大阪府橋下徹知事は29日の記者会見で、8月1日に庁内に「地域主権プロジェクトチーム(PT)」を設け、市町村への交付金制度や広域行政のあり方を検討することを明らかにした。府の2008年度本格予算のたたき台を作成した知事直轄の改革プロジェクトチーム(改革PT)は今月末で解散し、〈橋下劇場〉の舞台は財政再建から分権改革に移る。地域主権PTは次長級を中心に40歳代の中堅職員ら8人で構成。使途が限定される従来の補助金を改め、市町村が自由に決められる交付金制度の導入や、府からの市町村への権限委譲、「関西州」としての道州制などを検討する。橋下知事は「分権と集権(広域行政)の新たなシステム作りを示す」と話した。

同記事では,大阪府において,府内市町村との関係(交付金・権限移譲等)に関するプロジェクトチームを8月1日より設置することを紹介.
下名の関心は,言わずもがな,府からの権限移譲.大阪府のご担当の方々にお話を伺った折は,まだ前知事の頃でした.手前味噌ながら,下名による「条例による事務処理特例」制度の運用状況についての限られた観察結果からは,都道府県と市町村間,結局のところ,市町村側の受容がなければ同制度は上手く機能しない模様*1.先の「大阪府改革プロジェクトチーム」では「聖域なきゼロベース」*2のもと,「試案」として高目な議論の土台を作成し,プログラム策定に至った.ただ,今回は,府庁内に完結する事案ではないことから,例え,試案的なものを作成する場合であっても,早期から,府内に位置する市町村との間での合意に基づく改革が不可避ではないだろうか.『ガバナンス』2008年8月号の記事では,大阪府市長会会長の倉田薫池田市長の発言が紹介されており,「分権とは権限と財源の移譲がメインであり,結果として大阪府の財政改革につながるが,歳出カット・予算削減が最初から見えているのでは市長会として協力できなくなる」ともあり「府と府下市町村が心を合わせて行うべきだ」(38頁)との見解が示されいる(なお蛇足.同誌同記事にある市長発言において,本当に「府下」という表現を用いられたのだろうか.そろそろ,都道府県内に位置する市町村のことを「県「下」市町村」という表現を用いることは止めても良い時期とも思う).
行政改革論だけの論理ではなかなか実現は難しいテーマ.「自治権拡充論」と「行政改革論」の「同床異夢」*3ともされるなかで,「大阪版地方分権」がどのような姿となるか,要観察.

*1:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏」『都市政策研究』第2号,2008年,125〜126頁

*2:「迅速性・公開性など橋本改革の精神を具体化」『ガバナンス』No.88,2008年8月号,37頁

ガバナンス2008年8月号

ガバナンス2008年8月号

*3:森田朗『制度設計の行政学』(慈学社、2007年)531〜533頁

制度設計の行政学

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