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京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-10-31 がんの本質とは? -2- このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、ミトコンドリアの内膜が崩壊しかけるとミトコンドリアから核に信号が出て(Retrograde signaling)、細胞がエネルギーを取り出す代謝経路が変わり、それが炎症の活性化、さらには腫瘍細胞誘導へとつながっていくことをお話しました。

慢性炎症で細胞が脱落と修復を繰り返すことが腫瘍細胞の誘導につながることが報告されていますが、慢性炎症などで起きる修復・リモデリングがRetrograde signalingを介し代謝経路を変え腫瘍細胞を誘導するのであれば、このリモデリングを起こさないようにすればがんはおとなしくなるのではないかと考えることができます。

イリヤ・プリゴジーンは、食事など体内に取り入れるもの、またその代謝過程で体内にエントロピーがうまれ、それをうまく排出できなければ体内でエントロピーは増大する一方であると書きました。その体内で溜まるエントロピーこそが慢性炎症で起きる脱落修復の過程であり発がんの元なのではないかと私は考え、このことを「がんとエントロピー」という本に書きました。

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アーヴィン・シュレディンガーは生体内のすべての反応は物理化学で説明しうると1940年代にその著書(「生命とは何か」)で記し、それ以後分子生物学が発展していくこととなります。

2015年にニック・レーンは著書「生命、エネルギー、進化」の中で、全ての生命体のもとはプロトン勾配(電子の落差)を利用してATPを作るシステムだと書きました。つまり、がん細胞もプロトン勾配を利用してATP(エネルギー)を獲得することで生存を可能にしていると考えられるのです。

下図(右下)では、ミトコンドリアの膜を水素イオンが通過することでATPができる様子が描かれていますが、ニック・レーンはこのような水素イオンの動きを利用したATP産生装置の原型がSPAP(sodium proton anti-porter)であり生命の原型だと書いています。

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太古の地球上の大気には多量の炭酸ガスが充満し、海に溶け込み、海は酸性となっていました。海底には地球内部から熱水が噴出する場所がいくつかありましたが、そのうちのひとつにアルカリ性の比較的低温のホワイトチムニーというものがありました。この両者が交わるところで天然のプロトン勾配を用いたエネルギー産生が生じた、つまり生命体が発生した可能性が高いとニック・レーンは書いています。地球上の生命体の共通の祖先LUCA・last universal common ancestorはこのような状態ですでに「対向輸送器・SPAP ・sodium proton anti-porter」を持っていました。このSPAPは我々の体内の細胞ではNHE-1であり、がんは個体の中で自分なりの環境を作りあげ増殖してゆくのにこのNHE-1を用いているのです。

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真核細胞では、ミトコンドリアが壊れるとチトクロームCが放出され、細胞はアポトーシスを起こし死に至ります。前回の話と合わせると、壊れかけたミトコンドリアが必死に生き延びるためにRetrograde signalingを核に送り、代謝過程を変え、NHE-1を用いて、なんとか生き延びている状態ががん細胞なのです。

2017-09-30 がんの本質とは? -1- このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回「がんは生活習慣病!?」のシリーズを始めたところでしたが、これまでと重なる内容が多かったので、直近の講演会(2017年9月3日にeBIM講演会)でお話しした内容から「がんの本質とは?」というタイトルで改めて新しいシリーズを始めることとしました。少し難しい内容もありますが、新しい知見も含まれているので楽しみにしていてください。

これまでにも何度か申し上げていますが、がん患者さんにはかなり共通した生活習慣がみられます。男性は肉やお酒が好き、女性は甘いものが好きで便秘気味の方が多くいらっしゃいます。このような食生活をすると腸内細菌叢が変わり、そこで代謝された胆汁酸が発がん物質を産生することが報告されています。

では、がんの本質とはなんでしょうか?がんはなぜできるのでしょうか?最近では、ほとんどのがんは遺伝子異常だけで起きるものではないと考えられています。よくない生活習慣が異常な代謝をもたらし、それにより遺伝子異常が引き起こされるという、むしろ代謝異常が元となる代謝疾患なのではないかと考えられるようになってきました。

癌細胞がエネルギー(ATP)を作り出す経路は、解糖、グルタミン分解、基質的リン酸化の3つが挙げられます。無酸素状態でエネルギー産生を行うこれらの経路は通常はあまりみられないのですが、ミトコンドリアの内膜が崩壊しかけるとミトコンドリアから核に信号が出て、細胞がエネルギーを取り出す代謝経路をこのように変えてしまうのです。通常は核からミトコンドリアへ情報が伝えられるので、このように逆にミトコンドリアから核へ情報伝達が行われることを“Mitochondrial retrograde signaling(逆行性信号)”と呼びます。

哺乳類ではこの“逆行性信号”は、Ca2+イオンの動きが元となり炎症の信号であるNFκB, NFAT, ATFの活性化が促されることで伝達されることがわかっています。また“逆行性信号”は浸潤行動を誘導し、正常細胞に腫瘍細胞性格を誘導することも判明しています。つまり“逆行性信号”は炎症を活性化し、代謝異常をもたらし、さらには腫瘍細胞への誘導を引き起こすのです。現在わかっているのは下図のような経路ですが、これによるとNFκBの活性化が“逆行性信号”の伝達に必要といえます。

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実際がんの患者さんでは進行期にCRPや好中球数など炎症を反映する値が上昇することが知られており、このときNFκBが活性化し炎症が起きていると考えられます。炎症を抑制する物質を使用してミトコンドリア逆行性信号を停止する新しい治療法として、多発性骨髄腫ではいくつかの薬剤が開発されていますが、これよりむしろ特異的にNFκB, IκBを抑制し炎症を抑える物質として、私は遥かに安価である夏白菊(フィーバーヒュー)というハーブを勧めています。

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2017-08-09 お願い このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

今回は一旦講座を中断し、皆さんへのお願いをさせて頂きます。

シイタケから抽出されたβグルカンであるレンチナンという薬は、がんの方の免疫力を高め、また抗がん剤の効果を増強、副作用を軽減する働きがあると言われております。

当クリニックで20名余りのがん患者がレンチナンの治療を受けておられますが、誠に残念ながら、2017年3月末にレンチナンが薬価収載から外れてしまいました。つまり、近い将来がん患者がレンチナンの治療を受けることができなくなってしまいます。

レンチナンの治療を受けておられるがん患者のため、何とか復活させたいと願い、国会への請願書を出させて戴く予定です。他のクリニック等でレンチナンの治療を現在受けておられる方や、私共の活動にご賛同を頂ける方が居られましたら、誠にお手数ですが、以下の連絡先までご一報頂ければ幸いです。尚、ご賛同頂けた方には、主意書と署名簿をお送り申し上げる所存です。

連絡先:株式会社WIKOM研究所(からすま和田クリニックの事務所)

担当:樫(カタギ)幸

電話:075-223-3223