今週のオタク市況:ゴンゾのマザーズ上場と「はてな」の住所データ収集

先月末あたりから、色んな意味で飛躍を目指す日本のコンテンツ企業の動きが垣間見られて非常に楽しかった。とりあえず株式市場も月曜日までお休みなので、ちょっと見てみよう。
あ、貼ってある画像は、土曜日深夜の心のオアシス、昔懐かしい進藤晶子アナ「ランク王国」のコスプレ・パジャマコレクションから。ベビースタイルですな。
まずはゴンゾこと、株式会社GDHの上場。
11月9日の公開価格が24万円で、初値が29万2000円の21%の上昇。
週刊マガジンで株式取引を学んだ超素人相場師(笑)が、初日のストップ高で買えなくて、2日目買ったとしても、公開3日たった金曜日の終わり値が41万9000円だったことを考えると、まぁこの週末に富士樹海に首つりに行かなくても良かったのではないかと【これぐらいの株単価で富士樹海に行く行かないなんてないか】
皮肉じゃなくてIPO市場でも上出来だと思う。とりあえずほっと一息ついているアニメ関係者が多いのではないだろうか? 特に次に上場をもくろんでいるプロダクションI.G.などは……。
いや、ライトノベル完全読本を発行している日経BP的にも、この好成績は大助かりである。日経キャラクターズGONZO特集をやった甲斐があった(笑) あれがコンビニ並んで、村田蓮爾キャラがおじさん達の目に触れたのは大きかったと思う。
表紙にでっかく「GONZO 急成長のワケ」と入れたしな!
一応、株式市場での評判。
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それにゴンゾの株主にフジテレビも入っているのも安心された理由かも知れない。来年の宮部みゆきブレイブ・ストーリー」アニメ化もある。
ZAKZAK
あと「フランスのアニメ制作会社との提携」とか「SPC方式」によるアニメーション制作資金融資を実行しというのが話題になるのかなぁ?

投資会社であるApax Globis Japan Fund,L.P.とat Japan Media LLCは、半年間は株を売らないロックアップがかかっているし、「イノセンス」「スチームボーイ」が転けたとはいえ、まだ「ハウルの動く城」という大横綱が残っている以上は、ゴンゾの社内の制作体制が既に崩壊しているという内在的な危機はともかくとして、業界を知らない投資家を上手く夢見させてあげたい【訳:だまくらかしてもらいたい】
あとGONZOファンの多い海外投資家達になんとかこう「イノセンスがアカデミー賞アニメ部門が確実ですよ、ええ!」と信じ込ませ続ければ何とかなるかも。あと2年か、3年くらい、いろんな地場固めが済むまで「日本アニメは素晴らしい。最高の投資先だ!」という嘘を外国人投資家につき続けなければならないんだから。
絶対、半年後のGONZOの株式比率は、外国人投資家が増えていると思う。いや無理矢理にでもこうして外国から金を巻き上げていかないと、日本コンテンツ産業は崩壊するからなぁ……。

それとはまた立場が違うけれど、旧来の育ててくれてきたユーザーから金を巻き上げる新たな算段をとろうとして、下手をうったのが「はてな」
はてなへの住所登録の義務化撤回について
個人情報の扱い云々というのは、他のサイトで色々扱われているのであえてココでノベル必要はまったくないだろう。面白いなぁと思うのは、はてなもまた「企業設立3年目の危機」から逃れるには成長度合が足りなかったのかという点で興味深い点だ。
関西の大学が、法学部だった関係で知り合いにやたらと公認会計士や弁護士がいる。結果、帰省して飲み会などをやるといつも話題になるのが、「会社にも、人間の一生と同じく区切りがあるよね」という話だ。
「はてな」も2001年から設立3年目。最初の節目だ。
【それら友人たちと話して、この話題に膨らみ持たせられるのは帰省してからのことなので、これは極めて暫定版。でも年明けには騒動収まっちゃうだろうし……。だから多少間違っていても勘弁してほしい】
「企業設立3年目の節目」というのは、「小学校入学」にきわめて近い。例をあげていってみよう。
税務的・会社会計的には

  • 消費税納入の開始

経営的には3期目を迎える上で

  • 前2期から導き出される各種データ

が色々見えてきて、そろそろ会社に出入りしている税理士・会計士などが、コンサルティングをする基礎資料がそろってくる。このあたりから会社社長の責任がメキメキと増えてくるのが実感として見える時期だ。
正直なところ、ここらで飛躍するには顧客数を一発増やさなきゃならないし、加えて言うのであれば、質を変えなきゃいけない。消費者とのなぁなぁな馴れ合いを保持したままでは、収益を効率的に上げることが出来ない。

といった人事計画もそろそろ策定していかなければならない。というか、社長が見せないとスタッフの士気が落ちる。5年10年を見据えた人事計画ナンぞをたてろと、関係各社からつつかれはじめる。
学生さんにはなんか大変そうに見えるかもしれないが、これは小学生に課せられる要求と非常に似ている。

  • 義務教育を受ける義務
  • お小遣いを挙げる代わりに伴う責任
  • 地域社会を成す最小構成員としての義務
  • 通信簿による最初の成績評価:勝ち組・負け組の最初の判断

そろそろ設立・維持の雑務から手が離れて、次の一手をどうするかを社員にも社外にも見せなきゃならない。日本は基本的にベンチャーであっても社会風土的に終身雇用・定期昇給を重視する……というよりそれがないとまともな社会生活が送れないシステムになっているので、例えば社員も両親から、「本当にお前のいる会社は大丈夫なのか」とせっつかれたりする。大体、3年も安定して会社にいれば、超過労働でもしていない限り独身社員はそろそろ結婚なども視野に入れはじめる【給料遅配が設立3年の間におきるような会社は問題外。幼稚園で終り】
日本に置ける会社法やら税法、社会風土を総合すると、その最初のステップアップが、設立3年目〜4年目に行う必要があるわけだ。
成長率が急激で未開拓市場が有り余っている会社は、割と「3年目の危機」を簡単に乗り越えられるものだが、そうでない会社はどうしても「新規事業」やら「社内整備による収益性の改善→スタッフの昇給」を行わなければならない。
注目を浴びれば浴びるほど、色んな公的責任を問われる場合もぞろぞろでてくるしな。
撒けるほど金があったり、社長がある程度社会経験を積んでいて頭の良い場合は、大体3年目あたりで、<絶対・確実・必須>で、税理士・会計士あたりから弁護士を紹介してもらって社内規則設定やら、対外的な行動規範の整備をやる時期でもある。
というか……PL法やらなんやらかんやらあるご時世、八百屋などの店舗系の自営業をのぞけば、取り分けITベンチャー系では、法的基盤や慣習法が未整備なだけに、絶対、このあたりで弁護士やある程度のコンサルティング系にスタッフに会う必要があるのが、現在の会社運営の基礎の基礎といってもいい。
「小学生」ちっくに言うのであれば

青信号は渡っても良い。黄信号は注意。赤信号は止まれ。

を、はじめて通学する小学生1年生に教えるのと同じくらい近い。これをやっていないベンチャーは恐ろしくマズイ。アメリカ経営学では基礎の基礎だ。
これらの作業を、大体、設立5年目までに終えておかないと、その会社は10年持たない。かりに収益が黒字であっても天井が見える。スタッフが辞めていく。まぁ分かり易い。
これらの事情をこのサイトを読んでいるライトノベル系読者に分かり易く説明すると、「十二国記」の「帰山」において、利広などが述べている王朝の寿命の推移を類推すればよいかもしれない。まぁ……難しいとは思うけれど。こういうメタファーと読める要素が含まれているから十二国記は不思議な小説なのだが……。
閑話休題。
取り分けオタク的な会社では、旧来のユーザーからより一般性のあるユーザーへどのように切り替えていくか、あるいは公的機関(マスコミ・出版社)と付き合いをどうしていくかなどを視野に含めなければならない。
法的な分析はともかくとして、それにしては今回の「はてな」のやり方は、中途半端に学生気分を引きずっているというか、とにかく下手をうったなぁという部分が強い。
社外的には当然だが、社内的にもこれはマズイ。なるほどトラブル対処能力の上限が見えたなぁという気がする。
「3年目の節目」を乗り切る方法論は色々あるし、また、こうした事態に至った上での色んなアドバイスもおそらく寄せられているだろう。
個人的には、はじめて利用したブログであるし、今後も頑張って欲しいと思う。思う反面、このトラブルをどのように収集するか、その手腕こそが今後の会社の器を決定づける大きな要素にもなるので、興味深く見守らせてもらおうと思う。
はてなポイントを購入して、カウンタなどを設置しようかと思っていたのだけれども、それは、残念ながらこの騒動が収まってからかなぁ(溜息)

単純にまとめよう……。まず、あまり【夢を見せる】【だまくらかす】という言葉に過剰反応しないように。生きていく上では、「ゴンゾ」も「はてな」も必要ないのだから。オタク的ストレス解消装置に過ぎない「アニメ制作会社」「ブログ制作会社」をいかに一般市場経済に組み込むかの多少の軋みがでていたのが、先月末から今週までの動きだったなぁってことで。