黙然日記(廃墟)

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産経抄の政治宣伝観。他。

産経抄】3月12日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120312/dst12031203130000-n1.htm

 3・11が1年の区切りを経て、これからはだんだん9・1や1・17、あるいは8・6/8・9のような存在に、良かれ悪しかれなっていくのでしょう。地震そのものは一瞬で終わりますが、放射能との長い戦い、あるいは人災が絡むという点で、原爆忌に似た面があるかもしれません。
 《毎年の原爆慰霊祭は〔中略〕しばしば特定のイデオロギーの宣伝や、政治パフォーマンスに利用されてきた》。「産経抄」のこの指摘は、文面としてはまったく正しいものです。ただ、おそらく親米右派の産経としては、左派勢力の宣伝やパフォーマンスだけを念頭に置いていると思われます。ここ数年は、広島市長の平和宣言「だけ」に難癖を付け続けたことが思い返されます。しかし現在の実情は、祈念式に合わせて「日本は核保有せよ」との威勢の良い講演が行われ、産経はそれを好意的に取り上げるという惨状に陥っています。反核の祈りの日以外ではあり得ない原爆の日を歪めているのは、どちらでしょうか。繰り返しますが、「産経抄」の文面は正しいとしても、それに対する反省はあるのでしょうか。

【岡田浩明の永田町便り】民主党政権の「粗悪さ」露呈 震災から丸1年+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120311/plc12031118010006-n1.htm

 昨日付記事の取りこぼし分です。まず、写真のキャプションで《国会を激震が襲った》という表現がありますが、どういうつもりでしょうか。「激震」は気象庁によるかつての震度区分で、震度7に相当します。「激震が襲った」=「想定しうる最大級の脅威が来た」という意味で慣用句的に使われていましたが、史上初めて震度7が観測された阪神淡路大震災以後は、心ある人は使わなくなった表現です。まして、実際に震度7が観測された地震に関して、震度5止まりだった永田町における比喩に使うことは、考えられません。
 本文は、民間事故調査委員会の中間報告書にもとづいた菅直人前首相叩きです。首相自身が現場の細かいデータまで求めたことに関して、《「首相がそんな細かいことまで聞くなんて国としてどうなのか、ぞっとした」》という証言を持ち出し攻撃していますが、これは証言者自身が、中間報告の文脈は間違っている、首相がそこまでしなきゃいけない周囲の硬直ぶりに「ぞっとした」のだ、と表明しているのは、周知のとおりです。いまだにこんな情報で菅政権と民主党を攻撃できると思っている岡田記者の感覚に、ぞっとします。

「【軍事情勢】現代に生きる「田原坂」の戦訓」:イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/549047/

 同じく昨日の分で、野口裕之九州総局長です。なにも3月11日の記事がすべて震災がらみでなければならないという理由はないのですが、ここまで無視されるといっそ気持ちがいいですね。
 西南戦争から日清戦争に至る期間の、日本陸軍の小銃についてだらだら語っているだけで、なにが戦訓なのかわかりません。「最新兵器を使った方が強い」というのは、はたして「戦訓」と呼べるのでしょうか。裏を返せば「貧弱な武装で戦争を起こすべきではない」という、これも常識になります。野口記者は、現代における、武器輸出三原則のせいで装備の最新化がはかれず、予算も削減されている自衛隊と比較して嘆いていますが、これは日本から戦争を仕掛けることが(常識的に)できないことを意味し、専守防衛国家として慶賀に堪えないことであります。それともなんですか、野口記者には別の思惑があるとでもいうのでしょうか。