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2015-10-25

[][]多彩な牛と多彩な育て方と美味い牛肉とステーキ『ステーキ・レボリューション』

フランス映画だが、導入は「フランスの牛肉はまずい」から始まる映画。

アメリカアルゼンチン、ブラジル、カナダ、イギリス、フランス、日本、スウェーデンと美味い牛肉を求めて旅をする。

美味い牛肉で美味いステーキトップテンというのをやってはいるが、あくまで添え物に過ぎない。

この作品では、

・牛をどうやって育てているか

・どのように育った牛を出荷するか

・牛肉をどうやって調理するか

を世界あちこちの畜産農家と精肉店、料理店をめぐって見ていくことが本題だ。


飼料は穀物か、牧草か

放牧か、厩舎か

出荷する年齢は何歳か

雌牛か、雄牛か、去勢した雄牛か

など国によって異なる姿が見られる。


ただ、制作者の中で一つだけスタンスが決まっているのは

・牧草で育てる

という点だ。その方がエコロジーだからという。

味の面でも、穀物飼料を食べている牛は肉質や風味が牧草を食べている牛に比べて劣っているとのことだ

実のところエコロジーなのかどうかは分からないが、味の面は理解しやすい。


日本の牛では神戸牛と松阪牛が出てきた。

松阪牛のステーキは絶賛されていた。よく言われるところの「溶ける」「消える」という表現でだ。

トップテンの中の3位に入っていた。

ただ、牛の育て方については穀物飼料を与えてるところがあまりお気に召さなかったがようで、

最後に「エコロジーではないね」と一言残している。


1位になったのはスペインの牛。

牧草は食うわ、穀物は食うわで更に10年レベルで育てている。

作中に出てきた牛は2トンもの巨体となっている。凄まじく高そうだ。

よく生活出来ているなとも思える。

作中の初っ端に出てきたアメリカのステーキ店(非常に美味しいステーキを提供する店)の社長もびっくりである。

30ヶ月で出荷される牛を主に取り扱っているその店のスタイルと、スペインとはどうしてもそぐわない。

所謂牛肉ってこういうものでしょというのがホントに狭い範囲の話なんだと思えるシーンだった。



他にも

・ブラジルで育てている牛はブラジル人も美味い牛とは思っていないが、この牛しかブラジルでは健康に育たない

アメリカの農務省は大きな牧場の牛を管理するのに手一杯で小さな牧場まで手が回っていない

・季節によって食べるものが変わるから、牛の味も変わる(どんぐりを食べるとヘーゼルナッツの風味になるらしい)

とかその辺の事情が盛り沢山の内容だし、何よりも世界の牧場の景色が見られるのが良い。

まあ映像の出来はお察しではあるのだが……。

なお、オーストラリアや中国から東欧までは出番がなかった。

この辺の牛はどうなんだろうか。


美味い肉ってなんなんやろうなあと思える美味しい映画だった。

2015-10-17

[]制作者も含めて空気を読む作品『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

原題は『エルザー』。主人公の名前。

ぶっちゃけ原題ママのほうが作品には合っているのだが、

何の映画かわかりづらいのでヒトラーの名前は入れておきたいしこんなものなのかもしれない。


主人公エルザーは事実なのか何なのか知らんが(私生活はフィクション多めみたいな注釈があった)、

かなり下半身で生きている男だ。

家から出て女遊びを楽しみ、故郷に戻っても人妻に手を出すという様。

家で一人で済ませる娯楽のない時代ってのはこんなものなのかもしれない。

人妻に手を出して孕ませるタイプの主人公が好きかというとそれほどではないので

私生活の面では到底共感できないキャラだ。

俳優の口角を片側だけ上げる笑い方もこの助平な主人公の印象を高めている。

これで良いのか悪いのか謎だ。


産ませた子供が死んでしまった辺りから

「ヒトラーが死なないとドイツがヤバい」という正義感に突っ走って犯行に及ぶ。

自由自由だとノンポリぶっこいてて、でもちょっと赤いのも興味あったりして……なんて描かれ方だから

ふわふわしてたけど、なんかヤバそうだし殺そ。というちょっとキレた主人公だ。


労働者の給料がヒトラーになってから下がったとかその辺はかなり赤い情報から仕入れてそうだ。

その当時の情報がどの程度のものなのか知らないが、この辺の情報を鵜呑みにするのは、

主人公の愚かしさの表現かもしれない。

ネーべが最初に登場したところで、統計の取り方に苦慮している様子が見られたし、この辺は取り扱い難しそう。


主人公は置いといて、この作品の面白いところは2点あって、1点目は村がナチスの一部となっていくところ。

ナチスとの折り合いを付けていくところだ。

頭までナチスになるわけではなく、あくまで外形としてナチスを受け入れていく様子が面白い。

村長のような登場人物が、なるべく人的被害を抑えながら村を維持しようとするところ、この理性的な様。

ただ、ナチスの締め付けが強くなれば当然それに歩調を合わせないといけない。

上に立つ、とは言っても中間管理職のような村長のナチスとの距離感は非常に面白い。


2点目はエルザーを尋問するネーべらの姿である。

彼らも中間管理職なのだ。

妥当な回答とヒトラーの望む回答の間で何度も何度もエルザーにチャレンジしていく姿はなんとも辛いものがある。

上に立つ者が自らの回答を望み始めると、下の者はその回答を捻り出さないとならない。

なんとも厳しい問題だ。


人妻エルザはエルザーを生涯愛し続けたとかEDテロップで書いてあったけど、

ならあの最後の別れのシーンは何だったのか。

この辺の空気を読んだところは割と多く、

ネーべが、エルザーを評して「アイツは信念を持った男だ。この目を見れば分かる」とかいう主人公持ち上げがあったりした。

どうも気に入らないところだ。


ドイツの景色は綺麗だった。

映像も良かったし。ちょっとフィルターの効果に頼ってるような気がしないでもないが。


作中に描かれたあの頃のドイツに比べ、今の日本はそこまで夢がないと思う。

科学とそれに伴う進歩があって豊かになれてそれを先導するのがヒトラーなんだという表現がある。

つまりヒトラーという存在には夢があった。夢中にさせるものがあった。

でも、今の日本にそこまで進歩できるような夢はない。

悲しいかな熱狂は出来ない。