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2016-12-09 ナイスガイズ! このエントリーを含むブックマーク

otello2016-12-09

ナイスガイズ! THE NICE GUYS

監督 シェーン・ブラック
出演 ラッセル・クロウ/ライアン・ゴズリング/アンゴーリーライス/マット・ボーマー/マーガレット・クアリー/キース・デビッド/キム・ベイシンガー
ナンバー 272
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

事故死したポルノ女優雲隠れした環境保護団体の娘、焼失したはずのフィルム、そして政府高官。期せずしてコンビを組む羽目になったトラブル解決屋と子連れ探偵は、巨大な利権をめぐる陰謀の渦に飛び込んでいく。物語は、人探しの依頼を受けた彼らが互いに協力し、反発しあいながらも複雑にこじれた事件真相に迫っていく過程を描く。発砲も暴力も厭わないハードボイルド世界、2人はタフでクールな男を気取ろうとするが、肝心なところで間抜け面を覗かせる。そんな頼りないオッサンたちの危機を救うのが機転の利く探偵娘。小柄な少女なのに向こう見ずな勇気咄嗟の行動力も抜群。彼女を演じたアンゴーリーライス存在感をみせ、ライアンゴスリングラッセル・クロウといったスターよりも印象に残った。

失踪したアメリア行方を追うヒーリーギャングに脅されたのを機に、一度はぶちのめした探偵マーチと手を組む。2人はアメリア排ガス規制運動だけでなくポルノ映画にも手を出していると知り、映画関係者パーティに忍び込む。

マーチはそこでプロデューサー死体発見、ヒーリーギャングと出くわし格闘になる。一方、助手も務めるマーチの娘・ホリーは彼らより早くアメリアに近づくがギャングさらわれかける。にもかかわらず独力で脱出した上に、瀕死の重傷を負ったギャングを助けようとする。邪魔する者は有無を言わさず排除する裏社会流儀に反し、あくま人間としての優しさを捨てないホリーの態度と振る舞いが、一服の清涼剤になっていた。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

まだハイテク機器などなく、情報自分の目で確かめ、直接ネタ元と会わなければ得られない。その断片をひとつずつつなぎ合わせると、黒幕の画が見えてくる。映画の展開は21世紀スピード感から比べるといかにももどかしいが、それが逆に、人は人と関わることで変っていくと教えてくれる。自動車ポルノ米国自由経済の中心地だったころを象徴する産業が、1970年代空気を濃密に再現していた。

オススメ度 ★★★

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2016-12-08 たかが世界の終わり このエントリーを含むブックマーク

otello2016-12-08

たか世界の終わり JUSTE LA FIN DU MONDE

監督 グザビエ・ドラン
出演 ギャスパー・ウリエル/レア・セドゥー/マリオン・コティヤール/バンサンカッセル/ナタリーバイ
ナンバー 285
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

安らぎとなるはずの“家”に帰ったのに、待っていたのは愛だけではなく、刺々しい言葉の雨。長年顔を見せなかった。都会での活躍を、家族新聞で知るという不義理もした。同性愛者ゆえの葛藤もある。物語は、近づく死を母兄妹に告げるため実家に戻った男が、居場所を見つけられずに孤独を深めていく過程を描く。母はもちろん歓迎してくれた。妹も再会の喜びを隠さない。初対面の兄嫁は気を使ってくれる。ところが、毒舌家の兄は不愉快なことばかり口走り、言葉尻を捕えては絡んでくる。その間、打ち明ける機会を探るが、いつも話の腰を折られてしまう。クローズアップの多用、言い争いと言い訳の繰り返し、そんな中、劇中歌歌詞に込められた感情が多くを話さない主人公の心象を可視化する。予定調和的な流れを拒否した展開は、最後までスリリングだ。

12年ぶりに帰宅したルイを迎えるために、母と妹が住む家に兄夫婦も集まる。だが、控えめな兄嫁以外は気持ちストレートに出すために口論が絶えない。ルイはどう反応すべきか戸惑ってしまう。

兄のアントワーヌはルイの性的嗜好理解できず、気まずい思いをしてきたのだろう。家を出た後、一応作家としてそれなりの評価を得ているルイに対する嫉妬もある。母や妹・妻ら、女たちとはすぐに打ち解けたのも気に食わない。一方で、仲の良い兄弟だった頃の楽しい思い出も捨てきれない。複雑な胸の内を整理しきれず、つい子供じみた態度を取るアントワーヌが、家族同性愛者を持った“普通の人々”の本音を代弁していた。その、説明を省いた映像がこの兄弟過去と不在の長さを浮き彫りにしていた。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

家族は皆気づいていたからこそ、時にアントワーヌのようにケンカ腰になってもルイが「死」を口にするのを思いとどまらせる。本当は愛していると伝えたい、でもそれを言えば壊れてしまうような気がする。何が壊れるのかはわからないが、平穏日常が終わるのは確か。うわべの幸せにしがみつく彼らの姿が人間本質を赤裸々に語っていた。

オススメ度 ★★★

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2016-12-07 マダム・フローレンス! 夢見るふたり このエントリーを含むブックマーク

otello2016-12-07

マダム・フローレンス! 夢見るふたり
FLORENCE FOSTER JENKINS

監督 スティーヴン・フリアーズ
出演 メリル・ストリープ/ヒュー・グラント/サイモン・ヘルバーグ/レベッカ・フェルグソン/ニナ・アリアン
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

財布を開けばカネをばらまくお大尽、口を開けば耳をふさぎたくなる超絶音痴自分には音楽の才能と天賦の歌唱力があると信じて疑わない彼女は、批判的な態度を見せない取り巻きに囲まれて確信する。“私の美声カーネギーホールに値する”と。物語は、大金持ちで篤志家の老婦人と、秘書も兼ねる内縁の夫の深い信頼を描く。世界指揮者オペラハウス指導者彼女の前では腰を低くする。内縁の夫は彼女を守るために奔走する。資金力ゆえ誰もがご機嫌を取ろうとし、過剰に装飾された彼女の評判はNY社交界伝説になっていく。感染症が原因で少し正気を失ったヒロイン感情メリル・ストリープが繊細な表情で再現、周囲から愛された彼女の最晩年チャーミングに演じていた。

フローレンス身の回りを長年取り仕切ってきたシンクレア彼女リサイタルピアノ伴奏者を募集、やわらかな曲を弾いたコズメを採用する。フローレンス技量疑念を抱くコズメに、シンクレアは忠誠を誓わせる。

満席ホールで自慢ののどを披露するフローレンス。だが、ほとんどの招待客は我慢して聞いている。こらえきれなくなった金髪女が笑い転げてもシンクレアは冷静に対処して、フローレンスが傷つかないように差配する。シンクレアにとっても最初は金蔓だったのだろう。ところが彼女に仕えるうちに純粋さと思いやりと真剣生き方に魅了され、いつの間にか自らの結婚生活犠牲にしてまで彼女人生を捧げている。愛というには生臭い仕事というには濃厚すぎる。善意で結ばれたふたり関係が心地よい。

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やがてカーネギーホールでのソロリサイタルに臨むフローレンス。聴衆は正直に拒否反応を示すが、かつて腹を抱えた金髪女が宥め何とか無事終える。しかし、新聞記事までは抑えきれず、己の歌の真実を知ったフローレンスは卒倒する。その間、カメラは“勘違いばあさんの滑稽な自己満足”と揶揄するのではなく、むしろ彼女を見守っている。このやさしい視点が余計に梅毒患者の悲哀を感じさせるのだ。

オススメ度 ★★*

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2016-12-06 アズミ・ハルコは行方不明 このエントリーを含むブックマーク

otello2016-12-06

ズミハルコは行方不明

監督 松居大悟
出演 蒼井優/高畑充希/太賀/葉山奨之/石崎ひゅーい/菊池亜希子/山田真歩
ナンバー 289
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

つの間にか20代後半になっている。家でも会社でも楽しいことはなく、声をかけてきた幼馴染とは恋人にもなれず中途半端なまま。映画はさえない日常を送っているOL失踪し、彼女の“尋ね人ポスター”をグラフィティにした若者たち世間にさざ波を起こしていく過程を追う。夜な夜な街を徘徊する若者らのテンションは高いが、実は鬱屈した日々に刺激を求めているだけ。そして歓喜雀躍しながら男を襲うJK軍団。安月給の正社員単純労働バイトくらいしか仕事のない地方都市尊敬できない親世代うんざりしている彼らの、しょーもない人生が確実に待っている閉塞感と、それにとらわれるのを少しでも先送りしようとする心理リアル再現されていた。もはや「青春」が死語になった現代、途方に暮れた人々の停滞した生き方が切ない。

成人式でユキオと再会した愛菜は、同級生だった学も加えて、行方不明のままの春子ステンシル画を街中に印す。一方でJK軍団によるオヤジ狩りが頻発、春子の隣人や学も暴行を受ける。

暴力の高揚感に打ち震えるJKたちは漲るエナジーを発散させている。学校卒業した愛菜は、社会という馴染みたくない現実と折り合いをつけつつも心の老化と戦っている。春子は男にすがりついて、まだ“女”であるのを確認するまでに自己評価を落としている。ティーンエイジャーと二十歳とアラサー、時は残酷なまでに女たちから存在価値を奪っていくばかりだ。資格学歴も美貌もない、持っている財産若さのみ。そんな女たちが未来に抱く不安に胸が締め付けられる。

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ただ、2つの時間軸を交互に描き、さらにその時間軸の中でも時制をシャッフルする複雑な構成は、退屈な物語の粉飾に過ぎない。結果としてそれぞれの映像訴求力はあっても、全体としてまとまりを欠いている。ひとりのヒロインの、輝いていたJK時代、焦り始めたギャル時代、もう若くないと自覚したアラサー時代といったクロニクルにしたほうがすっきりしたのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★

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2016-12-05 母の残像 このエントリーを含むブックマーク

otello2016-12-05

母の残像 LOUDER THAN BOMBS

監督 ヨアキム・トリアー
出演 ガブリエル・バーン/ジェシー・アイゼンバーグ/イザベル・ユペール/デヴィン・ドルイド/デヴィッド・ストラザーン
ナンバー 288
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

時が彼女を亡くした悲しみを癒してくれた。出会い喪失感を埋めてくれた。それでも、残された父と息子の感情は冷めたまま元に戻らない。物語は、交通事故死した女性カメラマンの遺品を整理しているうちに、夫と息子たちが彼女の不在に苦悩させられる姿を描く。銃弾飛び交う戦場を駆け巡った彼女は多くの死に直面するたびに無力感に襲われていた。一方で、家族よりも現場を優先したために長い取材旅行から帰っても居場所がなく、すぐにまた旅立ってしまう。そんな彼女に、夫として息子としての気持ち押し付けていたのではないか、そのストレスに耐えきれず自殺したのではないかと、理解してやれなかった男たちは何度も自問する。散文的な映像は、家庭を顧みない女と結婚した男とその息子たちの複雑な思いを繊細に再現する。

高名な報道カメラマン・イザベルの回顧展が準備され、息子のジョナ彼女写真を選別するために父・ジーンと弟・コンラッドが住む実家を訪れる。ところが、ジーンとコンラッド関係はぎくしゃくしていた。

イザベルの死から3年が経っている。ジョナ赤ちゃんが生まれたばかり。コンラッドクラス女子片思いしている。ジーンはコンラッド学校先生と密かに交際している。それぞれがイザベルのいない日常に慣れ、己の人生を歩んでいる。だからこそイザベルを意識せざるを得ない回顧展にあまり積極的ではない。確かに彼女作品には戦争真実を伝える力がある。だがそれは彼女が一番愛したもの自分たちではなかったことの裏返し。そこに気づき誰も信じられなくなったコンラッドの心が切ない。

ネタばれ注意! 以下 結末に触れています

ジーンはいさら変わる勇気はない。ジョナも家庭を持っている。コンラッドだけに成長の余地がある。漫然としたエピソードの中、ひとりで歩き出すしかないと知ったコンラッドわずかな希望になっていた。女が仕事に命を懸ける、それは子供たちを決して幸せにしない。イザベルの瞳は、キャリア志向ママたちにその覚悟があるかと問うているようだった。

オススメ度 ★★*

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