木上益治(三好一郎)研究 響け! ユーフォニアム第5話から

5話超かっこよかったな〜ってのと、木上益治(三好一郎)のコンテについてあんまり考えたことがなかったので、これを機会に少し勉強する。
範囲はまず京都アニメーションでの仕事(AIRあたりから)とする。

カッコイイシーン作り


(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)

まず5話で印象的なのが、高坂さんが髪をかきあげるシーンと、これだと思う。
私は直感的に、AIRの下のシーンを連想した。

(AIR 第11話 コンテ・演出:三好一郎)

木上のコンテ回は大体、こーゆーカッコイイシーン、レイアウトが連続で出てくるのが痺れる。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
これとか。

(中二病でも恋がしたい! 第6話 コンテ・演出:三好一郎)
こんなのとか。

(涼宮ハルヒの憂鬱 第14話 コンテ・演出:三好一郎)
こんなのとか。

(氷菓 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
こんなのとか。
かっちょいい。もうほとんどそれだけ。
お話がどうでも良かろうが、とにかくカッコイイレイアウトを重ねる。
見返してて思ったが、ほとんどのカットがカッコイイ。無駄にカッコイイ。

全身ショット

次に木上の良く選択するショットを紹介していく。
まずは、全身が映るショット。普通ならアップで撮っても問題ないようなシーンでも全身が映るように撮る。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)

(左上:たまこまーけっと 第9話、右上:氷菓 第5話 、左下:けいおん!! 第4話、右下:AIR 第11話 コンテ・演出:三好一郎)

(らき☆すた 第14話 コンテ・演出:三好一郎)
これだけだとわかりづらいけど、他の人のコンテ回と見比べると、ここまで不必要に全身ショットで撮ることはしない。
もっとアップ、バストショットを中心にして、真横、斜俯瞰、アオリなど、画面に変化をつけながらカットを割るのが主流だと思う。
(※ 特に、らき☆すたなんか他の回でこんなレイアウト無い)


木上はアップ、バストショット、真横、斜俯瞰、アオリなど、画面に変化もつけて演出するが、この距離感のカットを大事にしてる……という点で他の人と違う。
この距離感から近づくか、離れるか?
この視点は誰の視点であるか?(神なのか、客観なのか、主体有る誰かなのか)
そんなことを意識している感じがする。
例えば、ユーフォニアムの以下のシーン。

これは、全身ショットが久美子と高坂の主観に入る前に差し込まれていて、被写体と主観の位置関係を示している。
この全身ショットによって、その後の中世古(茅原実里)と吉川(山岡ゆり)のやりとりをなんとなく眺めていたら、目の端に写っていた高坂さんが気になっちゃって、中世古・吉川・副部長の会話とかどーでも良くなってきて、たぶん「高坂さんの胸でかいな〜」みたいなことを考えながら観察してたら、目があっちゃって、目をそらしちゃった……というシーンになっている。


このシーンは他にもいろいろ面白い演出がされている。
まず、上述した(1)主観ショットであることを被写体と主観の位置関係を全身ショットで映すことで説明してしまう……という手法が使われていて
かつ、(2)主観であることを示すときによく使う、モノローグが使われていない……という荒業で、
かつ、(3)映像では、中世古・吉川・副部長の会話とは全く異なるシーンを繰り広げている……という演出である。


実はこの(3)の演出を木上はよく使う。
会話と映像が一致していなかったり、ナレーションと映像が異なる状況を説明していたりする。
短い時間で2つ以上の説明を、言葉と映像で同時に行う手法と言って良いと思うけど、こーゆー何気ないところで、情報量の多いシーンをつくろうとしている。

俯瞰ショット・ロングショット

俯瞰はユーフォでは使われていなかったが、よく使うショット。

(左上:けいおん!! 第4話、右上:らき☆すた 第14話、左下:涼宮ハルヒの憂鬱 第14話、右下:氷菓 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
らき☆すたの俯瞰ショットはやっぱりおかしい。
あと、ロングショットもよく使う。特にAIRはロングショットてんこ盛りで面白い。

(AIR 第11話 コンテ・演出:三好一郎)
ほかにもいろいろ使ってるロングショット。

(上段:けいおん!! 第4話、左下:CLANNAD 第9話、右下:氷菓 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
ユーフォでも使ってました。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
超ロングから超アップまで、全部使ってくるので、楽しい。

一瞬のカット


(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
例えばこれ。
一瞬映っているこのカットがカッコイイ。これを一瞬で切り替えるところに痺れる。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
これもその一例。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
ここで映っている一瞬のカッコイイカットはこれ。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
この贅沢感がたまらん。
普通これだけ決まってるカットはもう少し長く見せる。
それを一瞬で飛ばしていく。
この程度のレイアウトであれば、どんだけでも量産できますよと言わんばかりの消費感。

情報量と緊張感

全身ショットも一瞬のカットも単位時間あたりの情報量を増やす手法の一つ。

(響け! ユーフォニアム 第5話 コンテ・演出:三好一郎)
この辺とか。

(左上:涼宮ハルヒの憂鬱 第14話、右上:CLANNAD 第9話、左下:氷菓 第5話 、右下:AIR 第11話 コンテ・演出:三好一郎)
この辺も、情報量を増やすレイアウト。
そして画面作り全体から感じる緊張感。


1カットの情報量、緊張感、そして、カット・シーンでみた印象、さらに、劇伴や台詞といった音も意識している。
1枚の絵(2次元)としての完成度
そこに時間という概念を入れた演出
総合芸術としての音への意識。


それら全てを兼ね備えた天才、それが、木上益治