AppleInsider: Apple タブレットのマルチタッチ FingerWorks テクノロジーの内側 [Page 3]
原文: Inside the multitouch FingerWorks tech in Apple's tablet [Page 3]
iPhone の投入に際して Steve Jobs は、5 年前に Microsoft の Gates が讃えていたスタイラスベースのインタフェースは、研究の価値はないと広く言い切っていた。 「では、これでどうコミュニケートするのでしょうか?」 と iPhone について Jobs は言った。 「マウスなんて持ち歩きたくありませんよね? では、どうしたら良いのか? あぁ、スタイラス。そうでしょうか? スタイラスを使えますね。 いいえ。 誰がスタイラスなんて使うのでしょう? 出したりしまったり。そして無くすんです。 ダメダメ。 誰もスタイラスなんて使いたがりません。 では、スタイラスは使わないことにしましょう。」
私たちは、世界最高のポインティングデバイスを使います。 皆が持って生まれてくるポインティングデバイスを使うのです。10 本持って生まれてきます。 指を使うのです。 自分の指でこれにタッチするのです。 そこで、私たちはマルチタッチと呼ばれる新しいテクノロジーを発明しました。これは奇跡です。 まるで魔法のようです。 スタイラスは必要ありません。 これまで出荷されたどのタッチディスプレイよりも、はるかに正確です。 意図しないタッチは無視してくれる。とってもスマートです。 複数の指を使ったジェスチャーもできます。 それから、特許もとっておきましたよ。」
私たちが生きている間に、ラッキーなことにいくつかの革新的なユーザーインタフェースを市場にもたらすことができました。 最初はマウス。 次にクリックホイール。 そして今回、マルチタッチを市場にもたらすことになります。 こうした革新的なインターフェースはそれぞれ、革新的な製品を可能にしてきました。 Mac、iPod、そして今後は iPhone です。」
Apple のタッチへのライバルらの反応
Microsoft は同社独自のマルチタッチシステムをデモンストレーションして iPhone に反応した。 それは、Surface と呼ばれる、カメラベースのテーブルトップ装置で、マルチタッチポイントや装置上に置かれた特別にバーコード化されたオブジェクトに反応できる、大型の情報キオスクとして機能するようにデザインされていた。 しかし同社は、暗雲がたれ込めた自社の Tablet PC デバイスや Windows Mobile スマートフォンを販売し続けた。そして、タッチベースへのアップグレードという約束は、技術的問題で幾度も延期された。 iPhone のようなタッチ機能をそなえた Windows Mobile 7 は、iPhone 登場から丸四年経った後の 2011 年初頭まで登場しない見込みだ。
Palm は、そのはるかに限られたリソースや幸運から見放されていたにもかかわらず、iPhone からわずか 3 年で Palm Pre に独自のマルチタッチデバイスを送り出すことができた。 Palm の開発チームは、Apple からの才能に大きく支えられていた。それは、幹部の Jon Rubinstein から Apple 社外で新しいプロジェクトに従事したいと望んでいた iPhone エンジニア達までにいたっていた。
Palm と Microsoft に加えて、他の企業も Apple の特許テクノロジーを侵害することなくその足跡をたどることが難しいことを痛感していた。 RIM は、iPhone のような BlackBerry Storm の開発にあたっては、挑戦しがいがあると共に問題を孕むものであると気づき、一方の Google は注意深く自社の Android を「Windows Mobile キラー」と位置づけ、マルチタッチに関して Apple といかなる諍いにもならないようにしつつ、より iPhone のように動作するよう変更していった。 オリジナルの Android プロトタイプは、数多の物理キーボードのついた Windows Mobile のようなデバイスだった。が、その数年後、それらデバイスはますます iPhone のような見た目になっていき、タッチインターフェース機能を幅広く利用していた。
タッチの将来
スマートフォン以外では、Apple は MacBook のトラックパッドや新しい Magic Mouse にも自社のマルチタッチテクノロジーを応用している。 両者とも、ユーザーがそれほど特殊な学習をしなくても大丈夫なように、やや保守的なかたちでマルチタッチジェスチャーを実装している。 Apple は、自社のタブレットや将来のトラックパッドデバイスには、マルチタッチジェスチャーに新たに洗練されたレイヤーを導入することになるかもしれない。 特許申請からは、深い三次元空間に投影されたオブジェクトを操作する新しいインターフェースの可能性も伺える。
また Apple が、力をまったく必要とせずマルチタッチ入力が可能なフラットなタッチパッドといった、FingerWorks によるオリジナルの TouchStream のような先進のキーボードをリリースする可能性もある。 同社は自社の MacBook 系列に着々とマルチタッチトラックパッドの拡張を送り出してきているものの、FingerWorks がその iGesture Pad や TouchStream キーボードでサポートしていたような、かっこいいジェスチャー(プログラミング可能な機能を学習する可能性を備えた)と肩を並べるまでにはまだ長い道のりがある。 FingerWorks のデバイスは、ゲームや Maya、Photoshop のような特定のアプリケーションや、一般的なデスクトップコントロール、テキスト選択やスタイリング、閲覧機能などの特定の利用方法に適したモードに入ることができた。
多くの批評家が、iPhone の仮想キーボードに批判を浴びせたが、以降の Apple スマートフォン人気から、従来型のメカニカルキーボードを補う、あるいは取ってさえ変わる、マルチタッチインターフェースの新しい応用への計り知れない可能性がうかがえる。 タッチセンサー式入力は、ユーザーが RSI でダメージを受けるのを避けると共に、ジェスチャーという複雑な語彙や、キーボードのタイプ入力スピード、マウスのポインティング精度を実現し、ベーシックなユーザーから非常に高度で専門性の高い機能まで、さまざまなニーズに応えられる複雑なスケーリング程度(customizable degree of complexity scaling)をカスタマイズできるようにする。
タッチ式インターフェースの利点は明白で、モバイルデバイスとデスクトップシステムの両面において将来さまざまな応用が考えられる。 もちろん Apple だけが、マルチタッチデバイスのカテゴリーで新しいテクノロジーを製品化し送り出そうとしている訳ではないが、タッチインターフェースの将来は、Apple がタブレットを導入するとみられる来週にも大きな飛躍を見せることになるかもしれない。