児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

違法情報媒介者の刑事責任

winny正犯者の判決
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20041227#p3
について、さらに解説します。
 判例状況を概観すると
 「winnyユーザーに責任はない」
 「媒介者は無罪だ」
ともいえないので。

 京都地裁平成16年11月30日は、違法情報の媒介者の刑事責任について、媒介者は単なる通過点・通路に過ぎないと判断したと解されます。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/75f4203576aa0a5d49256f77000e906b?OpenDocument

③ 弁護人の主張①について
弁護人は,被告人の本件行為は,特定の1名の者に対する送信を可能化したに過ぎず,公衆に対する送信を前提とした送信可能化権侵害には当たらない旨主張する。

 たしかに,被告人は,自己のパソコンを,初期ノードを設定した1個のパソコンに接続し,それを介してWinnyネットワークに接続していたものである。しかし,Winnyネットワークに一旦接続されてしまえば,これに参加している不特定多数のパソコンとの間での情報のやり取りが可能となり,ファイルを共有する状態となるものであることは,明らかである。そして,当初設定された初期ノードにかかるパソコンは,単にWinnyネットワークに通ずる一つの通過点となるに過ぎず,そこには,同パソコンの使用者の意思等が何ら介在しないであるから,被告人の本件行為が,不特定かつ多数の公衆に対する直接の送信を可能化するものと評価されることは明らかである。

④ 弁護人の主張⑦について
 弁護人は,Winnyが,そのネットワーク内において他人のパソコンを介して情報の送受信を行うプログラムであることから,そこで行われる送信行為は間接送信にほかならず,被告人の本件行為についても,直接送信を前提とした送信可能化権侵害に当たることはないなどと主張する。

 たしかに,弁護人が主張するように,Winnyネットワーク内における情報の送受信においては,これをアップロードした者とは異なる第三者が使用する複数のパソコンを経由して,その受信者となる者のパソコンに当該情報がダウンロードされるということもあり得る。

 しかし,そのような場合であっても,上記の経由点となる第三者は,当該情報をダウンロードしようとする受信者の送信要求を受けて,これに応じるなど,いかなる意識的な行為もすることがなく,そもそも,当該情報がダウンロードされる際,自己のパソコンを経由したことすら認識することはないのである。このように,上記第三者は,Winnyを自己のパソコンにインストールするか,Winnyを起動するかという場面においては意識的に行動しているけれども,Winnyを利用して情報をダウンロードしようとした者が,その送信要求をしたのに応じて,これをアップロードしているパソコンからデータが送信されるに際し,その送受信が自己のパソコンを経由する場面においては,何ら自己の意思に基づいて行動することはないのであるから,有意識的に当該情報を中継しているなどとは到底評価することはできない。

 したがって,Winnyネットワーク内における情報の送受信において,その送受信の過程で第三者のパソコンを経由することがあったとしても,それは,単なる通路ともいうべき存在に過ぎないのであって,この点をもって,被告人のパソコンから他のパソコンへの情報の送信が,間接送信であるなどと評価することはできない。弁護人の主張は失当である。

 また,弁護人は,インターネットを利用した通信において,複数の電気通信事業者が介在する点を指摘し,直接送信を行うことは不可能であるという趣旨の主張もしている。しかし,電気通信事業者は,通信の媒介を行うものとして通信に不可欠の役割を担うものであり,その存在をもってインターネットを利用した通信の総てが間接的なものであるなどとの解釈をとり得る余地がないことは,関連の法解釈及び社会常識等に照らし,余りにも当然というべきである。

 弁護人のコメントを除外しても、中継役になっているwinnyのユーザーやISPは、「単なる通路ともいうべき存在に過ぎない」って言ってますよね。間接送信とか間接正犯とも理解しないと。中間者は無視して、刑法的には「直接的」と評価する。そういうんだ京都地裁は。「余りにも当然というべきである」なんて言われました。

 奥村弁護士そもそもwinnyでは合法データのみのやり取りをしている」というwinnyユーザーも知らないし、「winnyシステムでは合法データのみのやり取りされている」と信じているwinnyユーザーも知りません。(ちなみに、児童ポルノ販売罪の那覇地裁H16.10.15の被告人はwinny児童ポルノをDLしたそうで、証拠もあります。)

ところで、
「たしかに,弁護人が主張するように,Winnyネットワーク内における情報の送受信においては,これをアップロードした者とは異なる第三者が使用する複数のパソコンを経由して,その受信者となる者のパソコンに当該情報がダウンロードされるということもあり得る。 しかし,そのような場合であっても,上記の経由点となる第三者は,当該情報をダウンロードしようとする受信者の送信要求を受けて,これに応じるなど,いかなる意識的な行為もすることがなく,そもそも,当該情報がダウンロードされる際,自己のパソコンを経由したことすら認識することはないのである。」
という状況で、違法情報を媒介すると言う点では、掲示板(BBS)の管理者も同じでしょ。
 掲示板について説明すれば、掲示板を放置していると
「たしかに,弁護人が主張するように,画像掲示板を介する情報の送受信においては,経由点となる掲示板管理者は,当該情報をダウンロードしようとする受信者の送信要求を受けて,これに応じるなど,いかなる意識的な行為もすることがなく,そもそも,当該情報がダウンロードされる際,自己のパソコンを経由したことすら認識することはないのである。」
ですよね。

 しかし、ところが、児童ポルノの場合は、横浜地裁・東京高裁はこうは言わない。児童ポルノであろうと、著作権侵害の情報であろうと、媒介者の責任に優劣はない。
 京都地裁はこの判決を知らないかもしれないが、奥村弁護士は知っている。弁護人だから。
 本がでるはずですが、出ないので、裁判例だけ紹介します。
 なお、これは弁護人が公開するものであって、刑事確定訴訟記録法によるものではありませんから、保管検察官に頼んで見せてもらえるかどうかは知りませんし、公開の結果や誤字脱字誤変換の責任は全て奥村弁護士にあります。

 掲示板の管理者については横浜地裁H15.12.15、東京高裁H16.6.23(公刊物未掲載、被告人上告)

横浜地方裁判所平成15年12月15日
平成15年わ第2458号 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
(犯罪事実)被告人は,平成12年ころから,東京都渋谷区所在g株式会社が管理するサーバーコンピュータの記憶装置であるディスクアレイに「p掲示板」と称するインターネット上のホームページを開設し,○○県××番地又はその周辺等において管理運営するものであるが,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像を送信するかもしれないことを認識しながら,あえて,平成13年1月20日ころから平成14年10月29日ころまでコンピュータのディスクアレイに,別紙一覧表記載のとおり,前後22回にわたり,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が送信した衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像合計22画像分を記憶・蔵置させたままこれらを削除せず,もって,上記児童ポルノをインターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者に閲覧可能な状況を設定し,上記日時ころ,上記児童ポルノ画像データにアクセスしたAほか不特定多数の者に対し,上記画像データを送信して再生閲覧させ,児童ポルノを公然と陳列した。

(補足説明)以上の証拠によれば,別紙一覧表記載の22画像ファイル(うち2ファイルは弁護人指摘のように2画像が結合されて1つの画像ファイルとされたものと認められる。以下この意味で「画像」の語を用いる。)の被写体となった人物は実在し,その年齢はいずれも18歳未満であることが明らかに謎められるし,その内容からして,これらがいずれも児童ポルノ画像に当たることも明らかである。
被告人は,別紙一覧表記載の22画像のいずれをも自らアップロードしてはいないけれども,前掲各証拠によれば,別紙一覧表記載の22画像のうちの一部がアップロードされていることを現認し,それが児童ポルノ画像であると認識していたこと,被告人が本件掲示板を開設する以前にプノンペンで児童買春が行われている事実を認識していたこと,被告人は買春を中心とする情報を紹介する目的で本件ホームページを開設したこと,その際特に児童買春に関する情報を除外する手だてを全く取っていないこと,本件ホームページ開設後これに児童買春を含む買春の情報が書き込まれていたこと 被告人も児童買春に関する情報を書き込んでいること 被告人がプノンペンに買春に訪れた者たちから児童ポルノ画像が多数本件掲示板にアップロードされていることを問いていたことが認められるのであるから,被告人の児童ポルノ画像の記憶・蔵置されたわいせつ物であるサーバーコンピュータのディスクアレイ(ハードディスク)の公然陳列の故意に欠けるところはない。

東京高裁平成16年6月23日 平成16年(う)第462号
 被告人に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成15年12月15日横浜地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官泉良治出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
理由
 本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の平成16年3月10日付け(別紙により一部訂正されたもの),同月22日付け及び同月24日付け各控訴趣意書に,これに対する答弁は,検察官泉良治作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。
第1論旨は,憲法違反の主張を含め,訴訟手続の法令違反,事実誤認,法令適用の誤り,量刑不当等詳細・多岐を極めている。しかし,当裁判所は,原審記録及び当審における事実取調べの結果をも併せて慎重に調査検討した結果,いずれの論旨も理由がないものと判断した。
 論旨は,①訴訟手続の点も含めた事実認定,法令解釈等,児童ポルノ公然陳列罪(以下単に「本罪」などともいう。)の成否そのものを争うもの,②罪数,時効等本罪の成立を前提として争うもの,③量刑を争うもの,の3種類に大別できると解されるので,以下,控訴趣意の論理的な順序には必ずしもとらわれず,前記3分類に従った形で,当裁判所の前記結論の理解に必要な範囲で補足して説明する。
 なお,以下単に「法」などという場合は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律のことである。
第2 訴訟手続の点も含めた事実認定,法令解釈等,児童ポルノ公然陳列罪の成否そのものを争う各論旨について
1当裁判所が前記判断の前提とした事実当裁判所は,原判決の事実認定に誤りはないとするものであるが,各論旨の判断のためには,原判決が認定判示している事実だけでなく,より詳細な事実関係を明らかにしておくのが便宜と考えられるので,ここでそれを示しておく。
(1)被告人は,c国内においては安価で買春ができることから,平成11年3月ころから買春目的で度々同国内へ渡航するようになり,平成12年6月3日,買売春の情報が中心で,わいせつな画像も掲載されていた「c国ナイトライフ」というホームページを真似て,原判示のサーバーコンピュータの記憶装置であるディスクアレイ(以下「本件ディスクアレイ」という。)に「pあやしい掲示板」と称するインターネット上のホームページ(以下「本件掲示板」という。)を開設し,原判示の所在の当時の自宅あるいはc国内に転居した平成13年9月中旬以降は同国内で管理運営していた。
(2)被告人は,本件掲示板には,画像掲示板(以下「本件画像掲示板」という。)も設置し,文章の投稿(書き込み)だけでなく,画像を本件ディスクアレイに送信(アップロード)して貼付することも可能としていた。
(3)被告人が本件掲示板を開設した目的は,主としてp近郊のs地区における児童買売春を含む買売春を中心とした風俗情報を提供,交換することにあった。このことは,被告人が直ちに経済的な利益を目論んでいたといったものではないが,本件掲示板の開設によって,被告人自身の買売春に関する知識も増加させることができ,被告人の自尊心,名誉欲等をも満足させるものであったと推認することができるから,その意味において,前記開設の目的は,自己の利益を図る目的であったということができる。そして,前記のようにc国に移住した後の平成13年12月ころからは,主としてpを訪れた日本人買春客を相手とするバスの運行を始め,本件掲示板を見てc国を訪れる日本人が増え,被告人の運行するバスを利用すれば,被告人にとって経済的にも利益になり,また,平成14年5月末で前記バスの運行をやめた後も,日本人買春客を相手とする自動二輪車を使ったタクシーやレンタルルームを営んでいたため,日本人買春客が増えることは被告人の経済的な利益となったことから,本件掲示板を維持する目的には,被告人のこのような利欲的な目的も加わっていった。
(4)被告人は,閲覧者の性的な興味をそそり,アクセスを容易にするために,その名称にわざわざ「あやしい」という形容詞を使用し,また,本件画像掲示板を,パスワードを入力しなければアクセスできない仕組みにしてはいたものの,本件掲示板内の「パスワード発行所」にアクセスすれば,容易にパスワードを入手できるようにすることによって,パスワードを介したアクセスの制約は殆どない状態にしておいた。そして,被告人自身,本件掲示板に売春婦の情報やその裸の写真を掲載したほか,平成12年10月ころには児童買春に関する情報の書き込みを行った。
(5)被告人は,以上のような本件掲示板の状況からして,わいせつな画像や児童の裸の写真(児童ポルノ)の画像が送信,貼付されることや,その画像を見るなどして閲覧者が増えれば,それに伴って前記のような行為も増加することも予想していたが,それでも構わないと考え,そのような事態を回避する方策を全くとらなかった。被告人は,平成13年1月ころ,本件掲示板を見て児童ポルノの画像が貼付されているのを知り,掲示板管理者としての権限で削除することは可能であったものの,削除すると,画像送信者から見放される結果を招きかねず,他方,放置しておけば,本件掲示板にアクセスする者が増えるなどと考えて,敢えて削除しなかった。その結果,本件掲示板の児童ポルノ画像を見た他の者が同種行為に及ぶようになった。しかし,被告人は,そのうちの一部を確認したものの削除せずに放置し,その余の同種画像については本件掲示板を点検しなかったために確認しないままで推移させた。さらに,被告人は,平成13年11月中旬ころ,本件掲示板に児童買春に関する情報や児童ポルノ画像が掲載されていることが日本のテレビ局で報道されたことを聞き知り,警察に摘発される不安を抱いたものの,その後も児童ポルノ画像を削除したり,本件掲示板を閉鎖したりすることはしなかった。
 この間に,原判示の22画像の児童ポルノが本件ディスクアレイに記憶・蔵置された。
2当裁判所の基本的な判断
(1)本件で問題とされているのは,児童ポルノの陳列であるが,陳列行為の対象となるのは,前記のような児童ポルノ画像が記憶・蔵置された状態の本件ディスクアレイであると解される。
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。
(3)被告人の故意は,前記認定から明らかなように未必的な故意であって,本件陳列行為開始時点からあったと認定でき,この点の原判決の判断は正当である。

 
要するに、
 「掲示板開設時点で実行の着手がある。開設時に可能性を認容していれば、未必の故意がある。」
という。
 この東京高裁の理論の当否はともかく(上告中!)、これでいけば、媒介者は正犯となりうる。ISPも対象外ではない点が怖いところです。

 東京高裁H16.6.23はプロバイダーに削除可能性があることを認めているのだから、単なる「通路」という評価ではありません。

東京高裁H16.6.23
(2)所論は,要するに,被告人は,本件掲示板の管理者にすぎず,本件掲示板に児童ポルノ画像を送信するように誘う書き込みをしたことはなく,本件掲示板に児童ポルノ画像が送信され,掲載されることは予想していなかった上,被告人には本件児童ポルノ画像を削除できる可能性もなかったし,本件児童ポルノ画像を送信した者とか,プロバイダーとか,被告人以外にも削除可能な者が存在したのであるから,被告人には削除義務がなかったのに,これを認めた原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第13)。
 しかし,被告人以外に削除可能な者が仮にいても,そのことで被告人の削除義務が失われるものではなく,その余の所論は,これまでの説明から理由がないことが明らかである。

5所論は,要するに,いわゆるプロバイダー責任制限法によれば,被告人は,本件掲示板の管理者であって,同法3条1項の要件を満たさないから,同法の適用あるいは類推適用により,被告人は被害児童に対する関係で民事・刑事の責任を免責される,と主張する(平成16年3月24日付け控訴趣意書控訴理由第20)。
 所論は,法令適用の誤りの主張と解されるが,前記説示に係る事実関係の下では,被告人がいわゆるプロバイダー責任制限法によって,その刑事責任を免責される理由はないというべきである。所論は,独自の見解に立つもので到底採用の限りではない。
 論旨は理由がない。

 これをwinnyなどのP2Pに置きかえると、中継者にも、
winny起動時点で実行の着手がある。起動時に違法情報中継の可能性を認容していれば、未必の故意がある。」
ということになって、
なんとか罪の正犯となりうるということになります。
 
「通路」ごとき存在が主観によって、正犯になったり、幇助になったりするはずもないから、
 「単なる通路ともいうべき存在に過ぎない」
というのは、横浜地裁と東京高裁には通用しない。

 正しいのは、京都地裁なのか、横浜地裁&東京高裁なのか? 奥村弁護士なのか?
 著作権侵害より児童ポルノのほうが媒介者の責任が重いですか?理論構成は変わらないはずですが
   winny児童ポルノが交換された場合の媒介者の責任
   画像掲示板で著作権侵害が行われた場合の媒介者の責任 
についても、理論構成は変わらないはずです。

 奥村弁護士は、事件ごとに被告人に有利な見解を主張していて、その結果がこうだ。
   奥村弁護士が甲といえば、裁判所は乙(甲説は弁護人独自の見解である)。
   奥村弁護士が乙といえば、裁判所は甲(乙説は弁護人独自の見解である)。
 おいおいおいおい。法律はどこにある?
 これでは、要するに、いつも奥村弁護士が間違っているというだけで、正解が甲なのか乙なのか丙なのかがわからない。

 自戒弁護人も、これくらい言わせてもらってもいいでしょ。判例並べて比較しただけだから。
 なお、いま、大学の教授や他の弁護士に聞いても、無駄だぜ。判例の存在すら知らないから。

やりきれない児童ポルノ

 雑誌「捜査研究」のコラム的な記事もおもしろいよね。 
 国会で、刑事局長が検察官に徹底すると答弁したのは4〜5年前ですが、いまだにこんなこと言っている。

石渡博礼「捜査と公判の隅で① やりきれない児童ポルノ」捜査研究'04.11
児童ポルノ禁止法違反が刑事法廷で審理されるようになりました。これまでのわいせつ物陳列罪の変形程度と思ったら大違いでした。
(中略)
実際、先の児童ポルノの製造・販売事例では、その最高責任者の社長である被告人は、前科がなくて数千万円というこの種の事例としては異例の高額の贖罪寄付 (被害弁償に代えた法律扶助協会への寄付) をしたのに、実刑判決となりました。
(いしわたり ひろのり)

 奥村弁護士の事件では700万円寄附して、ギリギリ執行猶予でした。

 実刑だったら控訴されているかもしれませんが、この判決がなかなか捜せないんですけど、多分、販売罪は(包括か単純)一罪で起訴していると思うんですよね。罪数論を主張するんだ!>控訴審弁護人。
 
 石渡検事ってどこの検察庁かな?
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLD,GGLD:2004-39,GGLD:ja&q=%E7%9F%B3%E6%B8%A1%E5%8D%9A%E7%A4%BC
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLD,GGLD:2004-39,GGLD:ja&q=%E7%9F%B3%E6%B8%A1%E6%A4%9C%E4%BA%8B
って、検索しても出てこないんだよね。
 別に彼に用件はないが、保管検察官殿に用事がある。



あんまり徹底されていないわけですが、法律読んでも判らないような法律を作るからだともいえるので、司法と立法の連帯責任ですね。

003/003] 150 - 衆 - 青少年問題に関する特別… - 2号
平成12年11月09日
○渡邉政府参考人 法務省から御報告申し上げます。
 青少年を取り巻く有害環境に関しましては、法務省におきましては、本日お手元にパンフレットを配らせていただきましたが、「ふれあいのある明るい地域づくりへの参画」というパンフレットでございますが、このパンフレットに示されていますように、社会を明るくする運動を通じて啓発活動に努めております。また、検察当局におきましては、関係罰則を適正に運用し、青少年に対する有害行為等を処罰しているものと承知しており、青少年を取り巻く環境の浄化に努めているところであります。
 まず、関係罰則の適用状況について御説明申し上げます。
 御承知のように、刑法は、十三歳未満の女子を姦淫した場合には強姦罪、十三歳未満の男女に対してわいせつ行為をした場合には強制わいせつ罪として、それぞれ相手方の同意の有無にかかわりなく処罰することとし、また、わいせつな文書、図画その他のものを頒布、販売、公然陳列または販売目的で所持した者も、わいせつ物頒布罪等の罪で処罰することとしています。
 このうち、わいせつ文書頒布等につきましては、平成十一年におきまして、全国検察庁で七百四十三人を起訴しております。
 近時、インターネットの普及により、これを利用してわいせつ画像等を配信する行為が問題となっておりますが、例えば、ホストコンピューターのハードディスク等の記憶装置にわいせつ画像を記憶させ、インターネットを利用して不特定多数の者に対して右画像を閲覧させる行為は、刑法百七十五条のわいせつ物公然陳列罪の適用により処罰されることとなっております。
 次に、児童買春法は、昨年五月十八日に成立し、同年十一月一日から施行されておりますが、児童買春、その周旋、勧誘、児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、公然陳列、これらの目的での児童ポルノの製造、所持、運搬、輸入、輸出、児童買春等の目的での児童の人身売買等を処罰することとされております。
 同法施行以降、平成十二年三月までの間に、全国の検察庁で、児童買春またはその周旋により百六十三人を受理し、そのうち百二十人を起訴しております。同じ間に、児童ポルノの頒布等では、八十二人を受理し、そのうち六十二人を起訴しております。児童ポルノについても、わいせつ画像等と同様、インターネットを利用する行為が問題となっておりますが、同様に児童ポルノの公然陳列罪等が適用されることとなると思われます。
 同法の十二条一項は、「事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。」と規定し、同条の二項は、「国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるもの」と規定しております。
 これを受けて、法務省におきましては、検察官の各種研修や会議等の機会にこの規定の趣旨を周知徹底するよう努めており、検察官においても、児童からの事情聴取に当たり、児童の受けた心身への有害な影響やその精神状態等に十分配慮し、取り調べの時間や回数等、検察庁への来庁の際の送迎など、取り調べ担当者の選定などについて必要な配慮を払っているものと承知しております。



005/007] 154 - 衆 - 法務委員会 - 4号 平成14年03月20日
○植田委員 
 そこで、人権教育等々にかかわりまして、きょう少しお伺いしたいのが、児童買春の防止に向けた取り組みにかかわってでございます。
 今最高裁については、今聞いたところ、この問題に特化した研修等はカリキュラムとしては組まれていないようですから、答弁求めませんが、この問題について実は毎年いただいている人権教育十年にかかわる関連施策で、特に特定の職業に従事する者に対する人権教育というところの資料を見させていただきましても、子供買春、子供ポルノの問題にかかわって具体的にどんなことをやってはるのかというのがちょっと見えにくいところがありますので、法務省さん、検察官、検察職員についてどのようなこの問題に関して研修をされているのか、わかればプログラム、教材、例えばどういう講師の方を呼んでいるのか、また関係文書等々、具体的に示していただきたいと思います。示せないのであれば、どういうことをやっているのか、まずお答えいただきたいと思います。
○古田政府参考人 お尋ねの件につきましては、検察官あるいは検察事務官につきましては、任官後何回かにわたりまして研修をする機会があるわけでございます。そういう中で、いわゆる児童買春問題、児童ポルノの問題、こういうようなことについても研修の内容で触れるように最近しているわけでございます。
 また、もちろん、処罰法規を運用する立場でございますので、いわゆる児童ポルノ法とか、こういうことについての周知徹底は、これはもう全検察官に図るという措置をとっているわけでございます。
 ただ、この問題、これに特化してということよりも、研修等の中では、児童虐待とかそういう問題もあわせて、要するに、少年に対する被害を与えるいろいろな問題についてどう対応するか、そこで、被害者というふうな立場からどういうふうに考える、どういうふうに見えるかとか、そういうふうな被害者対策の一環としてこういう問題にも触れているわけでございます。
 したがいまして、研修等におきまして、これに特化した教材とかそういうものが特に用意されているわけではございません。
○植田委員 今法務省にもお伺いいたしましたが、少なくとも法務省最高裁では、子供ポルノ・買春問題にかかわって、それに特化して具体的に研修等を行っているわけではないので、例えばそれに特化したプログラムや教材等々というものは示されないということで、研修の中でそういう問題にも触れていますよというお話であったかと思います。
 そこで、この点、ちょっと法務大臣にお伺いしたいんですが、昨年十二月の横浜会議でも、森山法務大臣が政府を代表してかたい決意を表明されたわけです。非常に私はそのことについて敬意を表するとともに高く評価するものでございますし、実際、そもそも児童買春・ポルノ禁止法というものの生みの親でもいらっしゃいまして、そういう意味では、この法律を大きく育てていきたいという思いで法務大臣はいっぱいだろうというふうに私は思っておるわけですけれども、例えばこの横浜会議におけるさまざまな議論、またグローバルコミットメント等を踏まえて、ちなみに、じゃ、本年度、具体的に予算等でどんなものが反映しているんでしょうか。
○森山国務大臣 児童買春、児童ポルノ処罰法の関係では、諸外国におけるこの種事犯の実態などを調査研究する経費といたしまして、十四年度の予算案においては百四十八万円を計上しております。
 また、この関係の予算として特別に、特定してお示しすることは難しいんですけれども、この法律に関するものも含めて、検察庁の職員に対する各種の研修とか事件の捜査処理のための経費ももちろん確保しております。