Paul Frankl 「建築史の基礎概念」パート2 要約

(表は「建築美論の歩み」を参考に私が再度つくったものです)

第一章が具体的でわかりやすいです。
加算的空間。
サンピエトロのブラマンテ計画案を参考に見るとわかるんですが、全体の平面フォルムは単純なギリシャ十字に十字の先端に半円が付属しています。中心点でさらに十字平面を45度回転してコピペしたみたいな形になっています。中心十字に対してコブみたいに礼拝堂がついています。塀面全体としてはそれぞれの空間で独立性を保っていて、空間的魅力が倍増するわけじゃない。掛け算というより足し算的に礼拝堂がついています。

割り算的空間は、部分よりも全体が優先していて、それぞれの部分的な空間は独立性も完結性ももたない。平面では円や長方形が相互に貫通し合っている。
私流で説明します。CAD操作で例えると、こんな感じ。
加算的はそれぞれ円と長方形が独立して接近している状態。

割り算では「結合」ツールを使った後の状態に近い感じ。それが断面的にも割り算的である。たとえばヴェネツェアのサンジョルジョマッジョーレは平面は身廊側廊が一体となっていますが、断面的にみると異なる幾何学の天井が接しています。身廊の天井がルネット(半円形アーチ)で側廊交差ヴォールト。部分が全体空間の断片にすぎないというのが割り算的です。
今度ロココはその結合の仕方がさらに複雑でぐにょぐにょーんとした結合操作しています。立体的とかS字曲線のてんこもりです。

断面でも幾何学が食い違ってくっ付いているように見える。

19世紀はどうかというと、、、、ニュートラル。共通特色がないっていうんです。あらー。強烈な個性を打ち出したロココの後は、つかみにくい空間形態。


パウルさんの論は細かく見ていくと、その観察眼と豊富な語彙で非常に参考になります。が、19世紀を如実に語ってほしかったのお。

Paul Frankl 「建築史の基礎概念」

卒論生、M1の研究室読書会に混ざりました。
「建築史の基礎概念」(パウルフランクル著、香山寿夫)
2,3年前に読んだときはさっぱりわからなかったのですが、再読すると名著だなと改めて思いました。
WIKI日本語に著者紹介は出ていませんが、英語で出てました。
http://www.dictionaryofarthistorians.org/franklp.htm
Paul Frankl は20世紀前〜半ばの建築美術史家。ヴェルフリン(「美術史の基礎概念」)学派です。ヴェルフリン学派の共通点は、美術作品の形態的特色を徹底的に分析し、それら特色は歴史や技術ではなくて内部的な必然性によって変遷すると考える点です。例Gギーディオン。

「建築美論の歩み」(井上 充夫著)によると「本書ではヴェルフリンの『ルネッサンスバロック』のテーマと方法を継承し、それを補足・修正する意図をもってかかれて」いるそうです。「美術史〜」は、対概念で区別していくことで16,7世紀芸術の様式展開を、時代に特有の視覚形式と解明することで説明しようとしたものです。芸術作品を詳細に観察する過程で、ルネッサンスバロックから5組の対概念(線画的、平面的、閉ざされた形式、多数性、明瞭性)を設定しました。
「〜史の概論」共通してすごい点は、設定した対概念であらゆる時代の作品を観察し語ることができる、言語化が可能だということです。

研究会で後輩が「建築史〜」の第二章「物体形態」のまとめるに、パウルが用いたメタファを各段階ごとに記載していて、目から鱗でした。
パウルさんが本論でしたことは、ルネッサンスから19世紀までを4つの段階としました。各時期の建築を4つの要素(空間・物体・可視・目的)に関して検討し、その特色を抽出したことです。第二章では建築の「力の表現」の特徴を表すのに、ルネサンスは「小さな島にただ一人満足気に立つ英雄」であり、バロックでは「圧倒的な潮流に立ち向かって泳ぐヘラクレスのような人物」とたとえています。ルネサンスの「力の表現」は力強さの発生する源で放射で広がる。それに対してバロックは力の伝達で、浸透する力への抵抗がみられる。
パウルフランクの使う言葉が詩的なんだけどわかりやすい!というかそれが説得力のある形態論なんだあ。気づいていた後輩もすごいし、パウルもすごいっす。