バルトの楽園 (出目昌伸) ★★★


 マツケンが笑う!
 マツケンが怒る!
 マツケンが踊る!
 マツケンがこける!
 マツケンドイツ語ペラペラ!



 と、アイドル松平健の魅力満載でお送りする、今時珍しい至極真っ当なアイドル映画。海のシーンではマツケンが登場して水着で泳ぎ出したりするんじゃないかと思ってドキドキした(無かったけど)。ブルーノ・ガンツ阿部寛國村隼高島礼子平田満市原悦子大後寿々花たん、といった錚々たる面々も松平健を引き立てるために全力投球。
 まあ、予告編の後本編前に流れる(多分全国共通だと思う)アートネイチャーのCM最悪とか、何故かナレーションが2種類入っていて明らかに後から付け加えられたであろうこぶ平のナレーションイラネとか、ブルーノ・ガンツの役はあの演出であの失敗はありえねえだろとか、大杉蓮の唐突の登場面白すぎとか、終盤これでもかと律儀に満遍なく登場人物のドラマを追っていくのはマツケンアイドル映画として見るとちょっとしつこ過ぎとか、あまりにも演奏の吹替えバレバレじゃねえのとか、色々あるけれど別にそんな期待して見に行く映画でもないんで結構満足した。
 後、この映画の製作にはソウカ関係がいらっしゃいます、てのを知ってから見に行ったんで初日は信者で一杯かなワクワクドキドキと胸を高鳴らせていたところ、ほとんど客がいなくて拍子抜け。ここいらは信者が少ないんでしょうか。

 不撓不屈 (森川時久) ★★★

 「あってよかった社会党





 あ、もうねえや。
 6月第3日曜日が「父の日」だからなのか(今知った)、今週はオヤジ映画がもう一本公開。自分はこの後に「グッドナイト&グッドラック」も見たのでまさにオヤジの一番長い日。
 今作のオヤジは「救心バンザイ!」こと滝田栄。この映画が扱う飯塚事件の中心人物、飯塚毅を演じる。フィルモグラフィによると*1この人の俳優としての出演作品を俺は全く見たことが無いらしく驚いた。
 国家権力との対決という主軸が「グッドナイト&グッドラック」と同じことから、日本とアメリカの違いが嫌がおうにも鮮明に。続けて見ると特に際立つのが「グッドナイト〜」のマッカーシー上院議員の真正面からぶつかってくる潔さで、今作で国税局が飯塚本人だけでなく、彼の顧客へ度重なる税務調査を繰り返し、そして本人ではなく部下の逮捕・長期拘留を行うなど、回りくどい嫌がらせを続けるのとは全く持って対照的(ホレンベックへの攻撃は新聞記者だしね)。その原動力もマッカーシーの場合は、共産主義への恐怖・敵意と理解・想像が可能であるのに比べ、こちらでは「国の面子」といった抽象的な言葉が並ぶだけで、一体何故あそこまで「別段賞与」を問題視し、しつこく攻撃を続けるのかは全く持って最後まで理解できず。何かもっと裏があるの?
 他に日本らしいなあ、と思ったのはアメリカ映画なら差し詰め「ミスターX」とでも名乗りそうな情報提供者で、アメリカならサングラスをかけたり夜の町でシルエットにて登場、などとなりそうなところが、真昼間の砂浜にすっぴんで登場して、情報を与えた後も何故か海の方に歩いていく(ように見えた)など笑いのツボをこれでもかと刺激する(褒めてるよ)。
 映画として面白いのか、といったことが全くどうでも良くなる位、この「飯塚事件」自体が面白すぎるんで、この事件を全く知らなかった俺みたいな人はそれだけでも見る価値はアリ。「テレビドラマでいいじゃん」てのはもっともだと思うけど、俺はテレビドラマだと多分、見ないし。