成語 春色満園

 先週の中国語教室で、Yさんが用意した教材は「成語」のコピーだった。阿波市の土成図書館で借りてきた、中国の成語の本。コピーには30の成語があり、簡単な単語の注釈と成語の注釈が添えられている。孫先生がどの成語が好きかと聞いて、私が選んだのは「一衣帯水」、Yさんが選んだのは「世外桃源」、先生が選んだのは「春色満園」であった。
 「世外桃源」は陶淵明の文「桃花源の記」で現されるユートピアのこと。成語注釈には「パラダイスの別世界」とあった。
 孫先生の「春色満園」はある詩の一部分と言って、「春色満園関不住 一枝紅杏出牆来」と書いた。そこで、家に帰ってから調べてみた。コピーの注釈では「春色満園」は、「畑いっぱいに春のいろあいが満ちている」とあったが、これではどうもこの成語の良さが表されていないように思える。
 詩の題は「遊園不値」 (園に遊びて値わず)

  応憐履歯印蒼苔
 小扣柴扉久不開
 春色満園関不住
 一枝紅杏出牆来

  応(まさ)に憐れむべし 屐歯(げきし)の蒼苔に印するを
  小(すこ)しく柴扉(さいひ)を扣(たた)くも 久しく開かず
  春色園に満ち 関(とざ)し住せず
  一枝の紅杏(こうきょう)牆(かき)を出で来る 

 我が家の書棚にあった「唐宋詩 初読」(北京語言大学出版社 価格22元 2000年)に収載されていた。この本の解釈をつたない私の訳で読んでみるとこうなった。「私は木靴をはいて、雨の後の青苔の遠い道を歩いて、庭園で遊ぶために友人を訪ねてきた。ようやく庭の前に着いたのだが、柴の門はきっちりと閉まっていた。門を軽く叩いてみたが、長いこと誰も応えてくれなかった。主人はきっと不在なのだろう。無駄足を踏んでとても残念である。ふと鮮やかな赤いアンズの一枝が垣根から伸びでているのを見つけた。とても素晴らしい。主人は門を閉めているが、庭園の麗しい春景色を閉じ込めることはできない。このアンズを見ているだけで、庭にたくさんの花々が、春の景色を争って咲いているのが思われれる。」
 ネットで調べた解釈では少しこの本とは違っていたが、まあ良いだろう。春になって、庭一面に花が咲き誇って、春を謳歌していおる様子が理解される「成語」であると思う。
 作者は葉紹翁で、生没年不詳ではあるが、南宋時代(1127年〜1279年)に生きた人で七言絶句を作るのに優れていたとあった。



 上の写真は宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 振り槌 92歳


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  〇一つ枕に 沈みしなかも 憂きは別れの 袖の露
  〇花の曙 夕べの秋も 比べ苦しき 我が心
  〇行くも帰るも 忍ぶのみだれ 限り知られぬ 我が思ひ