になっているのだそう。
いろいろな作家やプロテニスプレイヤーの名前が出てきたりして、
私には“?”なところもあったけど(笑)
監督にとっては普通の会話だったに違いない。
ママは母性はあるけれど過去を振り返らず、前を見ている。
でも、パパを筆頭にウォルトとフランクも、結局はママとの思い出を大切に持っていて
それを愛でながら過去と戯れている感じ。
男女の特徴を現しているなぁ。
◆プラダを着た悪魔
かなり世間の流れに乗り遅れてますが・・・いまさらです(笑)
監督:デビット・フランケル
衣装:パトリシア・フィールド
ストーリ的にはちょっとありふれている感があるけど
ファッション業界の一部を垣間見れて面白かった。
鬼編集長・ミランダを演じたメリル・ストリープは、さすが!の演技力と存在感。
ミランダの第二助手・アンディを演じたアン・ハサウェイはもともと可愛いけど
どんどん垢抜けていくさまは ほぅっ としちゃう。
最後、多くのことを学んだアンディは着飾らなくても凛として美しい。
さまざまなメゾンの名前が出てきたり、パリコレの様子が出てきたり
次々と変わるミランダやアンディ、その他の人々のファッションを見ていると
映画を観ているというより、ファッション雑誌をパラパラとめくっているよう。
いろいろな人間模様がでてくるけど、ドロドロしていなくて後味サワヤカ。
ファッションに興味のある人なら、観終わったあとウキウキした気持ちになるんじゃないかな。