時論 2015年3月

1.川崎の事件
 川崎市川崎区の河川敷での残酷な中学1年生殺害事件で地検は18歳の少年を殺人で、2人の17歳の少年を傷害致死で家裁に送致した。
 事件からもうすぐ一ヶ月経つが現場には今も花束が絶えないという。地域の人にとって、この事件がとても他人事とは思えないのだろう。
 川崎市川崎区はJR川崎駅、市役所、川崎大師があり、今は駅前の再開発が進んだ華やかな街だが、市役所の裏手には全国有数の大歓楽街があり、海側の大工業地帯との間には、背の低い労働者の住宅が密集しコリアンタウンもあるという不思議な街だ。主犯の青年の母親はフィリピンの人だというが、父親の背景は明らかにされていない。1947年には密造酒の取り締まりで神奈川税務署員殉職事件がおきた地域でもある。
 評論家は慎重に対応し地域性を論じないため、違和感を感じる。地域の議会や政治の反応が比較的早いのは彼らもそれが根の深い問題であることを自覚しているからだろう。外国人労働者と移民の問題をもっときっちり、国会で議論してほしい。
2.中国・韓国の反日攻勢と安倍首相の米国議会演説
 米国メリーランド州の州上院は3月半ばに日本の戦時中の慰安婦問題を非難する決議を全会一致で採択し、下院でも同様の内容の決議案が審議されているという。昨年11月に当選した知事の再婚された奥方は韓国系の移民で、名前だけからすると在日の方かも知れない。州議会では中国系の議員がその条例を主導しているようだ。移住・帰化した人の人数と年間7000億ドルとも1億ドルともいわれる中国の反日工作資金も効いているのだろう。
 ワシントンDCは連邦に土地が譲渡されるまでは、メリーランド州の一部だった。そのためワシントンDC近くの、メリーランド州べセスダにはワシントンンで働く高級公務員が多く住んでいる。海軍病院、軍の情報組織に加えて、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)がある。NIHには常時200〜250人の日本人医師や製薬会社からの研究者が赴任し600人といわれる日本人コミュニティーもある。ただ人数だけでいったら、中国系・韓国系にははるかに及ばない。
 日本としては、キチンとした反論を急ぐべきだろう。その意味では、安倍首相の訪米時の米国議会での演説が注目されている。中国・韓国は、演説できないように最大限の運動をしてきた。そして演説することになっても、その内容を様々な手段で制約を加えようとしている。事実を事実として述べることが大切だ。ここで首相が反論しなければ、反論しないことをよって彼らの議論の正しさを裏打ちすることになってしまう。首相が反論すれば、少数の中国系や韓国系のジャーナリストによって捻じ曲げられた世界の議論を修正できる可能性がある。加えて、そうした勢力の存在、メカニズムにも言及すべきだろう。
 黄文雄先生によれば、中国人と韓国人が歴史を語りたがるのは、真実を知りたいからではない。フィクションやファンタジーを歴史にすりかえ、政治に利用しているためであるという。
3.シェールガス革命がなくなった米国経済の行方
 米国の直近のGDP確定値は前期比5.0%増であり非常に高い。雇用統計においても、11月の失業率は5.8%と前月と同水準だが、非農業部門の雇用者数が約32万人増と市場予想を大きく超えている。米国株式も好調だ。量的金融緩和で長期金利が低下し株価や住宅価格が上昇したことで、資産効果が大きく働いている。輸出の比率が小さいので、新興国の成長鈍化も大きな影響はない。原油価格の下落が消費を拡大しているという。
 果たしてそうだろうか。丁度ほど1年前はシェール革命が米国経済を転換させると言っていた。エネルギー価格の下落により、シェール関連企業は操業停止やはチャプター11になるところが多いのではないか。そうだとすれば米国経済復活のシナリオは消えたのではないだろうか。
 原油価格の指標、WTI(West Texas Intermediate)は、一時は140ドルまで上昇したが、最近では100ドルから50ドルを割り込むところまで下落した。たしかにロシア・イラン・ベネズエラなどの米国に敵対する産油国も苦しんでいるが、米国自身も産油国となるので経済が復活するというのが1年前の主張だった。原油価格の低下は、シェールガスの開発コストを割高にするため、シェールガスの開発・採掘は今後大きく減速する。
 消費拡大が米国経済の回復に寄与する場合には、米国の経常収支赤字が再び拡大する。今まで考えていた経常収支の黒字化をともなう経済成長という米国経済の構造変化とは大きく異なるのに誰も言及しない。そうした経済成長は、国際基軸通貨としてのドルの問題を拡大する。
4.国際基軸通貨をめぐる動き
 原油価格の落ち込みは、原油の需給だけでなくて、米国マネタリーベース残高の減少によっても発生していると考えられるのではないか。つまりFRBの金融政策が、正常化し利上げと超過準備の削減を加速していくことを反映している可能性がある。
 3月17日に中国主導で年内発足を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、フランス、ドイツ、イタリアも 参加することが報じられたた。英国に続き、欧州主要国が加盟で合意したことは、この投資銀に距離を置くよう働き掛けてきたオバマ米政権の「打撃」になると分析している。ドルに依存しない経済が拡大することは米国の覇権の足元を侵食する。オーストラリアと韓国もこれまでの姿勢を改め、参加を検討しているという。ヨーロッパは、ウクライナでロシアと必要以上に対決させようとしている米国に腹を立てているということもあるかもしれない。ウクライナが400-500億ドル、どうやって返すのだろうか。
 日本の菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行AIIBへの日本の関与に関し、従来申し合わせてきたように、公正なガバナンスの確立 ができるのか。持続可能性を無視した貸し付けを行うことで他の債権者に損害を与えることに結果的になるのではないか。参加には慎重な立場だしている。
 リーマンショック後の国際債券市場のユーロ債、ドル債は活況を呈した。しかしその発行主体は新興国の事業法人だった。これらの社債の価格が大きく下落し、デフォルトする可能性があるのではないか。新興国の事業法人で国際債券市場で資金調達をおこなうインセンティブがある企業を考えると、鉱山や油田関連の企業だった。こうした企業が破綻したり、社債のデフォルトがおこると、その社債を購入した金融機関の経営危機を招く。不動産バブルがはじけ、シャドーバンキングが破たんし、党内の対立は内戦一歩手前だと言われる中国にそれをファイナンスする実力はないのではないか。
5.中国の2015年の経済成長率は7.3%ではなく4.4%と予想される
 日本でも中国のGDP統計のいかがわしさは多くのエコノミストや経済学者が指摘し、産経の田村秀男氏は「電力消費量」と「鉄道貨物輸送量」から推測して、「マイナス成長」ではないかと主張されたいたが、英国の「ロンバート・ストリート研究所」のダイアナ・チョイレバ研究員は、中国の2015年第四四半期のGDPは1.7%下がっており、年間を通じて4.4%成長とみるのが妥当と発表した。中国の賃金があがり、世界の工場という魅力は急速に薄れ、外国企業ばかりか中国の企業が海外へ工場移転を進めており、GDP成長が5%を割り込めば、失業率も高まり、企業経営は苦境に陥るという。そうなれば人民元の為替レートは当然、下方修正されなければならない。