エネルギー政策の「賢人会議」は今すぐ人選を見直すべきだ

本日4月28日、エネルギー政策の見直しに関する発表がありました。

エネルギー政策見直しへ「賢人会議」 経産相が設置表明
http://www.asahi.com/politics/update/0428/TKY201104280151.html

海江田万里経済産業相は28日、福島第一原発事故を受け、エネルギー政策を再検討する「今後のエネルギー政策に関する有識者会議」(エネルギー政策賢人会議)を5月上旬から始めると明らかにした。元文相の有馬朗人・東大名誉教授やジャーナリストの立花隆氏ら7人が原子力政策の見直しなどを議論する。

 会議の議論は経産省の今後のエネルギー政策の参考にする。メンバーは、原子核物理学者の有馬氏のような理系の専門家だけではなく、科学評論家でもある立花氏や科学技術に詳しい政治学者の薬師寺泰蔵・慶応大名誉教授らも加わり、広い視点から議論を交わす。

 会議のメンバーは以下の通り。有馬朗人氏▽大橋光夫昭和電工相談役▽橘川武郎・一橋大大学院商学研究科教授▽佐々木毅学習院大教授▽立花隆氏▽寺島実郎日本総合研究所理事長▽薬師寺泰蔵氏

エネルギー政策の見直しの動きが出てきたことは喜ばしいですが、問題は人選です。どう考えても原子力寄りの人選としか思えません。

まずは有馬朗人原子核物理学の学者ですが、その後1998年に自民党参議院議員選挙に出馬して政界転身。同党の比例代表名簿1位に登載されて当選。文部大臣・科学技術庁長官・原子力委員長に就任しましたが、1999年の東海村JCO臨界事故では中性子の危険があったにも関わらず住民に屋内退避を呼び掛けたり、事故翌日の会見で「ウランをバケツで取り扱うとは、日本の作業者のなんたるモラルハザードか!」と労働者に責任を転嫁したりしました。

次に大橋光夫昭和電工相談役。昭和電工福島第一原発に水素・酸素供給設備を販売している原発の利害関係者です(参考http://www.sdk.co.jp/products/49/99/1352.html)。また、大橋光夫は現・経団連政治委員長ですので、東電を擁護し続ける経団連会長の意をうけて動くことは間違いありません。

三人目の橘川武郎・一橋大大学院商学研究科教授。このブログでも引用した「日本電力産業のダイナミズム」の著者です。この本で橘川は日本の電力史を網羅し、その上で民間会社に巨額の経費が発生することが原発問題を硬直化させていると喝破して原発の国有化を主張していました。最近の講演でも同様の発言をしています。http://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/2011/seikon/sei20110428.shtml
<4/29追記>
橘川武郎原発推進派だ」という指摘をコメント欄でいただきました。
たしかに、この情報を見ると、明らかに推進派です。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo44/siryo1.pdf
しかし、興味深いのが、原発推進派の人でも原発の国有化を唱える人がいるんですね。民間会社が原発を抱えることの矛盾には気づいているようです。

四人目の佐々木毅学習院大教授は東大総長の経歴が有名ですが、2007年から東芝社外取締役に就任して、現在もその職にあります(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/policy/exec/sasaki.htm)。東芝は日本一のプラント業者ですから、大いに利害関係があります。

五人目の立花隆は最近の週刊文春での対談で、東芝の開発している小型原発を「絶対安全という評価がある」と発言しています。

原子力の世界ではずいぶん前から安全性の高い小型原発の開発を目指す人たちがいました
中略〜小型で絶対安全な原発を作り、『各家庭に一台ずつホーム原発を」が、理想だというひとたちがいた。
中略〜福島原発では東芝製の発電機が使われているので、東芝も批判の的になっていますが、彼らが開発しているのは、次世代型の小型原発は、『絶対安全』の評価を得て、実用化も近いといわれています」

また、日本原子力研究開発機構主催の会合で講演も行っています(参考 http://www.jaea.go.jp/02/news2006/060620/index.html)。

六人目の寺島実郎資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会原子力部会委員の経験があります。また、現・三井物産戦略研究所会長です。三井物産はかつてGEが福島第一原発にプラント販売したのを仲介した実績があるようです。また、三井物産プラントシステムという会社が原発施設のメンテナンスを多数手がけているようです(福島第一、第二、女川、柏崎刈羽)。寺島実郎碧南市での会合で「ちまちました自然エネルギーでは電気自動車の普及などに対応できず、原子力エネルギーが再評価されるのでは」と発言しています。

七人目の薬師寺泰蔵は元内閣府総合科学技術会議常勤議員で、かつて電力中央研究所の「有識者会議」参加。また、「日本の原子力発電の軽水炉の技術は高い」「高効率で安全な原子力発電技術をもっている」と発言しています(参考 http://www.csr-magazine.com/analysts/rep16.html)。


こうして一人ずつ検証すると、原子力発電に中立的な立場の人は橘川氏一人で、あとは全員原発の利害関係者か原発擁護論を展開してきた人物ばかりです。原発事故を受けて立ち上げる「賢人会議」にしては、人選が偏り過ぎていませんか? 即刻人選を見直すべきです。少なくとも直接の利害関係者である大橋光夫佐々木毅は外れるべきですし、立花隆日本原子力研究開発機構での講演料を開示すべきです。