小児科医師に休暇を!



 
 昨日7/10(水)、日本テレビの番組『ミヤネ屋』で、北九州市の市立八幡病院勤務の小児科増井美苗医師の勤務実態についてレポートしていた。この病院は患者をすべて受け容れているが、採算が合わないこと、訴訟リスクが高いことなどが原因となって多くの病院で小児科(pediatrics)の設置に熱心ではなく、小児科医の数が不足し、担当の医師の勤務実態は苛酷であるとのことである。増井医師も小児科医になってからまだ1日も休暇をとっていないそうである。宿直の日などは、食事も睡眠もろくにとれず働きずめである。画面を見ていて思い出したことがある。2007年の東京地裁判決のことである。当時HPに書いておいた記事を再録したい。
……「東京新聞」3/15号によれば、立正佼成会付属佼成病院の勤務医であった小児科医師の故中原利郎さんのうつ病からの自殺をめぐる、新宿労働基準監督署の労災を認めない処分取り消しを求めた訴訟において、東京地裁判決は、「一ヵ月に八回の宿直など、うつ病は業務による疲労やストレスが原因」として、処分取り消しとしたとのことである。妻ののり子さんは、「日本における医学の進歩は、医療関係者の犠牲的精神から生み出されている。患者の身に起こる医療事故などの悲劇も続く」と訴えている。
 小児医療の環境が劣化することは、この国の将来にかかわる大事である。当然の判決であろう。開成高校千葉大学医学部→小児科医師へと進んだ、志ある俊秀を短い人生で終わらせて、何の少子化対策か! 父親がその進路に反対したという長女の智子さんが、現在小児科医をめざして研修医として働いているとのことで、中原医師がいかに尊敬される人物であったかが知られるのである。関係行政機関は控訴など断念するよう、ここはかの柳沢厚生労働大臣の明察を期待したいものである。……(2007年3/18記 ※厚生労働省は同年3/28控訴断念を明らかにしている。)

 http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/20kojin.htm(「中原利郎先生の軌跡」)
 http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/isho.htm(「遺書:少子化と経営効率のはざまで」)