山水之間/牛さんの行列

淮海路の貝納通(Benetton)のビルにある「愛普生影藝坊(epSITE Shanghai)」。写真展「山水之間(Enchanted by Nature)」を観る。大型カメラで撮影された、チベットから北京郊外、東北に至る風景写真の数々。風景写真というと、観光ポスターや絵葉書に典型的なように、たしかに綺麗だけれど、ただそれだけというか、へたに好きですというと、自分が通俗的ステレオタイプ的な美意識に浸りきっていますと告白してしまっているようで、小恥ずかしいというか、そんなものだ。ふつうは。最初はそんな感想しか持たなかった。ただ、よく目を凝らすと、全く別の感想が浮かび上がってくる。大型カメラの効果。全体性を持ったひとつの〈風景〉が画面に収まっているのだが、観ているこちら側が視線をズーム・インすると、雲の襞の一つ一つ、草原の草の一本一本、渓流の水の滴の一つ一つがクリアに見える。マクロとミクロをほぼ同時に経験してしまう眩暈。英語のタイトルにあるように、enchanted by natureだ。
少し歩いて、「復興公園」に行く。上海の和蘭領事館が主催するEU Herd of Cows*1。色とりどりにペインティングされた26頭(EU加盟25ヶ国+EU)の牛さんたち。これは既に東京でも行われたCowparade*2の一環でもある。牛さんたちは既に1月には北京に行っており、次は瀋陽へ行くという。大人も子どもも大喜びで、記念写真を撮ったりしている。こういうのは、アートとの正しい関わり方のひとつなのだろう。上海には、記念写真に適した(テンポラリーな)スポットには事欠かない。韓国の某化粧品ブランドのチマチョゴリのモデルさんとか可口可楽が作った空罐の家とか。因みに、復興公園にはマルクスエンゲルスの石像あり。また、この公園の少なくとも一部は張学良の家の敷地であったことに裏門の辺りで気づく。ここは孫中山周恩来の邸宅とも近い。

香花毒草

買い求めし本なり。

 祁暁萍編『香花毒草 紅色年代的電影命運』、当代中国出版社、2006 


 中華人民共和国建国(1949年)から文革直前(1966年)までに作られた中国映画を「十七年電影」と称する。その中には、政治的な批判に晒されつづけたものも少なくない。本書は文化大革命中の1968年に「紅代会北京電影学院井岡山文藝兵団」、「江蘇省無産階級革命派電影批判聯絡站」、「江蘇省電影発行放映公司」によって出されたパンフレット『毒草及有厳重錯誤電影四百部』から、11本の映画についての評言を抜粋し、解説を附したものである。因みに、タイトルにある「香花毒草」とは、過酷な〈反右派闘争〉の発端ともなった1957年の毛沢東の言葉に因む。さらには、文革中のモノに対する攻撃・破壊にも、この言葉は相当の責任を負っている筈である。目次としては、



第一章 命運多舛《武訓伝》
第二章 《清宮秘史》――世紀冤案的導火索
第三章 “中間人物”留隠患、革命電影《五更寒》終遭禁
第四章 《柳堡的故事》――新中国電影與愛情的“初恋”
第五章 《青春的脚歩》――新中国倫理道徳片的探索之路
第六章 《不夜城》担重任、“資改” 電影遭〓*1*2
第七章 東方卓林的封箱之作――《未完成的喜劇》
第八章 最美麗的電影――《早春二月》
第九章 農業合作時代的郷村生活篇――《花好月圓》
第十章 克隆奇迹――《没有“外祖父”的癩蛤蟆》
第十一章  中国美術片的奠基之作《大閙天宮》
附録 歴史蔵品:《毒草及有厳重錯誤電影四百部》 
附録については、外国映画についての評言が興味深いか。日本映画については、『二十四の瞳』と『裸の島』(新藤兼人)及び『二十四時間の情事』(日仏合作)。

*1:gan1。兀+監。GB6247。

*2:ga4。兀+介。GB6246。

スパム

昔、某MLで、「スパム」を「スペルマ」と誤記したことを思い出した。そういえば、英語のスパムの半数以上はヴァイアグラ関係ですね。
スパム研究者である高倉弘喜氏の報告を巡って*1
まず、「アダルトや出会い系、製薬業、株情報などスパムメールにはさまざまな種類がある。高倉氏によれば、日本語のスパムメールではアダルトと出会いに関するものが圧倒的に多いという」。注目すべきは、


高倉氏によれば、スパムメールは返信率が0.001%を超えれば採算に合うため、コストがかからないという。例えば、PCが10万円、プロバイダー料金が月額4,000円、1億件のメールアドレスの相場価格が10,000円、その他の経費を含めて20万円を初期投資金額と想定する。アダルトサイトを運営している業者が2〜3万円の課金請求することを目的にスパムメールを送った場合、7〜10人が騙されて料金を支払えば初期投資分は回収できるという。

 高倉氏は、「採算が取れるうちはスパムメールの根絶は難しい」と語る。スパムメールに関する法規制も進みつつあるが、ボットネットを利用して法規制がかけられていない第3国から発信するなどの逃げ道もあると指摘する。

という箇所か。ところで、この記述が〈起業意欲〉をそそってしまったらまずいことになりますな。