この手の論者が平気で嘘をつくのは何故なんだぜ?
こういうことを言っている論者がいます。
http://diamond.jp/articles/-/94064中国は戦前の日本と同じ過ちを犯し自滅に向かっている
北野幸伯 [国際関係アナリスト]
【第25回】 2016年7月4日
(略)中国軍艦の領海侵入をスルーした!? 憂慮すべき日本メディアの「平和ボケ」
次に、2つ目の挑発について見てみよう。
<中国軍艦が一時領海侵入 口永良部島周辺海域 海警行動は発令せず
産経新聞 6月15日(水)11時7分配信
防衛省は15日、中国海軍の艦艇が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に入ったと発表した。同海域の領海に中国艦が入るのは初めて。中国艦はすでに領海を出ている。自衛隊に対して海上警備行動は発令されていない。政府は警戒監視を強めて情報収集を進めるとともに、中国の意図の分析を急いでいる。>
この出来事について、知らなかった人も多いかもしれない。新聞には出ていたが、テレビニュースでは、完全にスルーされていたからだ。確かにこの日は、「舛添東京都知事辞任」「イチロー偉業達成」「北海道地震」など、大きなニュースがたくさんあったのも事実だ。しかし、中国軍艦の「領海侵入」という国家の安全保障にとって重大なニュースを完全に無視する日本のテレビはどうなっているのだろうか?
「メディアが国民の『平和ボケ』を助長している」と批判されても仕方ないだろう。
(略)
北野幸伯氏によれば、この件について「新聞には出ていたが、テレビニュースでは、完全にスルーされていた」そうです。
しかし、当日すぐにテレ朝で速報が流されています。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000077064.html
FNNでも同様に当日昼のニュースで流されています。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00327687.html中国海軍の情報収集艦、日本の領海を航行 政府発表
2016/6/15 12:43
政府は、中国海軍の情報収集艦が、日本の領海を航行したことを確認したと発表した。
中国海軍は9日に、尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したばかりだった。
世耕官房副長官は、「6月15日午前3時30分ごろ、海上自衛隊のP-3Cが、鹿児島県の口永良部島西のわが国領海を南東に進む中国海軍、ドンディアオ級情報収集艦1隻を確認をいたしました」と述べた。
防衛省などによると、15日午前3時半ごろ、海上自衛隊のP-3Cが、鹿児島・口永良部島の西の領海を、南東方向に航行する情報収集艦1隻を確認した。
そのあと、午前5時ごろ、この船は、屋久島南から領海を出て、南東方向に進んだという。
中国海軍は9日に、尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したばかりで、外務省のアジア大洋州局長は、中国側に対して、こうした中国側の一連の動きに対し、懸念を申し入れた。
明らかに北野氏の「テレビニュースでは、完全にスルーされていた」という記載はデタラメで、このようなデタラメを基に「中国軍艦の「領海侵入」という国家の安全保障にとって重大なニュースを完全に無視する日本のテレビはどうなっているのだろうか?」とか「「メディアが国民の『平和ボケ』を助長している」と批判されても仕方ないだろう。」とか言っているわけですから、悪質な煽動屋という他ありませんねぇ。
国際関係どころか、国内のニュースすら把握してないくせに、よくこれで「国際関係アナリスト」とか名乗れるもんですね。
慰安婦否認論者は平気ですり替えをやるからなぁ
「韓国反日教育 大学入試科目に慰安婦「吉田証言」(NEWS ポストセブン 7月2日(土)7時0分配信 )」の件。
この記事にはいくつもすり替えがあります。
タイトル部分「大学入試科目に慰安婦「吉田証言」」?
タイトルを見るとまるで、大学入試で慰安婦「吉田証言」を問われたかのようですが、本文を読んでもそうは書かれていません。日本の教育テレビ(Eテレ)に相当するEBSの大学受験コースの番組で「慰安婦に関する内容が紹介され」「吉田証言がそのまま引用、紹介されていた」だけです。韓国では大学の受験問題の70%はEBSの教育内容から出題されるとのことですが、実際に大学入試で出題されたという記載はポストセブン記事本文中にはどこにもありません。
また、この科目での「慰安婦に関する内容」が吉田証言だけとは考えにくく元慰安婦らの証言などもあったはずですが、崔碩栄はそれには言及していません。
そもそも、植民地支配時・戦時の被害を学ぶことを反日とみなす崔碩栄の思考回路の方が異常です。
「朝日が組織した「第三者委員会」の調査報告書には納得いかない内容があった。吉田証言が〈欧米、韓国に影響を与えたかどうかは認知できない〉という部分だ」?
ここは崔碩栄氏による主語のすり替えが発生している部分です。
元の第三者委員会報告書の記載はこうです。
(P52)
波多野委員及び林委員の検討結果は、いずれも吉田証言についての朝日新聞の記事が韓国に影響を与えたことはなかったことを跡付け、林委員の検討結果は、朝日の慰安婦報道に関する記事が欧米、韓国に影響を与えたかどうかは認知できないというものである。
報告書での主語は「吉田証言についての朝日新聞の記事」あるいは「朝日の慰安婦報道に関する記事」です。これを崔碩栄氏は「吉田証言が」にすりかえています。こういうすり替えをしておいて「納得いかない」とか主張するのはまさに藁人形論法と言えますね。
吉田証言の影響
第三者委員会は朝日記事の影響を検証していますので、“吉田証言が”どのように影響を与えたかと言うのは報告書の主題ではありません。
それでも吉田証言の影響についても検討されてはいます。
欧米、特に英語圏に対する影響については以下のように述べられています。
(P77)
英語圏に限ってではあるが、総合するならば、吉田証言は、日本のイメージに悪影響を与えてはいないという意見がほとんどであった。他方で、慰安婦問題は、日本のイメージに一定の悪影響を及ぼしているとする意見もほとんどの識者が述べるところであった。しかし、その際、日本で言われているような、「慰安婦の強制連行」のイメージが傷になるというのではなく、日本の保守政治家や右派活動家たちがこの「強制性」の中身にこだわり続け、河野談話に疑義を呈したり、形骸化しようとしたりする行動をとることのほうが、日本のイメージ低下につながっているという認識でほぼ一致していた。
韓国に対する影響については以下のように述べられています。
(P81)
他方で、韓国にとって「強制連行」は、テレビドラマなどに描かれ、日常に生きるイメージであるがゆえに、日本の報道とは関係なく存在する社会的事実であることも踏まえなくてはならないだろう。韓国は、日本帝国主義による植民地支配下の被害者たちが生きる国であり、吉田証言は彼らの実際の体験を追認する証言として受け止められてきた。すなわち吉田氏は、韓国社会の根底に流れる日本帝国主義のイメージ、さらに「強制連行」のイメージを固めたということは言えるであろう。
言うまでもなく、被害が何も無かったところに吉田証言によって被害体験が作られたわけではなく、実際の被害体験があったところに加害行為のイメージが固まったということです。
多くの場合、被害者には加害行為の背景や加害者の事情などは分かりえません。加害者側の証言は個々の被害体験を説明付け被害者側の内面で合理化する上で有用であり、慰安婦問題においては吉田証言がそのように機能したとは言えるでしょう。似たような事例としては、東京大空襲の被害体験があります。米軍は円周上に焼夷弾を投下し被災者を追い詰めて焼き殺した的な認識が日本側にはありますが、米軍が実際にそのような戦術を取ったと言う記録はありません。しかし空襲を生き残った被害者にとってそのように認識されたというのは不思議ではなく、米軍が住民を焼き殺すために意図的にそのような戦術を取ったというイメージは被害体験を説明付ける内面の合理化をはかる上では有用だったでしょう。
日本で東京大空襲での被害体験を学ぶことが反米教育ではないのと同様に、韓国で慰安婦という被害体験を学ぶことが反日教育ではないのですが、これを「反日教育」だと主張するのは、民族意識に立脚した差別感情によるのでしょうね。