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2012-02-13

[][][]安定した鈴城節。『JC探偵でぃてくてぃ部』

 『看板娘はさしおさえ』『家族ゲーム』『くすりのマジョラム』など、フジモリが作者買いをしている数少ない4コマ漫画家・鈴城芹が新たに刊行しました初の非・4コママンガです。

 質屋の一人娘「早潮小絵(さしお さえ)」とその質屋に質草として持ち込まれた衣装行李に取り憑いていた幽霊少女・十世の二人とその家族たちが繰り広げるコメディ『看板娘はさしおさえ』、ゲーム好き家族の4コマ『家族ゲーム』、幼女体型の姉とたゆんたゆんな妹が経営する魔法薬屋のお話『くすりのマジョラム』と、シチュエーションは異なりながらも鈴城印クオリティで安心して読める作家さんですが、本作『JC探偵でぃてくてぃ部』もまた同様です。

f:id:sangencyaya:20120212010319j:image*1

 探偵だった曽祖父に憧れ「でぃてくてぃ部」を立ち上げた照葉、盗撮もといテクニカル担当・細、ぱんちら要員格闘少女・詩のJC(ジャパンカップでもジャッキーチェンでもなく、女子中学生の略です)3人組が学校に設立した「探偵部」ならぬ「でぃてくてぃ部」。当然ながら探偵の英訳「Detective」をもじったものですが、学校で起こる怪事件を3人が次々解決したりしなかったりしていく、というお話です。

 形式は基本4コマ、合間に非4コマと複合していますが、初めての非4コマということもあり作者も探り探り描いている様子が見受けられますが、いつものごとく、すれんだー少女とたゆんたゆんお姉さんたちによる爽やかな下ネタ入りのコメディ。もちろん鈴城芹作品には欠かせない年の差ガチ恋愛要素も満載。

 「探偵」がテーマとあって「少女探偵団」的なミステリ要素を期待してしまうと肩透かしを食らいます。なにせ立ち向かう事件が盗撮とかストーカーとか、いわゆる「本当に探偵が取り扱うような」事件。作者もあとがきで「すみません実は女子中学生の部活モノで、お仕事モノとしての探偵モノでした。殺人とかトリックとかは難しくて・・・」(P128)と書いていますが、質屋、薬屋などと並列する「探偵」という職業モノ、という認識で読むマンガです。いわゆるミステリ小説の探偵とは異なる脚でお金を稼ぐ泥臭さがほんのりとにじみ出てきて面白いです。

 オール4コマと異なり非4コマが混ざる分、1ページあたりの情報量がやや薄くなるためあっという間に読み終えてしまう1冊ですが、この作者は巻を追うごとにキャラクタの関係性が深まり、それがまた面白さに昇華していくという良さを持っています。*2

 まさに2巻に期待、としか言えませんが、2巻が出たら買ってしまうことは確かです。この作者の他の作品が好きでしたら読んで損はないと思います。

【関連】鈴城芹『くすりのマジョラム』芳文社

【作者HP】Dropwort Bell Castle

【作者twitter】@suzusiroseri

*1:P18

*2:余談ですが、作中では『看板娘はさしおさえ』の世界とちこっとリンクしています。

2012-02-12

[][][]京都記念&共同通信杯予想

今日は引っ越し準備をしながら競馬観戦予定。

■京都記念

◎トレイルブレイザー

古馬重賞の中でも最も出世レースと呼ぶのに相応しいアルゼンチン共和国杯の勝ち馬。

前目の競馬から押し切れば金星もありえる。

■共同通信杯

◎ディープブリランテ

今年のクラシック戦線はディープインパクト産駒一色だが、この馬もまたクラシック戦線の主役をはれる馬。

休養明け、調教イマイチと負ける要素は多々あるが、逆にここで勝てば先週のワールドエースに並んでクラシック戦線の主役に堂々と名乗りを上げられる。

寒い日に熱い競馬。来週はいよいよG1、春も近いです。

[][][]京都牝馬S&根岸S結果

■京都牝馬S結果

1 ◎ドナウブルー 1:33.8

2  ショウリュウムーン 1.1/4

3  アスカトップレディ クビ

4  ビッグスマイル クビ

5  クィーンズバーン 1/2

 好位からの押し切りで格上挑戦のドナウブルーが重賞V。初年度ディープ産駒はマイラー気質が多いですが、この馬もそれにぴたっとはまった感じですね。デムーロ弟の騎乗もまたはまりましたね。

 ヴィクトリアマイルの有力馬登場、といった感じですね。

 単勝440円、複勝190円的中。

■根岸S

1  シルクフォーチュン 1:23.5

2  トウショウカズン 1.1/2

3  テスタマッタ ハナ

4  タイセイレジェンド クビ

5  ダノンカモン クビ

豪脚一閃、シルクフォーチュンが見事な差し脚でV。

1400mのこのレースは本番(フェブラリーS)に直結しないのですが、この差し足は3着あたりにきそうですね(←偉そう)。

セイクリムズンは失速。残念です。

というわけで9戦2勝4分3敗、投資金額1,800円、回収金額1,520円で回収率84.4%と良い具合に当たってきました。

続く。

[][][]きさらぎ賞&東京新聞杯結果

今年のクラシック戦線は面白そうです。

■きさらぎ賞

1 ◎ワールドエース 1:47.0

2  ヒストリカル 1.1/2

3  ベールドインパクト 3

4  ジャスタウェイ 1.1/2

5  ローレルブレット 1.3/4

まさに驚愕。4角から早めに出たワールドエースが馬なりで上がり3ハロン33.0秒、レースレコードのおまけつき。

若駒Sでの教育が実を結んだ形ですね。これでクラシックの主役に堂々と躍り出ました。

このレース、1着から3着までディープ産駒。まさに恐るべしです。

単勝210円、複勝120円的中。

■東京新聞杯

1  ガルボ 1:32.8

2  コスモセンサー クビ

3  ヒットジャポット 2.1/2

4  フミノイマージン クビ

5  ダノンシャーク クビ

ニューイヤーSの1〜3着が独占。最強5歳世代のガルボがシンザン記念以来のVでした。

なかなかこのレースは難しいのですが、オッズは賢いですね。この3着までの組み合わせだけ安かったみたいです。

というわけでこちらは外れ。

11戦3勝4分4敗、投資金額2,200円、回収金額1,850円で回収率84.1%と1勝1敗ペースが進んでいます。

続く。

2012-02-10

[][]『ダック・コール』(稲見一良/ハヤカワ文庫)

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)

 『山賊ダイアリー』(岡本健太郎/イブニングKC)を読んで狩猟というものに少々興味を持ったところに本棚を見たら目に付いたので手に取ってみたのですが、とても面白かったです。

 著者あとがきによれば、本書の構成はブラッドベリ『刺青の男』にヒントを得たものとのことです。川原は浜辺で拾った石ころのありのままの形に鳥のイメージを重ねて画を書く男。そして、その石の鳥に魅了された若者。若者が次々に見る六つの夢が本書の物語です。その夢をつなぐ糸が、石に描かれた鳥です。本書は、プロローグから始まり「第一話 望遠」「第二話 パッセンジャー」「第三話 密猟志願」にモノローグを挿んで「第四話 ホイッパーウィル」「第五話 波の枕」「第六話 デコイとブンタ」にエピローグで終わるという構成になっています。六つのお話はそれぞれ独立したお話ですが、読み進めていくうちにイメージが重なり合うことで奥行きが生じています。著者が意図したとおりの効果です。

 本書には著者の狩猟と鳥についての知識と経験がそこかしこに活かされています。ですが、決して知識先行型のお話ではありません。「第三話 密猟志願」は狩猟度の高いお話なので内容も自然と専門的になりますが、それでも出過ぎることはなく、だからといって適当に描かれているということもなく、絶妙の匙加減で描かれています。

 狩猟というのは獲物を殺す行為なわけで、つまり本書には死が描かれています。ですが、その一方で本書に真に描かれているのは生であり生き方です。

 普段から肉は食べているわけで
 ぼくが知らない所で生き物は死んでいるわけですが
 それを自分の手で行うというのは
 やはり複雑なものがあります

『山賊ダイアリー』p22より

 私たちが普段目にして口にしている肉は、まさにどこで死んでいるかわからない生き物です。だからこそ、私たちは生きるためには殺さなくてはならないという「業」を意識せずに生活することができます。狩猟を描くということは、その肉がどこで死んだのか、つまりはどこで生きているのかを描くということです。狩猟が一歩間違えば野蛮な行為になることは、例えば本書「第二話 パッセンジャー」などに描かれているとおりです。とはいえ、狩猟とは人類の歴史においてもっとも初歩的にして根源的な営みです。その行為は生きることに直結しています。狩猟について触れるということは、日頃の生活で希薄になりがちな死生観の回復につながっていると言っても言い過ぎではないでしょう。本書しかり『山賊ダイアリー』しかり。そこに描かれているのは「殺すこと」の楽しさではなく「生きること」の楽しさです。

 とはいえ、本書は単純に狩猟や鳥の話ばかりでもなくて、「第四話 ホイッパーウィル」は脱獄囚を追跡するマンハントのお話ですし、「第五話 波の枕」では鳥が出てくるもののメインは亀だったり、「第六話 デコイとブンタ」はなんとデコイ(鴨をおびき寄せるために作られた木偶)の視点からの語りだったりと、なかなかにバリエーションに富んだ内容と作風になっています。ですが、私はやはり狩猟についてもっとも濃いお話である「第三話 密猟志願」が一番好きです。動く獲物を仕留めるために動的な未来位置に矢弾を送るイメージは「日常のSF」といえます。幻想的な体験は生の実感の中にこそある。そんなことを教えてくれるお話です。総じて印象に残る一冊です。オススメです。

【関連】「命」をいただくということ。『銀の匙』副読本の狩猟マンガ!? 岡本健太郎『山賊ダイアリー』 - 三軒茶屋 別館

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

2012-02-09

[][]『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

 都市をながめるには、目を開けているだけではだめだ。第一に、それを見ることを妨げているものすべて、一般に容認されている意見や、視界と理解力を妨害している先入見を捨て去ることが必要だ。それから、見る人の目の前に次つぎに都市が差し出す膨大な数の要素を本質へと限定して、単純化しなくてはならない。そして機械の機能が理解できる図式のような、ちらばった断片を分析的で統一された構図にまとめるのだ。

『水に流して カルヴィーノ文学・社会評論集』(イタロ・カルヴィーノ/朝日新聞社)所収「都市の神々」p361より

 ヒューゴー賞、世界幻想文学賞、ローカス賞、英国SF協会賞受賞といった文字が表紙に踊っているのを見ますと、それだけで期待感が否応なく高まりますが、いざ実際に読んでみると何とも奇妙なお話です。とりあえず裏表紙からあらすじを抜粋しますと……。

 ふたつの都市国家〈べジェル〉と〈ウル・コーマ〉は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。べジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく……。

といったお話です。本書の奇妙さは、”モザイク状に組み合わさった特殊な領土”という都市とそれを支える文化の特殊性にあります。べジェルとウル・コーマのふたつの都市国家の間には物理的な壁は存在しません。その代わり、意識的な無意識の壁が存在しています。どういうことかといいますと、両国の国民は互いに相手の国が存在しないように振る舞わなくてはならないのです。一方の都市の住人は、他方の都市の住人や建物や車といったものを見ることも、それらが発する音を聞くことも禁じられています。ふたつの都市国家間において、相手の都市が存在していることは公然の秘密なのです。だからといって、ふたつの都市の間に交流がまったくないのかといえばとそうではなくて、それぞれの旧都市の中心に存在するコピュラ・ホールを通れば合法的に両国間を行き来することができます。ただし、ウル・コーマからべジェルに入国すればウル・コーマが見えなくなりますし、ベジェルからウル・コーマに入国すればベジェルが見えなくなります。

 そうした訓練を、ふたつの都市の住人は幼い頃からの鍛錬によって自然に身につけています。視覚や聴覚といった感覚器自体は正常に機能していますので、相手の都市を見たり聞いたりすることはできています。その上で、それこそ無意識のレベルで瞬時に判別を行ってその存在をシャットアウトします。これは両都市の住人にとってもっとも基本的なルールにして常識です。そうしたルールを破る行為は〈ブリーチ〉と呼ばれています。〈ブリーチ〉を公然と犯した者は、謎のどこからともなく現れる謎の組織の一員によってどこかに連行されてしまいます。何といいますか、哲学的な作品のようでありながらギャグ漫画みたいでもある不思議な設定のお話なのです。

 こうした奇妙な設定や背景が作中で丁寧に説明されることはなくて、主人公であるボルル警部補のハードボイルド調の一人称視点描写から自ずと理解していくほかありません。ボルルが追うことになる事件は、ふたつの都市をまたいで発生したと思われる殺人事件です。読者は殺人事件の捜査と謎を取っ掛かりとして、殺人事件だけでなくベジェルとウル・コーマというふたつの都市国家について理解することも求められます。そして、読者がそれを理解した頃、〈ブリーチ〉がボルルの身にも迫ることになります。

 本書の取っ掛かりはミステリ的ですが、「見えてるけど見えていない」という本書の設定は、ミステリ読み的にはとある郵便配達員にまつわる古典的有名トリックを思い起こさずにはいられないでしょう。実際、私たちは日常生活において見えているものすべてを認識しているわけではありません。視覚や聴覚から入ってくる様々な情報に優先順位付けが行われ、あるいは精神衛生的倫理的ブレーキがかかったりなどして、情報は取捨選択されています。同じ場所にいるからといって、あるいは同じものを見ているからといって、同じものが見えているとは限りません。本書はそうした人間の認識の仕組みや意識のフレームがデフォルメ化された作品だといえます。

 都市という概念を生み出しているのは人々の意識以外の何ものでもありません。ベジェルとウル・コーマの間には物理的な障壁が一切ないことからもそれは明らかです。にもかかわらず、ベジェルとウル・コーマにおいては、都市が人々の意識の枠組みを生み出して決定付けています。本書の始まりは殺人事件ですが、本書の主役にして真のテーマは都市です。そんな都市と個人との関係を強調して描き出すために、個人と孤独を描くハードボイルド調の語りが用いられています。個人と都市との関係という観点からすると、セカイ系(【参考】セカイ系 - Wikipedia)などを引き合いに出して考えてみるのも面白いかもしれません。

 ただ、好みの問題といわれればそれまでですが、本書の結末はどうにもカタルシスに欠ける気がしないでもないです。いやいや、それだといったい何のためにここまで頑張ってきたのか……と思わずにはいられないのです。ですが、テーマに殉じるという意味では、この結末しかないのかもしれません。つまるところ、本書は都市が主人公のお話なのですから。ありがとう、そしてさよなら。オススメです。

2012-02-08

[][]丸山薫『ストレニュアス・ライフ』ビームコミックス

ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)

ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)

 雑誌『Fellows!!』にて連載されていた、「職業」にまつわる24の短編です。

 世界で最後の象使い、犬の歯医者さん、鷹匠OLなど様々な職業の登場人物たちの一コマを切り取っています。

 読みやすい絵と基本コミカルなキャラクタたちが繰り広げるドタバタ。

 1話が数ページと短いながらもお話としてうまくまとまっていますし、何よりそれぞれのお話に「意外性・驚き」が込められています。

 この「意外性」についてはネタバレなしで伝えることは非常に困難なので「試しに読んでみて下さい」としか言えないところがもどかしいのですが、なんというか、1話ごとに「おお」「へえ」と声を漏らしてしまう感じでした。

 フジモリごときが口にするのは恐れ多いのですが、SF作品で使われる用語、「センス・オブ・ワンダー」。

SF小説を読んだ際に感じることのある、ある種の不思議な感覚を説明する為の語。

wikipediaより

 まさに読むごとに心地よい「不思議さ」を感じる、宝石箱のような短編集だと思います。オススメです。

【ご参考】作者のHP「MARU PRODUCTION」

ストレニュアス・ライフ PV (Long ver.)

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