浜松市は7日までに、年間の戦略計画や主要事業の方向性を決める内部会議「サマーレビュー(市政運営会議)」の協議結果を公開することを決め、平成21年度予算分を初めてホームページで公表した。前例踏襲の“お役所仕事”を排除するため、内部で政策評価する自治体は増えているが、トップレベルの政策形成過程を公開するのは政令市の中でも異例。情報公開を求めてきた市議は「行政主導の政治の流れが変わるかも」と評価している。
 同市は毎年、次年度の予算編成に向けて「評価」「見直し/計画」「実行」を実施している。サマーレビューは春の事業評価を踏まえ、重点戦略と対象事業の選定、予算配分などを調整する重要な会議だ。今回は市長が政策判断に関係した55事業の協議結果と予算対応を公表した。例えば、新規の市制100周年記念事業は「効果的に実施するよう検討を進める」とし、準備委員会の設置予算を計上。看護専門学校助産科新設準備事業のように「民間の動向、ニーズ調査を踏まえ、市として開設すべきかを検討する」と予算化を見送った事業もある。サマーレビューは市長や職員の考えがストレートに表れる。
 公開に踏み切るまでには内部で議論もあった。「予算カットの生々しい話もある。職員が萎縮するし、市民や議会の横やりだって入りかねない」と50代の幹部職員。一方、開示を迫ってきた議会側は「市民が参加し、深い論議ができる。市民主導になる」(小倉篤市議)、「よくやってくれた。予算カットなど査定の様子も分かるようになると市民に説明責任を果たせる」(鈴木恵市議)と期待の声が上がる。市は次年度分から編成方針が固まる前の秋ごろに公開する方針。同市の村田克弘企画課長は「デメリットもあるが、それ以上の利点が市民にあると判断した。透明性を確保し、情報公開日本一を目指したい」と話す。

同記事では,静岡市において,予算編成過程における,いわゆる「サマーレビュー」の協議結果を公表したことを紹介.同公表内容に関しては,同市HPを参照*1.公表されている同資料を拝見すると,各「所管部局」毎の「所管課別」に,55の「事案案件」とその「内容」が示されており,その「サマーレビュー協議結果」と「H21予算案等・対応状況」が整理されている.同取り組みは,2008年10月25日の本備忘録でも取りあげた「契約アプローチ」*2による予算編成において,その過程を遡及し,検証するうえでは有用な取り組みともいえる.
本備忘録でお馴染みの,財団法人日本都市センターによる,全国の市区に対する2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施したアンケート調査(回収率74.0%)の結果*3では,予算の内容・編成過程を公開する都市自治体は,約3割(27.1%)とある.その公開内容としては,予算編成方針を公開する都市自治体が93.5%と最も多い.また,その割は限られてはいるものの,各部局での要求内容や査定結果も公開するところもある(15.5%).その一方で,「市長査定結果」については15.5%で公開されているものの,「市長査定過程(やりとり)等」の公開は0%とある.また,2008年3月10日付の本備忘録でも取りあげたように,政令指定都市レベルでは,概ね各事業部門からの予算要求調書,査定調書,復活調書,首長査定調書等が公開されている.予算編成過程の結果の事後的な公開化は,標準化しつつある模様.
ただ,予算(編成)情報を公表上の課題は,その公表時期を何時に行うのかという点.しかし,同記事においても紹介されている50代の幹部職員の方のご発言のように,「予算カットの生々しい話もある」ため,早期からの公表により,「職員が萎縮するし,市民や議会の横やりだって入りかねない」との危惧もあり,その時期については各自治体では.現状では,公開は,予算内容の確定後に行われることが主流ともいえ,いわゆる事後的公開が一般的.ただ,住民による財源資源に対するモニタリングという点に重きを置こうとすると,「事後」的な統制だけでは対処しきれないことも懸念される.つまり,財源のモニタリングに関して重要な情報は,「各段階の審議折衝「過程」の情報であり,折衝「結果」ではない」*4とも考えることもでき,その場合に,2008年12月17日付の本備忘録でも取りあげた智頭町の壮大なる実験のように,同記事にいう「横やり」をも組み入れた形での予算編成過程へと再編という案も想定できなくもない.
同市の取り組み,他の自治体への波及効果を想定すれば,他の自治体においては,事後的情報の公開として採用されるのか,又は,過程的情報の公開も模索されるのか,要観察.

*1:浜松市HP(トピックス平成20年度サマーレビュー市長協議後の対応状況について)『平成20年度サマーレビュー市長協議後の対応状況

*2:田中秀明「財政ルール・目標と予算マネジメントの改革」青木昌彦・鶴光太郎『日本の財政改革』(東洋経済新報社,2004年)349頁

日本の財政改革 (経済政策分析シリーズ)

日本の財政改革 (経済政策分析シリーズ)

*3:財団法人日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』(2008年3月)95頁

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

*4:松井望「自治体における管理機構改革の動向と課題」『月刊地方自治職員研修』第41巻No.8,通巻576号,2008年8月号,16頁

地方自治職員研修 2008年 08月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2008年 08月号 [雑誌]