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2016-08-27 弁護人 このエントリーを含むブックマーク

otello2016-08-27

弁護人

監督 ヤンウソ
出演 ソン・ガンホ/イム・シワン/キム・ヨンエ/クァク・ドウォン/オ・ダルス
ナンバー 200
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

義理に固く人情に厚い、けれど利にさとい。高卒ながら猛勉強法律家になった男は、コネ資金もない状態からニッチ部門に目をつけて事務所を急成長させる。そんな時直面した、官憲による弾圧に対する怒り。物語は、公安警察に不当に拘束され、アカ濡れ衣を着せられた青年の無実を勝ち取るために昂然と立ち上がった弁護士孤軍奮闘を描く。軍部が掌握する政権下、批判的な発言だけでなくボランティア読書会ですら取締り対象となる。一度逮捕されたら、身に覚えのない罪を自白するまで精神的肉体的苦痛はやまない。そして検察裁判官政権の息がかかった者ばかり。馴れ合い法廷主人公警察の腐敗を糾弾し、近代国家とは何かを説く。もうけ主義弁護士人権派に変わっていく姿は、信念こそが人間を強くすると訴える。

判事を辞め弁護士になったウソクは不動産や税務処理が専門の事務所を開設する。ある日、なじみの食堂の息子・ジヌの弁護を頼まれ接見に行くが、ジヌの体には無数の傷がつけられていた。

そこから推測されるのは、想像を絶する拷問の数々。それまでノンポリだったウソクは、公安暴走を許しては国の未来はないと悟り、ひとり検察に立ち向かう。主権者を定めた憲法から様々な刑事関係法律、さらに英国大使館からの回答などを武器にジヌを弁護するウソク。もはや自由民主主義を守る戦いとなった裁判で一切の妥協をせず無罪判決を得るまで争う姿勢を見せる。ウソクを襲った警監が国歌を耳にすると背筋を伸ばすシーンは、北の脅威を過剰に警戒する韓国官憲の歪んだ愛国心象徴していた。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

その後、警監を証言台に立たせて責任を追及したり目撃者証言させたりするが、国家権力の前に弁護側は不利になるばかり。一方で海外メディアにこの裁判インチキを知らしめ、民主化の遅れを報道させようとする。確かに国家権力相手に勝てる確率は低い。それでも、人々の良心を信じ声を上げる勇気が後に続く者の道標となるとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★*

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2016-08-26 ペット このエントリーを含むブックマーク

otello2016-08-26

ペット THE SECRET LIFE OF PETS

監督 クリスルノー/ヤロー・チェイニー
出演
ナンバー 230
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

首輪をつけて飼い主の言いつけを守っているからこそ快適な生活保障されている。だが、一度その身分を失ってしまうと世間は冷たい。ある種の人間動物は悪意を抱いて襲いかかってくる。物語安全地帯から飛び出した2頭の飼い犬が次々と敵意に遭遇しながらも飼い主の元に戻るまでの冒険を描く。捕獲棒を持った保健所職員人間を恨む捨てペット集団。それら2つのグループにつけ狙われる犬たちの、最初はいがみ合っていたのに協力して危機を切り抜けていくうちに固い友情で結ばれていく過程は、相手をよく知り理解することが他者との良好な関係を築く第一であると教えてくれる。飼い主が出かけた後のペットたちが急に態度を変えて思い思いに振る舞う姿は「トイ・ストーリー」のようだ。

飼い主に愛されている犬・マックスの部屋に大型犬デュークがやって来る。マックスデュークケンカするうちに街で迷子になり、野良犬狩りにあって檻に入れられるが、野良ウサギスノーボールに救出される。

飼い主に飽きられ棄てられたペットたちを集めた地下組織リーダーであるスノーボールは、飼い主を噛み殺したと言うマックスデュークを歓迎する。しかし、ほどなくウソがばれ2頭は裏切り者としてスノーボールたちからも追われる羽目になる。このあたり、様々な動物の特徴をデフォルメした動きがコミカルかつスピーディで、鮮やかな色遣いと共に目を楽しませてくれる。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

ただ、マックスデューク首輪という軛から解放された自由を満喫するのではなく、危険から逃げてばかりなのはいかがなものか。この作品対象となっているのは小学生くらいまでの子供たちだろう。彼らに、外の世界は怖いところで、親の目の届かない場所に無闇に行ってはいけないよと警告する内容は、自己責任を旨とする米国開拓精神とはかけ離れている気がする。まあ、子供だけで歩いていると誘拐される可能性が日本よりかなり高いのは事実だが。。。

オススメ度 ★★

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2016-08-25 手紙は憶えている このエントリーを含むブックマーク

otello2016-08-25

手紙は憶えている REMEMBER

監督 アトム・エゴヤン
出演 クリストファー・プラマー/ブルーノ・ガンツ/ユルゲン・プルホノフ/ハインツリーフェン/ヘンリー・ツェニー/ディーン・ノリス/マーティン・ランドー
ナンバー 202
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

家族虐殺した犯人絶対に許さない! 残された時間わずか、覚束ない脳の働きと衰えた足腰に発破をかけ、男は人生最期の思いを遂げようとする。物語は、アウシュヴィッツ生存者が70年の時を経て収容所殺戮者を探し出す姿を追う。目覚めるたびに前日の出来事を忘れている、いちいちメモ確認しなければ自分が何をしているのか思い出せない。そんな状態で与えられた住所を頼りに仇敵を訪ね歩く行程はいつ破綻してもおかしくない。それでも己に課せられた使命を果たすまで死ぬわけにはいかない。元軍人、元囚人ネオナチ、元SS……。欧州から遠く離れた北米身分を偽り、息を潜めて生きてきたナチス痕跡が生々しい言葉再現される過程は、彼らにとっての第二次世界大戦は終わっていないことを訴える。

老人ホームで暮らすゼブはかつての囚人仲間・マックスから強制収容所指揮官オットー犠牲者アイデンティティを盗んで脱出、ルディと名乗って潜伏中と知らされる。認知症が進行中のゼブはマックス手紙を手に出発する。

同名の容疑者は4人、ひとりまたひとりとルディに面会しては拳銃を突きつけ、大戦時の所在を白状させる。ある者は陸軍である者は収容所で、いまだナチスに対して複雑な感情を捨てきれない。ゼブは彼らの証言の中に自身との共通点を見つけ、オットーへの憎悪怨嗟を増幅させていく。同時に、繰り返される健忘に危うさを滲み出させ、旅の行く末に不安を抱かせる。マックスとは連絡は取れても支援は期待できない、孤軍奮闘のなかでゼブの苦悩だけが膨らんでいく。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

その後、3人目、4人目と、ルディを訪問するゼブ。射撃の腕前やワーグナー演奏など、彼の潜在意識に刻まれた習慣が醸しだす違和感とともに、カメラは一歩ずつ真実に迫っていく。それは、消えかかった過去に上書きされた偽の記憶を利用した壮大な復讐譚。絶望が転じて怒りとなったユダヤ人の執念の深さに暫し呆然となった。鮮やかな結末は「シックス・センス」以来の衝撃だ。

オススメ度 ★★★★

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2016-08-24 人間の値打ち このエントリーを含むブックマーク

otello2016-08-24

人間値打ち Il capitale umano

監督 パオロ・ビルツィ
出演 ファブリッツィオ・ベンティボリオ/ファブリツィオ・ジフーニ/ヴァレリア・ゴリノ/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ナンバー 198
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

儲け話に全財産投資した不動産屋。文化事業に手を出した富豪の妻。愛を信じられなくなった少女クリスマスも近い冬の日に直面した人生最大の危機を前に、彼らはこらえてきた思いを表出させる。ある者は裏切り、ある者は取引に応じ、ある者は秘密を胸の奥深くにしまい込む。物語は、富豪中流貧困層それぞれの階層に属する三様の登場人物が、ひき逃げ事件きっかけに不満と苦悩とエゴを赤裸々にしていく姿を描く。その過程で、生き残るためにすべきことを素早く計算し、己を犠牲にしてでも守るべきもの模索する。3人と被害者時間軸が交錯する一方、立場が違えば現実も変わってくる。愛はカネで贖えるのか? 人の命はいくらなのか? カメラ視点は、異なった価値観の中で生きる人々の“人間値打ち”を問うていく。

富豪が手掛けるファンド暴落大金を投じていたディーノ資金繰りに奔走する。富豪の妻・カルラも進めていた劇場再建計画頓挫する。同時に、ディーノの娘・セレーナの元に警官事情聴取に来る。

ひき逃げしたクルマは、セレーナの恋人だったカルラの息子の名義だが、運転手特定されていない。セレーナが犯人かばって黙秘しているのは警察もわかっているが、元恋人泥酔していて記憶がない。灰色の状況下で、親たちはどんな手を使っても娘や息子をかばおうとする。しかしそこにあるのは、正義良心よりもカネや駆け引き解決しようとする打算。大人たちは実直な労働が割に合わないと考える、そんな格差社会リアル再現される。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

人は豊かさを求めて必死で働き、金儲けのチャンスに乗ろうとする。そして自分たちの子供にはよりよい暮らしをさせたいと願うのは親としてごく普通感情だ。だが、その気持ちが強すぎるとカネの奴隷になる過ちを犯す。幸せなのはボーイフレンドのやさしさを受け止めたセレーナなのか再起した富豪なのか。ただ、愛があれば貧しくても幸せなどというのは、リスクを取らなかった者の言い訳だとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★★

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2016-08-23 イレブン・ミニッツ このエントリーを含むブックマーク

otello2016-08-23

イレブンミニッツ 11 MINUT

監督 イェジー・スコリモフスキー
出演 リチャード・ドーマー/ヴォイチェフ・メツファルドフスキ/パウリナ・ハプコ/アンジェイ・ヒラ/ダヴィド・オグロドニク/アガタ・ブゼク/ピョトル・グロバツキ/アンナマリア・ブチェク
ナンバー 201
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

約束時間は午後5時。だが、すでに4〜5分過ぎている。急がなくてはと焦りつつ、これくらいは大丈夫と己に言い聞かせたりもする。偶然なのか必然なのか、その遅れがそこに居合わせた人々を壮大な悲劇に巻き込んでいく。物語は、街の中心部に立つホテルと周辺に集った老若男女が、それぞれの未来を知らぬまま夕方のひと時を過ごす姿を描く。監督口説かれる女優嫉妬深い夫、情事を楽しむカップルバイク便ライダーホットドッグ屋の男、元カレから犬を譲られた少女現場に駆けつける救急隊員。怒り、戸惑い、倦怠、使命感、反省、苛立ち……。複雑な感情が入り混じった町の一角でまったく無関係な彼らの人生が交差する。何かが起きそうでなかなか起こらない、その焦らしに焦らす展開に、見る者もこの群像劇に参加させられる気分になる。

些細な原因で夫とケンカした女優のアニャは、ホテルの一室で映画監督からセクハラまがいの面接を受けるが、なんとか聞き流している。数分後、夫は彼女の後を追うが、部屋に取り次いでもらえない。

監督質問粘着質かつ高圧的な言葉でアニャを少しずつ追い詰めていく。仕事は欲しいが夫を裏切れない。それ以上に軽々しく見られたくないと、セクシーな肉体を売り物にしている彼女監督の劣情を拒否し続ける。もはや監督女優ではなく男と女駆け引き。どうしてもヤリたい男は策を弄し、安売りしたくない女は自分から要求を口にしない。そして妻の気持ちを見抜いている夫。ドア一枚隔てたスイートルーム廊下は、アニャが本当はどちら側に身を置きたいのかを象徴する。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

やがてアニャの夫が暴走したことから、ごく普通日常が音を立てて崩れていく。不運と不運がタイミングよく連鎖し、さらなる惨劇を呼ぶのだ。ただ、クライマックスカタストロフィまでに登場人物同士のつながりを仄めかし、空に浮かんだ黒い点に運命を暗示する積極的意味を持たせたほうがより映画的だったのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★*

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