滋賀県は新年度、保育士資格があって再就職を希望している人と求人を出す保育所とを橋渡しする登録制度をスタートさせる。保育士のいわば「人材バンク」で、パートタイムも含めた働き方の希望に、保育所の一時保育や延長保育などのニーズを結び付けて人材を確保し、待機児童の解消を図る。
 全国保育士会(東京都)によると、「保育士に特化した求人登録制度は聞いたことがない」という。県は新年度当初予算案に、県内の公立、民間の全245保育所が加盟する県保育協議会への事業委託費450万円を計上した。登録制度は、求人を出した保育所の情報を、勤務地や勤務時間帯などの希望条件に合った登録者に紹介する。また、退職後長期間たって復帰する人を念頭に、実地も含め現在の保育事情を学ぶ研修も計画している。
 保育所は現在、個別にハローワークや知人の紹介などで保育士を募集している。しかし、一時保育や延長保育、託児が集中する早朝のパートタイムなどの需要が多様化しているうえ、雇用している保育士が産休・育休を取得するケースに対応する必要もあって、保育士確保が難しい状況にある。県内の待機児童は262人(昨年4月現在)いる。県は保育所などで働いていない県内の資格保有者を3000人と推定しており、県子ども・青少年局は「働きたい保育士資格の保有者と、人材不足の保育所とを、うまくマッチングさせる仕組みづくりをしたい」と話している。

同記事では,滋賀県において,2009年度より,保育士資格を有する方と,求人を出している保育所との間でのマッチングを図る登録制度を実施する予定であることを紹介.2001年の児童福祉法改正による保育士の都道府県での登録がされていることを受けての発想なのだろうか.興味深い.
都心部では,認可保育園を「いくら作っても待機児童が減らない」*1状況にあるなかで,下名個人的には,大半の許認可保育所での任命権者である市町村レベルにおいて,「民主的統制という観点からは,最悪な制度」*2とも分析される「水平補完」による需給調整の可能性もあるのかとは思うものの,無認可保育所をも対象にしつつ需給調整を図るとなれば,都道府県レベルでの受給調整を図ることが穏当なのだろうか.
現在,社会保障審議の少子化対策特別部会では,「これからの保育制度のあり方」について審議の最中の模様*3.同部会の『第1次報告(案)』では,以前ペンディング状態のようではあるものの,「今後の保育制度の姿」として,「現行制度維持(「運用改善+財源確保」案)(量の拡充や,多様なニーズへの対応が進まないのは,制度的問題ではなく,財源が不十分であるためであり,財源確保とともに,運用改善を行うべき(現行制度を基本的に維持)という考え方)」,「新たな保育の仕組み(「サービス保障の強化等+財源確保」案)(量の拡充や、多様なニーズへの対応が進まないのは,財源が不十分であるだけでなく,制度に起因する問題もあり,財源確保とともに,現行制度について必要な改革を行うべきという考え方)」,「市場原理に基づく直接契約・バウチャー方式とした場合(量の拡充や,多様なニーズへの対応は,市場原理に委ねることにより達成されるべき(価格を通じた需給調整に委ねる)とする考え方)」の3つの考え方が整理されている*4
ただ,2009年2月19日付の読売新聞では,第21回の同部会においては「本部会としては,○○の案を基本として,今後,制度の詳細設計を進めていくべきと考える.(P)」と「ペンディング」とされていた上記3つの案のうち,「保育所への入所を希望する際,利用者は市区町村から認定証明書の交付を受けた上で,自由に保育所を選択して申し込む」*5方式となるとも報道されている.同方式が一般化された場合,同県のような保育士供給と保育需要との調整機構が,都道府県(又は市町村等)が主体的に行うのか否かは明確ではないものの,各地域レベルでも整備されることなるのだろうか.要経過観察.