こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

8UPPERS(各論編)

1. Oriental Surfer
 インストから始まるなんてのが本格派っぽい感じ。作曲はまさかのウルフルケイスケ氏。なんで彼を起用しようと思ったんだろうか。ウルフルズ活動休止して、まさかこんなところに仕事があるとは、と本人も思ったんじゃないでしょうか。
 ところで、関ジャニ∞初期の性格形成にあたってはウルフルズがかなり「参考」にされているのではないかというのが僕の持論であるが、ここでのウルフルケイスケ起用がそれと関係するかと訊かれるとさすがにそれは。
 曲調はSurferだけあってテケテケテケテケのエレキ・サーフ・ミュージックに、インダストリアル(で合ってるかな…)な色づけを施したような感じ。


2. モノグラム
 ええ曲やなあ。冒頭の「散らばったジェリービーンズ」という一節が見事に表わしているように、とてもカラフルな感じがする曲である。恰も、様々な色のレーザー・ビームが行き交っているよう。ポップ・ミュージックの素晴らしさをばっちり感じさせてくれます。ええ曲やし7人の声は堪能できるしで、文句ない一曲。
 「絡まったイニシャルはそのままでいいよ」というフレーズがありますが、これがつまり「モノグラム(複数の文字を一つに組み合わせた記号)」ですね。やっぱり色々言葉を知っている人じゃないと歌詞は書けないんだな、と思わされます。


3. 泣かないで 僕のミュージック
 サウンドとか作風とか、前曲と似た感じですね。各人のソロパートが目立つ点でも似ている。やっぱり横山とか村上とかにも思い切って歌わせる、その勇気が大切だと思います。


4. Baby Baby
 雰囲気変わって(この堂々たる雰囲気の変り方がまたねえ、「名盤感」を醸し出してますよ)、生バンド主体のアレンジ・楽曲。コンサートでは安田のギター捌きがカッコイイです。
 ボーカルも各人目立って、文句なしの味わい。ここまで3曲、どれもシングルで立派に通用するものばかりです。
 「間違うことさえ僕らにはまだ見ぬ世界への翼」。いいですねえ。ROCK'A'TRENCHによる楽曲提供。これが縁で『FIGHT』でも「FLY HIGH」を提供してくれました。伴奏も担当。上手いです。


5. LIFE 〜目の前の向こうへ〜
 シングル曲の中でも屈指の名曲。この曲は、初めて聴いた時はピンと来なかったのだが、一回何かの弾みで鳥ハダ立って以降、聴く度毎回鳥ハダ立ってます。
 作詞・作曲は金丸佳史。全然知らん。調べてみても、どうも他に目立った作品を出されていないようでもある。つまり奇跡の一曲ということか。こういうのを拾ってきた(誰が?)のがまた、偉いですなあ。
 この曲の魅力がどこにあるのかというのはちょっと説くのが難しいんですが、「もう一切」「金輪際」といったフレーズに現れる、ここが俺の人生の正念場だ!と言わんばかりの、のっぴきならない真剣な感じ、そして何度か出される、夢や憧れの比喩としての「光」のイメージ(それが最後には「駆け抜けて光を追い越して」となるんだから感動ではないか)、これらの歌詞と、バンド演奏による曲の切迫感・疾走感が見事にマッチしたということではないでしょうか。特にBメロ後半のドラム四つ打ちのところなんか、実に痺れる。編曲の大西省吾も大いに評価したい。
 歌詞で言えば、自分の意志の強さを表すのに、「もう一切」「金輪際」といった、否定の言葉と呼応する副詞句を使っているところにも一つの特徴がある。
 また構成で言えば、最後の大サビ前の大倉(いい場所もらったねえ)、「あの日交わした約束をずっと覚えているから/涙堪えて」というのはAメロと同じなのだが、なんとそこでこの「堪えて」で音程をぐっと(1オクターブ分)上げて、それと共に感情も盛り上げてサビに入っていく。泣けます。
 そしてこの曲は、CDのバージョンも勿論良いが、『8UPPERS』のツアーでの映像は本当に感動的。この人らカッコエエなぁ〜、と見入ること請け合い。上でも述べた最後サビ前の大倉のとこなんか、もう痺れまくりだ。よく映像化してくれたと思う。あと、この映像を見るとフライングVが欲しくなるな。


6. BACK OFF
 2曲目のインスト。これも工場っぽいサウンド。目立ったメロディーもなく、リフ一本で大凡成立させている。「すごはち」でもジングル代りに使われていたと思う。映画を見た人には何かイメージが浮かぶのかもしれません。(追記:後で映画を観たので今やイメージが浮かぶのですが、それについてはまた別のところで書く予定)


7. 願い
 なんと美しい曲でしょうか。関ジャニ∞では安田・渋谷作の「desire」と並んで好きなバラード曲である。
 両者に共通するのは、ゴテゴテしていないすっきりとしたアレンジで、凝ったメロディーをしみじみと聞かせるという点であろうが、「desire」が胸を締めつけんばかりの物悲しさで静かに責め立てるのに対して、「願い」は、やはり物寂しげな要素はかなりありながらも、それが最終的に(歌詞にもある通り)希望へと繋がっていく、という点が大きく異なる。その、希望へ繋がっていくさまが編曲(この場合則ち伴奏)からもしっかり感じ取れるところが優れている。編曲は「Kicyu」も手がけた高橋浩一郎氏。頭が下がります。また、作詞作曲の岡本修氏は、恐らく現時点で関ジャニへの提供はこの曲のみと思われるが、是非今後も提供してもらいたい。
 メロディーはA→Bという実にシンプルな形であり、どちらも美しいが、強いて言えば特にAメロが良い。かなり難しいメロディーだと思うが、こういう曲を与えられるようになったところにも関ジャニ∞の成長の度合いが伺える。1番で大倉と安田、2番で錦戸が受け持っているが、いずれも上出来である。1番のサビ(Bメロ)は渋谷。これも文句ない。丸山などにもソロを与えてほしかったが、曲の構成上3人が限界だったと思えば我慢できる。 
 コンサートでも披露されたようだが、ツアーDVDには収録されていない。残念。これは映像で観るとちょっと泣いてしまうんじゃないかと思う。


8. ほろりメロディー
 これはみんな大好きでしょう。「モノグラム」や「泣かないで 僕のミュージック」があくまでお洒落なポップスに徹しているのに対して、「ほろりメロディー」はブラス・アレンジなんかからしても歌謡曲のテイストがかなり注入されている。テーマは「ゴージャス」である。
 前曲からの繋ぎ方が痺れる。ロック風の格好良いイントロ、そしてそこからブラスの重なりを経て「考え過ぎの頭じゃダメさbaby baby baby...」という、サビを濃縮したようなキメのフレーズを叩き込んで(この部分、ピンク・レディーの傑作「渚のシンドバッド」が、本チャンの歌が入る前に「ああ渚のシンドバッド〜♪」とだけ歌って聞き手の意表を突いたのとよく似ている)、そこからまた「Ah ah 君よI Love You」云々という、これまたサビのようで実はサビでないメロディーに流れ込む。Aメロが始まるまでに随分贅沢なことをしているのだ。Aメロ、Bメロ、サビいずれもよく練られていて飽きさせない。更にBメロ前にはセリフまで入れられて、とことんまでエンターテインメント!という実に気合いの入った一曲である。
 ところでこのセリフ、1番の「アカン、惚れてもうた」は紛う方なき丸山隆平として、2番の「お前しか、見えへんし」は一体誰か。僕は村上信五だと信じて疑わなかったのだが、ツアーDVDではここを安田が担当している(但しセリフは「好きにさせてもええか?」)。その上でCDの方をよく聞き返してみると、確かに安田に聞こえる・・・・・・が、それ以上に錦戸にも聞こえる。不思議だ。
 錦戸と言えば、間奏後のソロ・パートが格好良い。特に「今焼き付けるフィルム〜〜〜〜〜〜〜〜〜」と声を潰しつつ引き延ばしていくところが、その後と上手く繋がっていて良い。
 フィルムと言えば、この曲、タイトルは「メロディー」なのに歌詞は「覗いたレンズ」「焼き付けるフィルム」と、カメラをモチーフにしたものになっている。これもまたお洒落。


9. Wonderful World!!
 なんとなくシングルの中では美味しいところの少ない曲かなと最初は思っていたが(あの「Wonderful, wonderful, wonderful guys♪」というメロディーがちょっと安直でないかと思った)、よくよく聞いてみるとラップ部分が非常に良いので気に入った。「悲しい恋」のラップは本当に酷いと思うが(あれはまあリリック自体もかなりまずかった)、結局ああいう「クールにかっこつけ」系のラップよりも、この曲のような、ヒップホップ系というのでしょうか、明るく剽軽にやった方がずっと良いということがハッキリした。横山なんかもう生き生きしているではないか。
 ただ、同じ明るいラップでも次作『FIGHT』に収められた「輝ける舞台へ」なんかはこれはこれでまた僕の好みから外れるのだが(説教ラップだからというのも大きいが)、「Wonderful World!!」ではメインのラップ以外に後ろでガヤが入っていたりするのがかなり緻密に構成されていて楽しい。例えば2番のAメロ後半で「Bravo!」という言葉が2拍づつ色々に(しかもクレッシェンドして)繰り返されるのなんか、聴いていてかなり高揚させられる。また、歌であれば複数と言えばユニゾンかハモリかしか(普通は)ないのに、ラップだと一見関係ないような(複数のメンバーによる)複数のフレーズが一つの場所で共存していて、これまでにはないカタチで「関ジャニ∞」がCDに取り込まれているようで面白い。
 サビへの入り方が1番と2番で違うのも楽しい。1番ではサビ前にパーカッションがたっぷり入っていて格好良いが、2番では「あっち向いてWoo♪」でいきなりサビに入るのがスリリングである。Bメロが工夫された曲は印象が良い。
 上で書いたように、ラップ・語りを中心とする細かい音が絡み合って聴き手を刺激するのがこの曲の魅力なので、その点から言えばコンサートでは(普通の歌モノとの区別がちゃんと付いていないので)魅力がちゃんと発揮されていないように思われる。あと、2番をカットするのもさることながら、間奏を端折るのはかなり興醒めなので是非やめて頂きたい(「イッツ マイ ソウル」も然り)。


10. realize
 3曲目のインスト。ブルージーなスライドのアコギが入って、「BACK OFF」に較べるとやや軽い感じの曲想である。「BACK OFF」もこの曲も、『You Had It Coming』や『Jeff』の頃のジェフ・ベックを思わせるサウンドになっている。


11. BOY
 この曲は割とありきたりなパワー・ポップという印象で、あまり面白いところもないなと思っていたのだが、ツアーDVDを見て随分印象が良くなった。あまり考え込まずに聴ける一曲である(「ほろりメロディー」や「Wonderful World!!」などを考え込んで聴いているのもどうかと自分でも思うが)。サビで聴けるハーモニーが良いですね。
 歌詞のテーマもなかなか良い。「BOY」というタイトルのせいもあってか、日本の少年のようにもアメリカの少年のようにも聞こえる。ただ、「胡座をかいていた 未成年という立場に」というのは、ポップ・ソングのフレーズとしてはいささかこなれていないように思われる。


12. アニマル・マジック
 だっさいタイトルのかっこいい曲。クレイジーケンバンド横山剣小野瀬雅生による提供で、最後の渋谷の「サンキュー」は、デモテープで横山剣が言っていたのをそのまま真似たものだという。ブラスが効いたバリバリの和風ブルーズで、独特の魅力を放っています。
 「無事でいてくれ〜」みたいなのは正直ちょっとどうかと思わないのでもないのだが(誰に言ってんだ、という点にもう少し取っ掛かりが欲しい)、歌い出しの「痩せた黒い野良犬が首を傾げて俺を見ていた午前二時」というフレーズは痺れるし、続く「きっと言葉に出来ない同じ電波をキャッチしたのだろう」なんてのもいい。また、「昭和からの錆びた海風が吹き抜ける」なんて歌詞が違和感なく発せられるのは、今まで「大阪レイニーブルース」「好きやねん、大阪」「無責任ヒーロー」(他、マイナーどころでは「買い物ブギ」のカバー)等々によって非東京・非モダンを取り込む芸風(?)の下積みがあったからで、その意味で関ジャニ∞に相応しい一曲と思える。


13. 急☆上☆Show!!
 総論の方で「本作にはパーティー・ソングが無い」と書いたが、まあこの曲がパーティー・ソングに当たろうか。イントロからして凄いテンションだし、そこからまずサビに行くのも、聴き手を一気に引き込もうという魂胆が窺える。しかしそんな曲も(最終曲だから、ということも大きかろうが)不思議とこのアルバムの色合いに溶け込んでいる。
 作詞作曲は安心印のTAKESHI氏。明らかにストレイ・キャッツ辺りをお手本にしたロカビリー・ポップスで、各人各色のグレッチ・ギターもブライアン・セッツァー直伝という感じである。歌詞も「真空管も吹っ飛んで」「バイブレーション」などロック・ミュージックのイメージが散りばめられている(「真空管」はエレキギターのアンプに搭載されていて、アンプのボリュームやらを過剰に上げるとこれが「吹っ飛ぶ」のである。「バイブレーション」はビーチ・ボーイズの傑作「Good Vibration」を想起)。終盤の安田の「Come Together!」というのも、やはりビートルズの同名曲を思い起こさせる。
 キャッチ―でありながら安直でないメロディーはTAKESHI氏の本領発揮だし、ビッグ・バンド風のゴージャスなサウンドも実にハマっている。「せーの、急☆上☆Show!!」でバーンと終わるのも、いかにも終わったーという感じがしてアルバムの締めくくりにぴったりである。
 『8UPPERS』ツアーDVDでの演奏では大倉のドラム・ソロも用意されていて楽しい。