桜庭一樹×桜坂洋トークショーに行ってまいりました。憶えていることをメモ。間違ってるところがあれば、ご指摘を。


司会はリアルフィクションの偉い人、塩澤編集長でした。まずは前フリ。

・「麻耶雄嵩講演会」「東浩紀滝本竜彦 講演&トークセッション」がある中、こちらに来てくれてありがとう
・今回のトークショーの名目は、ハヤカワ文庫で出版された『ブルースカイ』『スラムオンライン』の刊行記念
・だったのですが、実は文学フリマの宣伝です

塩澤さんは、話がそれそうなときに、あの話は、この話は、とちょっとずつ修正してくれて、良かったです。基本的にトークはお二人にお任せ、というスタンスでのぞんでくれたので、話も盛り上がりました。

それより観客が……でした。トークに入ってくる人がいて。ああいうのは勘弁してほしいよね。ちなみに観客は男性9割。


まずいきなり「私に謝ってください」と桜庭さん。ものすごいチョップを桜坂さんの胸に入れてました。ステキ。

なんでも文学フリマの原稿の第5章が全然あがってこないそうで(桜庭さんは、第6章、7章をすでに書いてるとか)。

桜坂さんは、こんなもんですよ、泰然自若。秋葉原でゲーム買ってくる余裕ぶり。そのゲームは桜庭さんに取られてしまいました。萌え。

そもそも桜庭さんの原稿が早すぎるという話に。その点は、塩澤さんも同意。桜庭さんの一日の執筆スケジュールですが、昼前に起きて2時ぐらいまでに毎日15ページ書いてるそうな。

ぼくはこのとき深夜2時かと思っていたのですが、書き終わったら、お出かけしたり、空手のお稽古に行ったり、という話をしていたので、どうやら昼の2時までに15ページ書き上げてた模様です。これを毎日。激速。


このコンビが生まれたきっかけについて。桜庭さんが日記を印刷していて、その日記を見ながら、その経緯を説明。

・出会いは徳間のパーティ
・眼鏡が好きだったので、帯で交換メッセージをすることに
・やっぱり桜坂さんの原稿があがってこないので、SF大会で対談
文学フリマに出したい桜坂さん、ひとりで寂しいので桜庭さんを誘う

微妙に混ざってますが、ざっくりとこんな感じ。


桜坂さんが文学フリマに出す動機として、

・自分は物語を理屈で固めてしまう傾向があり、登場人物の感情・心の描写が苦手
・その部分が弱点である、と自分でも認識しているので、これをきっかけに桜庭さんのその辺りの技術を吸収したい
・元々コミケっ子なので、こういったイベントが好き

桜庭さんは、おもしろそうだな、じゃ、やってみるか、ぐらいのニュアンスでした。


文学フリマで出す作品ですが、現在、150ページまで書きあがってるそうです。予定では200ページだとか。普通に本です。

テーマは「メタ・ライトノベル・ラブストーリー」。誘ったのは桜坂さんだけど、なぜか第1章を書かされる。桜庭さん、おおいに悩む。

一応、書いてだしてみたが、違う、メタじゃない、と駄目出しされてるらしい。まあ、確かに、私は桜庭一樹である、という書き出しは古いと思う。


この本、かなり早い段階で売り切れると思う。ユヤタン、イータン、マイジョー、Jのときみたいになりそう。欲しい方は早めに行ったほうがいいですよ。

ちなみにトークショーに参加した人全員に引換券を配ってました。ぼくはこれで確実ゲットです。


リアルフィクションについて。元々は塩澤さんが、『マルドゥック〜』『デス・タイガー〜』を出すときに考えたキャッチコピー。そんなに深くは考えてなかったらしい。

桜坂さんは、日常に中にSF設定を落とし込んだもの、と認識している(違うかも)。桜庭さんは、漠然としたイメージはあるものの、うまく消化しきれてない模様。

とりあえず、中心に小川一水さん(もっともリアルフィクションから離れているけど)がいるから、こっちは好きにできる、と言ってました。


『ブルースカイ』について。SFということで、どういうものを書いたらいいか、相当悩んだとか。で、結局、

「箱庭があって、その中を自由に行き来ができるような設定を考えた。その箱庭から出ることはできない。で、その中を動き回る少女がいて、いったいどんなことを考え、行動するのか、そういったものを表現しよう」

というアプローチで書き上げたそうです(と、ぼくは認識しました)。

各エピソードの繋がりが薄いというのが、ぼくの『ブルースカイ』に対する不満でした。桜庭さんのアプローチ自体が、それぞれのエピソード・舞台に対して、その中に入り込んだ少女がどう動くかを描こうとしたのだから、繋がりが薄くなったのは、そこが原因かと納得しました。

スラムオンライン』の話はほとんど出ませんでした。


ちょっと横道。

小説というのは、「キャラクタ」、「設定」、「エピソード」の3つの要素が大きいと思っているのですが、このうち桜庭さんは「キャラクタ」、桜坂さんは「設定」をメインにすえられている(意識的か無意識かは別にして、そういう印象を受けた)。

桜庭さんの『ブルースカイ』に対しては、「キャラクタ」と「設定」はおもしろかったので、もっと「エピソード」をねってほしかった(そのように思う理由としては、時間移動ものだと、どうしても『夏への扉』が頭の片隅に残っているせいもある)。

桜坂さんは、ご自身が認識されている理屈っぽい、という弱点ですが、それは「設定」のおもしろさ、を追求することになるので、そこのところがスポイルされないようにしてほしいな、と思いました(読んだことないんですが)。『よくわかる現代魔法』はそんな感じなんですかね。アシモフみたいなのかな?(勝手なイメージ)


神林作品のベストは、桜坂さんは『敵は海賊』シリーズ、桜庭さんは、『七胴落とし』。新井素子作品も言ってたんだけど、覚えてない(すいません、新井作品は読んだことないんで)。


他に印象に残ったトーク

・桜坂さんは、ガンダムが好きらしい
・桜庭さんは、ガンダムには興味がないらしい
・必死に桜庭さんに説明するらしい
・↓マ=クベの最後の言葉について、説明したことがあるらしい
 「……あの壺をキシリア様に届けてくれ!あれはいいものだぁ〜!」
・「壺って何ですか、それ?ダイイングメッセージですか?」と聞いたらしい

まあ、間違ってはないよね。


出版予定について。憶えているのだけ。

桜坂さん:
分厚いノベルスを出してる出版社から、ノベルスを出す予定(講談社?)

桜庭さん:
これまでの日記やコラムから、桜庭一樹日記の出版順中(サブタイトルは「スタンドアップ桜庭一樹」にしましょう by 桜坂)

塩澤さん:
桜庭×桜坂での共同作品を企画中(形態としては『冷静と情熱のあいだ』みたいになるんだけど、イメージが全然あわない)

※新作にするのか、文学フリマで出したものを焼きなおしたものになるのかは、はっきりと言われなかったので不明です


とりあえず、憶えている限りを書きました。こんなに長くなってしまった。いつの間に。俺フィルタが入ってるんで、あんまり鵜呑みにしないでね。これからICレコーダーを用意して、録音しよう。

全体の感想。

桜庭さんは、少女がいて、この少女はどういうことを考え、どのような行動をとるだろう、っていうところから、物語を書くのをスタートしている。

その少女視点の小説は、桜庭さんの特徴で、そこが良い点だとは思うけど、今後その枠組みで極めていくのか、その枠を取っ払うか、興味が湧きました。

桜坂さんの作品は読んだことないんですが、良い人ということは分かりました。質問の裁き方が見事です。お前が桜坂さんに謝れ、と思いました(その場にいた人にしかわからないことです)。

大森望さんが来てました。お元気そうで何よりです。良かった良かった。