児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

公判請求される率が上がった?

 ドラえもんで公判請求だそうです。
 著作権法の罰則というのは、対面販売・現物販売という伝統的な売買を予定したものなんですが、それで、ネットオークションの事案や送信可能化権侵害(winny winmx)という大規模な事案までカバーするわけですから、量刑が法定刑の上限に貼り付いてきます。
 著作権法違反=略式罰金というのもいまや甘い。

 ところで、作者の生まれ故郷で立件されると、これまた意外な土地で判決が出ることになります。
 支部の刑事裁判官が著作権法に詳しいかどうか。

北陸こぼれ話 /石川 2004.10.28 大阪地方版/石川 25頁 石川版 (全729字) 
富山市の男ら2人が、著作権法違反の疑いで高岡署によって逮捕され、同罪で起訴された。
 高岡市は「ドラえもん」の生みの親、故藤子・F・不二雄さんの出身地。
朝日新聞社

研修676 島戸検事 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

 擬律判断で問い合わせが多いと窺える。
 なんことのはない。金沢と長岡支部奥村弁護士事件とその他の事例若干を継ぎ接ぎしただけの設例であって、企画料は奥村弁護士に帰属してもおかしくない。刑法学会で出会った法務省の局長と課長には一笑に付されたが、実務の疑問解消に一役買ってるわけじゃないですか。本当の企画者は児童ポルノ児童買春犯人ですけど。

設例:甲は,インターネット上の出会い系サイトで14歳の女子児童乙と知り合い,乙が小遣いに困っていることを聞くや,これを奇貨とし,乙と性交をするとともに,後に自分で鑑賞する目的で,乙との性交時の写真を撮影しておくことを考え,渋る乙に対し,3万円を支払う約束をして,性交をすること,その際写真を撮影することを承諾させた。もっとも,その際,甲は,所持金が少なかったことから,実際に3万円を支払うつもりはなかった。そして,甲は,乙と性交し,その際の状況をデジタルカメラで撮影したが,約束の3万円については前言を翻してその支払を拒絶した。その後,甲は,所持金に困ったため,乙との性交時の写真を第三者に売り渡すことを企てたが,写真に乙が写っているのが分かれば自己の犯行であることまで発覚しかねないと考え,写真に写っている乙の目のあたりをぼかすなどの修正を加えることとし,この画像データをデジタルカメラコンパクトフラッシュカードからパソコンのハードディスクに読み込ませた上,必要な修正を加えた。そして,インターネット上にこの画像データを販売する旨の広告を掲載し,申し込んできた丙に対し,インターネットを介してこの画像データを送信して,その代金を,知人戊名義の銀行口座に振り込ませた。
甲はいかなる罪責を負うか。

島戸 対償を供与する約束をして性交をした点

 詐言でもいいのかという話。
 強姦罪や強制わいせつ罪との法定刑の比較から、真摯な承諾がない場合は買春罪ではなく強姦罪や強制わいせつ罪で処罰すべきである・軽い罪を立てて法定刑の上限を科刑するという無理をするなというのが奥村弁護士の見解と主張。
 研修に紹介されている名古屋高裁金沢支部(弁護人奥村)と大阪高裁H15.9.18(弁護人奥村)(こっちは最高裁webに出ている。携帯電話を買うつもりもないのに、「携帯電話を買ってやる」と騙した。)は、真意が無くても対償を供与する約束を認めている。
 なお、金沢支部については、金額で騙されても性行為自体には真摯な承諾があったから準強姦罪も成立しないとしている。こんな判決があったので、奥村弁護士NGOから「準強姦罪の成立範囲が狭くなった」抗議を受ける結果となった。ごもっともですが、奥村弁護士の責任ではない。
 被害者の調書に「無理やり」「犯人を許せません」「厳罰に処してください」ってあって強姦事件みたいだったので、遠回しに強姦罪で裁いてみてはどうか?と提案してみただけ。
 なお、金沢支部判決は、原判決破棄で減刑されている。

島戸 画像データをパソコンのハードディスクに移した点
東京高判平成15年6月4日は,本設例とほぼ同様の事案(MOファイルに蔵置した電磁的記録をCD−Rに複写し,これを販売する目的でMOを製造,所持した事案)において,以下のように述べている。

 これはmac判決として有名な、原田國男裁判長(macユーザー)・奥村弁護人(winユーザー)の判決だ。
 なお、製造罪については大阪高裁H14.9.10(弁護人奥村)も参照(といっても公刊物未掲載)。

島戸 罪数関係
(4)結局,児童ポルノに係る罪についてまとめると,①第7条第3項の製造罪,、②第7条第5項の製造罪,③同項の所持罪,④第7条第4項の不特定多数の者に対する提供罪が成立するが,③第7条第5項の所持罪と④第7条第4項の提供罪とは包括一罪として処理され これと①第7条第3項の製造罪,②第7条第5項の製造罪とは併合罪の関係に立つことになる。

 これはややこしいなあ、法務省としては、わいせつ図画の判例は忘れさせて、全部併合罪って言いきって現場にそう処理させて、裁判所に包括処理させないと、あぶないぞ。
 しかも、個人的法益だったら、被害者の人数も罪数に反映させるべきではないか?
 奥村弁護士の見解は、各被害児童毎に、製造・所持・提供・・・の各行為について別罪として、原則として併合罪。みじん切り。こうしておけば、裁判所が少しずつ包括評価したくなる。

児童ポルノの破棄への立会

 児童ポルノに描写された者(被害児童)も児童ポルノの破棄に立ち会えるという法務省刑事局の回答をもらいました。
 単純製造事案ではそういう申出も増えるのではないか。

扇谷俊春 証拠品事務(3)研修676p93
イ 証拠品廃棄への被害者の立会い
近時,ストーカー行為,脅迫,恐喝,結婚詐欺事件等の被害者が,犯人から押収した被害者のプライバシーにかかわる証拠品の処分について強い関心を抱く場合があり,被害者の不安を払しょくさせるためには,証拠品の廃棄に際して被害者に立会いの機会を与えることは,被害者保護の観点からも有意義であると考えられます。没収等の事由により国庫に帰属した被害者のプライバシーにかかわる証拠品について,被害者等(被害者,その親族若しくはこれに準ずる者又は弁護士であるその代理人をいいます。)から申出があり,検察官において,被害者等に対し,証拠品の廃棄への立会いの機会を与えるのが相当と認める場合には,証拠品の廃棄日時,場所を通知してその機会を与えることとされています(注)。
検察官又は検察事務官は,被害者等から申出を受けたときは,当該申出を適宜な書面に記録し,検察官において,証拠品の廃棄への立会いの機会を被害者等に与えることが相当と認めるときは,その旨証拠品係事務官に通知し,証拠品係事務官は,検察官から通知を受けたときは,該当する領置票の備考欄に,該当する証拠品の符号と被害者から廃棄立会希望があった旨を記入して把握します。また,被害者等を立ち会わせて証拠品を廃棄したときは,証拠品係事務官は,領置票の備考欄に廃棄年月日及び被害者立会いの上廃棄した旨を記入します。