世界一狙い「虚業」 違法も二人三脚

世界一狙い「虚業」 違法も二人三脚 
 時代の寵児(ちょうじ)が、頂点から転げ落ちた。ライブドア(東京都港区)グループによる証券取引法違反事件で23日、同社社長、堀江貴文容疑者(33)が逮捕された。出頭直前の午後3時、記者が携帯電話にかけると堀江社長は「あの、取材は受けかねます」と丁寧に答えて切った。「人間を動かすのはお金です」。自著でそう言い切った起業家の「株の時価総額世界一」という野望は、道半ばでついえた。

 関係者によると、堀江社長の聴取は午後4時前から東京都内のホテルで始まった。6時半ごろ東京・霞が関東京地検に移送され、その後、右腕の取締役、宮内亮治容疑者(38)ら他の3人とともに逮捕状が執行されたという。

 「迷惑をかけるかもしれない」。堀江社長はグループが強制捜査を受けた16日深夜、うわずった声で知人の女性社長に電話をかけ、弱気な一面を見せたという。

 しかし、22日のブログでは「疑いをかけられている件につきましては私は身に覚えがない」と容疑をきっぱり否定してみせた。関係者の事情聴取が進む中、連日深夜まで、会社と自宅がある六本木ヒルズで対策会議に追われた。

 堀江社長は福岡県八女市出身。市立岡山小学校時代は「5分で100点満点を取る神童」と呼ばれた。進学校として知られる久留米大付設中・高校に進学。ソフトバンク孫正義社長は高校の先輩にあたる。中学で物理を教えた深山重行さん(82)は「生徒に電動モーターで推進する木製の模型ボートを作らせたら、彼だけはかじを無線制御できるよう改造していた。当時からみんなより頭一つぬきんでていた」と振り返る。

 高校の時、下から10番目まで成績が落ちながら「東京に行く」と決めた。1日10時間の勉強を課し、現役で東大文3(文学部)に合格した。だが、高校では目立たなかった。同級生たちは「いたかいないかもよく分からないやつだった」と言う。

 在学中の96年、ホームページを制作する有限会社「オン・ザ・エッヂ」を設立した。資本金600万円は当時の恋人の父親から借りた。六本木の7畳しかない雑居ビルの一室に事務所を構え、社員はわずか数人だった。

 宮内取締役は高校野球の名門、横浜市立横浜商業高校(Y校)の元野球部選手。外野手だったが、ベンチ入りはできなかった。卒業し、税理士になった。28歳の時、インターネットのサイトが縁で知り合った堀江社長から同社の顧問税理士に迎えられ、二人三脚が始まる。株式分割M&A(企業の合併・買収)を一手に仕切り、99年7月に取締役に就任した。00年4月に果たしたマザーズへの上場を勧めたのも宮内取締役だ。

 「株の時価総額で世界一の企業を目指す」。これが2人の目標だった。交友のあったIT関連会社社長は「M&Aなどは、堀江さんの大まかな指示を受けた宮内さんが具体的に実現させた。多少違法行為があっても、宮内さんが黙って推し進めていく形だった」と明かす。昨年9月時点で、グループ会社は49社に上った。

 こうした経営方針が批判される一幕もあった。

 昨年12月25日、東京都内のホテルで開かれた株主総会に株主ら約8000人が出席した。一部の株主が、上場以来配当がない同社の経営戦略を巡り、退任を要求した。堀江社長は涙ながらに持論を展開した。「株主への利益還元は会社を成長させ、時価総額を上げること」

 その夜、都内であったグループの忘年会で堀江社長は「3年で世界一の栄冠をもぎ取りましょう」とこぶしをつき上げ、社員も「おー」と声を張り上げて応じた。

 しかし、ライブドア本体の時価総額は1月23日時点で約2686億円。強制捜査直前の16日終値の約7300億円から3分の1近くまで減った。

 宮内取締役は知人に「悪いことをしたつもりはない。だが、責任は取る」と話し、逮捕を覚悟していたという。

 23日午後9時29分。堀江社長東京地検のワゴン車で東京拘置所に入った。集まった報道陣や見物人は異例の200人を超えた。

毎日新聞 2006年1月24日 3時00分 (最終更新時間 1月24日 5時40分)

無理な売買は避け、現金比率を高める局面

 本日の東京株式相場は軟調なスタートから、さらに下値を試す動きとなりそうだ。昨晩、東京地検特捜部は、証券取引法違反ライブドア社長の堀江貴文ら幹部4人を逮捕。同日深夜、東京証券取引所ライブドア株ライブドアマーケティング株の2銘柄を監理ポストに割り当てたと発表した。ある程度予想されていた事態とは言え、市場では異例のスピード逮捕に対して、動揺が広がることが予想される。特に外国人投資家にとっては、日本のIT企業のトップが逮捕されたということで、日本の証券市場に対する不信感が台頭。他の銘柄にも“連想”が働く状況となっており、処分売りの動きが強まる可能性がある。これまでの日本株上昇の原動力になっていたのは、紛れもなく“外国人投資家”であり、彼らが国内市場から撤退すれば、株式相場の大きな下落要因になりかねない。また、個人投資家も直近の株価下落で、大きな痛手を被っている。巨額な信用買い残の重しもあり、“売りが売りを呼ぶ悪循環”に陥っている。事実、ライブドア株の信用買いしている投資家にとっては、日々評価損が膨らむ状況。同社株が全株一致で寄り付くまでは、この悪循環が続く公算が大きい。
 一方、政治面でも不穏な雰囲気が漂っている。「耐震偽装問題」に続き「ライブドア事件」、そして「米国産牛肉の危険部位混入事件」など、野党に対する与党への攻撃材料が日に日に増加している。先の衆院選で圧倒的な議席数を確保した与党サイドだが、今国会は“防戦一方”の展開を強いられそうだ。重要法案の採決先送りなども懸念される状況であり、政治リスクの上昇が株価にマイナスの影響を与えかねない。
 また、昨晩の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比21.38ドル高の10688.77ドル、ナスダック総合指数は同0.77ポイント高の2248.47ポイントとなった。シカゴ日経平均先物(CME)は15365円。大証終値と比べて15円安の水準に留まっており、大きな影響はなさそうだ。ただ、米国株式市場終了後に発表された通信系半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)の四半期決算で、売上高が市場予想を下回る展開。時間外取引では下落に転じており、ナスダック100先物も通常取引の終値と比べて4.5ポイントほど下落している。東京株式市場でもハイテク株にとっては逆風となる公算が大きく、株価の押し下げ要因として意識されそうだ。 
 東京株式相場は、ライブドア事件を契機に完全に“死に体”となったようだ。一時的なリバウンドは期待できるものの、中長期的な相場の方向性は“下向き”であると認識。需給の悪循環が開始されたようであり、個別銘柄に関しても上昇しづらい相場環境となっている。「下手な難平、スカンピン」となる公算が大きく、押し目買いに関しては慎重に対処した方が良さそうだ。無理な売買は避け、現金比率を高める局面が到来していると考えたい。

「悪材料が出尽くした」と東証、一時300円高
 24日の東京株式市場は、ライブドア証券取引法違反事件で、同社社長の堀江貴文容疑者らが逮捕されたことから「当面の悪材料が出尽くした」との見方が広がり、ほぼ全面高の展開となっている。日経平均株価(225種)は2営業日ぶりに反発し、上昇幅は一時、300円を超えた。

 情報技術(IT)関連企業の銘柄が多い新興市場の値動きを示す、東証マザーズ指数やジャスダック指数も上昇に転じている。

 日経平均の午前の終値は前日終値比226円27銭高の1万5586円92銭、東証株価指数(TOPIX)は同18・75ポイント高い1606・65。第1部の午前の出来高は約8億3000万株。東京証券取引所の午前11時現在の売買注文件数は330万件、約定件数は140万件といずれも前日の同時刻を下回っている。午後1時10分現在、日経平均は同274円64銭高の1万5635円29銭、TOPIXは同22・57ポイント高い1610・47。
(読売新聞) - 1月24日14時2分更新

日経平均終値 15648.-