彼の作風を大雑把に説明すればオカルト系ミステリということになるが、オカルトもミステリも性を巡る問題系が浮上しやすい。初の短編集である本書は各長編の余談を集めたもの。エンタメと言うより純文学に近いのは
小泉八雲や
泉鏡花的に純粋な怪談だからだろう。事実、作者は『笑う伊衛門』にて鏡花賞を受賞している。歴代受賞者を見るとエンタメ系と純文系の作家が混在しており、中間小説的な場所にある。このうち『川赤子』はデビュー作『
姑獲鳥の夏』直前のエピソードで、鬱を患う幻想作家の
関口巽は、雑文を書くために取材した二十箇月も身籠る妊婦について古本屋兼
陰陽師の
京極堂に相談に行こうと思うが、実はその前に妻が流産しており、関口の前にその
水子が妖怪「川赤子」として現れていた。男と女にとっての出産に対する意識の違いが気になってくる。「
水子論」に未来を託す村上裕一『ゴーストの条件』に共感した人は、併せてこちらも読んでみてほしい。(400字)
※批評誌『新文学04 現代文化のセクシュアリティ/原発事故へのアクション』寄稿文と同じです。
松平耕一編
価格 ¥ 1050
単行本:A5版、256ページ
出版社:文芸空間社
発売日:2011/12/31
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