室内楽

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20100322/1269264743


リヒャルト・ワーグナーの孫ウォルフガング・ワーグナーが亡くなったことを知る。
世にワグネリアンは多くいれども、私にとってワーグナーの第一印象は悪すぎた。ルキノ・ヴィスコンティの『ルートヴィヒ』。この映画でワーグナーバイエルン王ルートヴィヒから金を毟り取ることしか考えていない卑屈な俗物として徹頭徹尾描かれている。まあ、ルキノ・ヴィスコンティがこの映画を作った目的は何よりもヘルムート・バーガーを引き立たせることだったのだから、仕方がないといえば仕方がない。

さて、そういうワーグナーも若い頃はバクーニンに影響を受けた左翼だった。特に、1948年の独逸三月革命ではゲリラ部隊の隊長として活躍し、その後、瑞西への亡命を余儀なくされている。若き日のワーグナーの藝術論=政治論は『芸術と革命』として岩波文庫から出ているが、ニーチェが共鳴して、『悲劇の誕生』を捧げることになったのも、そうした〈革命者〉としてのワーグナーだった。ただ注意すべきはワーグナーの最初の反ユダヤ主義的テクストといわれるものが書かれたのはこの時期だったということだろうか。そういえば、ケン・ラッセルの『マーラー』ではリヒャルト本人ではなく妻のコジマをナチスに結びつける演出がされていた。グスタフ・マーラーが世に出た頃、リヒャルト・ワーグナーは亡くなっており、ワーグナーの遺産管理人として権勢を誇っていたのはコジマだった。また、晩年のコジマはヒトラーと会見しており、ワーグナーナチスを結びつけた張本人だということもできる。
芸術と革命 他4篇 (岩波文庫)

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悲劇の誕生 (岩波文庫)

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マーラー [DVD]

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ところで、1848年のヨーロッパについては、河野健二『現代史の幕あけ』を取り敢えずマークしておく。また、1848年のウィーンについては、良知力の遺作『青きドナウの乱痴気』。
青きドナウの乱痴気 (平凡社ライブラリー)

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ワーグナーに話を戻す。10年近く前に、或るCDの存在を知った。仏蘭西の或るジャズ・ミュージシャンがワーグナーの曲を室内楽に編曲してレコーディングしたというのだ。そのレヴューにはたしか、こういうワーグナーだったらニーチェとの友情も壊れることはなかっただろうと書いてあった。しかし、CDのタイトルもミュージシャンの名前も失念してしまった(orz)。
Wikipediaに曰く、

1831年、18歳の時にライプツィヒ大学に入学。哲学や音楽を学び、このライプツィヒ大学時代に哲学者ニーチェとも会っている。翌年1832年交響曲第1番ハ長調を完成させた。時を同じくして、最初の歌劇『婚礼』を作曲した。1833年ヴュルツブルク市立歌劇場の合唱指揮者となった。その後指揮者に飽き足らず歌劇作曲家を目指したが芽が出ず、貧困と借金に苦しんだ。
これはあり得ない。ニーチェは1844年に生まれており、ライプツィヒ大学ワーグナーが通っていた頃は、フリードリッヒ・ニーチェ本人どころか、その素となった精子卵子さえ生まれていなかっただろう。