神戸で満喫したのは美しいモダン建築ばかりではなかった。

訪問のたびに、いつも楽しみにしているのは、K氏が案内してくれる、東京とは違った個性の周辺の古本屋さん巡りだ。今回は初めて一人旅を経験したが、それもやっぱり古本がらみになっていた。
初日の大阪では、阪急古書の街で南江二郎の『人形劇の研究』。ゴードン・クレイグの論考、カラギョスの登場など重要な「黒死館関連文献」のはずなので、なんとか積ん読で終わらせたくないと、手元に置いたまま、一ヶ月たってまだ先に進めないでいる。
二日目は六甲山麓口笛文庫さんで見切り本の店頭棚から、なんと、『S-Fマガジン』平綴じ角背に変わった頃の懐かしい1965.12月号。「ソラリスの陽のもとに」連載中、特集はジョン・ウィンダム、ウィルスン・タッカー、ルイス・パジェット(残念ながら「ボロゴーブはミムジイ」ではない)の中編特集。シェクリイ、シマックに挟まれた日本人作家は、筒井康隆「お紺昇天』! 。編集F氏の采配が冴え渡る一冊だ。店内では、河出の名アンソロジードイツ表現主義」から、美術・音楽編ゲット。
三日目は、引っ越しした古書つのぶえさんで後藤書店百周年の印入りオスカー・パニッツァ『愛欲公会議 独語版1991』アルフレッド・クービンの挿絵入り復刻本。ほかに、角川文庫版、斉藤書店の戦後版等画像に不満足だった所蔵品に比べて、画像鮮明な第一書房版も手元に張り付いてきた。etc. 毎度のカート一杯に詰まった、ずっしりと重い収穫だった。
最終日によった本屋さんポレポレ書舗では買わずに我慢したはずの、レオナルド手稿からの組立フィギュア二点も何故か今、ここにある体なのである。

某氏と引き分け

持っている本が同じ版かどうかの、ゲームをオスカー・パニッツァでやった。到着も早々に鞄から取り出したのはまさしく、復刻された一九九一年版のもので引き分け。購入金額で辛うじて、素天堂が勝ちました。五時間を越えるコンクラーヴェは、突如炸裂した店主の舌鋒に、参列者呑み込まれて終了。