京都市は行政事務を効率化するため、民間企業から事業委託の提案を受け付ける制度を導入する。市側から具体的業務を指定して委託する事例はあったが、民間側に発案を委ねる取り組みは初めて。
 市は16日、第三者機関で弁護士や公認会計士などで構成する「京都市民間提案型市民サービス協働プロジェクト管理委員会」を設置する。同委員会で民間企業や市民団体、非営利組織(NPO)から提案のあった案件を審査する。民間企業が区役所など窓口業務の委託を申し出た場合、具体的な提案内容を委員会で審査する。委員会は提案内容の精査結果を市に通知し、守秘義務などの問題がなければ市が業務を委託する。16日に1回目の会合を開き、審査方法など詳細を詰める。提案の受け付けは今月下旬にも実施する。担当する行政改革課は「民間視点の発想は業務効率化の参考にもなる」と説明している。

同記事では,京都市において,民間からの発案を基にした委託事業選定と委託事業者確定を行う仕組みを開始することを紹介.同仕組みとともに設定される「京都市民間提案型市民サービス協働プロジェクト管理委員会」に関しては,同市HPを参照のこと*1.ただ,9月16日開催のためか,詳細な仕組みに関する情報は未だ公開されていない模様.同記事だけでは詳細がよく分からない部分も多いが,次の点は要観察事項.
同記事では,民間事業者が提案し,上記委員会が審査を行い,提案された事業と提案事業者の双方において,受託可能との判断がなされた場合,当該提案事業者に対して委託契約を締結するようにも読める.同種の仕組みは,行政効率面とともに,民主的統制の一つとしても意義ある仕組み.ただ,実際に委託となると,公平性の観点からも,民間事業者の選定には慎重となる事例も少なくない模様.例えば,同種の仕組みを先んじて採用されている,6月11日付の本備忘録でも記録した杉並区の場合では,事業提案と委託者は必ずしも一致はしてはいない.正確に言えば,平成20年度の『「杉並行政サービス民間事業化提案制度」公募要項』を見てると分かるが,同区の手続では,まずは,提案事業を委員会において審査を行い,「選定事業」・「継続協議」・「不採用」と区分し,その後「選定事業」に関しては,「提案事業者との随意契約」・「提案事業者にインセンティブを与えたうえでのプロポーザル」・「一般競争入札」の何れかの手続を取るかを委員会で審査することにされている*2.同記事のみを読むと,杉並区の仕組みの整理を用いれば,京都市の手続は「選定事業」から「提案事業者との随意契約」に進むようにも読めなくはない.実際にはどのような手続を採用するのだろうか.興味深い.
また,そもそも,自治体が所掌する事務事業に関する民間事業者との「情報の非対称性」(内容,質,要件(例えば,5月18日付の本備忘録)等)については,同市ではどのように対処するのだろうかという疑問もなくはない.ただ,この点はひとまず置いておき,民間事業者からの提案を受けた場合を考えてみるとその基準整備と運用方法も課題.委託事業の妥当性を選定するとなると,各事業担当部門毎での,いわば「分散型」の委託対象事業の判断から,統一的な判断基準等の整備,いわば「集中型」の審査運用への転換ともなりうる.(毎度おなじみの参照文献ですが)財団法人日本都市センターが,全国の都市自治体に対して,2007年11月〜2008年1月に掛けて実施した郵送質問紙調査でも,都市自治体における民間委託の統一的な基準(要綱等)の有無について尋ねているが,調査結果では,回答自治体の2割が統一的な基準を設けているとある*3.また,その基準においても多様な基準を設けることが適当とする考え方もなくはない*4.「分散型」から「集中型」への転換は,スムーズに進むのだろうか.
京都市では,実際にはどのように運用するのだろうか.要観察.

*1:京都市HP(総務部行政改革課)「広報資料「京都市民間提案型市民サービス協働プロジェクト監理委員会」の設置及び第1回会議の開催について

*2:杉並区HP( 杉並行政サービス民間事業化提案制度:提案公募:平成20年度提案公募)「平成20年度「杉並行政サービス民間事業化提案制度」公募要項」8〜9頁

*3:財団法人日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』(財団法人日本都市センター,2008年)156頁

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

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*4:武藤博巳『入札改革』(岩波書店,2003年)116頁

入札改革―談合社会を変える (岩波新書)

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