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京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-06-17 講座:新しい概念を用いたがん治療14 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、がん治療における食事療法の重要性についておわかりいただけたかと思います。

今回から3回は、これまでのおさらいをして、最後のまとめに入っていきます。

炎症については前回少しおさらいをしましたが、非常に簡単に言うと、からだの中で火事が起きているような状態を言います。がんや糖尿病のような疾患時には、この炎症が慢性的に起こっており、長期間、火がくすぶりつづけているイメージになります。

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がんは炎症が続くことによって進行するわけですが、肥満も常に増えすぎた脂肪を燃やそうと炎症状態が続いている慢性炎症の一例で、肥満の方はがんになる確率が高いことが知られています。体内でどの程度の炎症が起きているかを把握する上では、CRPという血液検査の項目が指標になります。このCRPが0.05mg/dl以下になっていることが望ましい状態です。

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がんは、自分のからだで生まれたものですので、生まれた原因は、食事や運動、睡眠といった生活習慣や、仕事によるストレスなどさまざまな要因が関与していると考えられます。がんの治療ではこのような自分のこれまでの生活について振り返ることが大切で、それはご自身でしか知り得ない情報です。

治療をする際には、まず自分の生活を振り返り、その上で医師と相談し、患者さんが主体的に取り組むことが何より重要です。医師は、その取り組みに全力でサポートするのが役目ですから、ぜひ、患者さん自身の生活について親身に聞いてくれるような医師を信頼するようにしてください。逆に言えば、あまり話を聞いてくれないような方は、患者さんの体質などを考慮してくれない可能性もあるかもしれませんので、良く医師を見るようにされると良いと思います。

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次回も引き続きおさらいをしていきたいと思います。

2016-06-05 講座:新しい概念を用いたがん治療13 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回まで、ミサトールを例として、私の治療方針におけるハーブ・サプリメントの役割について話してきました。

ミサトールに含まれるウルソール酸をはじめとするトリテルペン類には、強力な抗炎症作用があることで、抗がんに効果的な働きをすることがわかってきていますが、少し炎症についておさらいしておきたいと思います。

炎症という言葉は、さまざまな場面で用いられますが、その定義についてはあまり考えたことがない方も多いのではないかと思います。

炎症について調べてみると、「炎症(えんしょう、英: Inflammation)とは、生体が何らかの有害な刺激を受けた時に免疫応答が働き、それによって生体に出現した症候である。さらにその免疫応答の結果によって生じる病理学上の変化を示す病理学用語でもある。」とあります。

炎症は、いわゆる細菌やウィルス感染により引き起こされるような急性炎症と、肥満や糖尿病、がんなどが発生している状態において引き起こされる慢性炎症の2つに大別されます。

これまで当ブログでも、NF-kBとがんとの関連性が強いことを再三指摘していますが、これはNF-kBが慢性炎症を引き起こす中心的な因子であることがわかっていることに起因します。更に言うと、慢性炎症は、NF-kBを活性化させるIKK活性を刺激することもわかっており、炎症、NF-kB、IKK活性といった負のサイクルが連鎖することで、継続的に慢性疾患が維持・拡大していくことを示唆しています。

このことからもがんに対する対処の仕方として、患部の切除や患部への攻撃を行うのではなく、まず炎症を抑えることが、必須であることがおわかりいただけるのではないかと思います。

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今回は、このような炎症を抑える(がんを抑える)ために、私がクリニックで患者さんに指導している、もう一つの重要な治療方針について紹介していきます。

がん細胞は、成長・増殖のため、大量のブドウ糖を取り込みエネルギーを獲得します。ただ、エネルギーを獲得する際に、水素イオン(プロトン)を産生するため、そのままの状態でいると酸性度が高まり細胞死してしまいます。がん細胞には、プロトンが大量に溜まりすぎる状態を避けるために、細胞外のアルカリ性のイオンと交換するポンプがあります。特にナトリウムイオンと交換するポンプは強力で、ナトリウムプロトンポンプ(Na/H exchanger:NHE)と呼ばれています。

私のクリニックでは、このNHEの活性を抑えるように体質・生活習慣の改善を行うように指導しています。

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下の図は乳がんにおけるNHEの分布を示すものですが、がんが悪性度を上げるに従って、NHE活性が強くなっていることを示しています。

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また、がん細胞には、下の図のように、pHを調節するための機構(ポンプ)が少なくとも7個あることがわかっています。

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では具体的に何をすれば良いのか、ということになりますが、NHE阻害剤というものもこれまでに開発されているものの、すべて命に関わる副作用で販売が中止されています。

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一方で、民間療法の中には、このNHE活性を抑える働きを持つものがあります。これはゲルソン療法と呼ばれているもので、単純に言うと、ナトリウム摂取の制限を行いつつ、ナトリウムを排泄する上で重要なカリウムを大量に摂取するという食事療法です。

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この食事療法は私のクリニックでは、すべからく、患者さんに取り入れてもらっていて、実際に尿中のカリウム/ナトリウム比が高い値を示すようになった状態で抗がん剤治療を受けてもらうことで、少ない抗がん剤で最大限の効果が得られるケースが少なくありません。

食事療法はがん治療においては、意外と軽視されがちですが、がんを抑えるには、とても重要な意味を持つことがおわかりいただけるかと思います。

次回からは、これまでのおさらいをしていきたいと思います。

2016-05-21 講座:新しい概念を用いたがん治療12 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、トリテルペン類を含むハーブ・サプリメントである梅由来のミサトール・梅エキスががんに影響することを示す知見と、ミサトールの製造過程について紹介しました。

今回は、このミサトールをはじめとするトリテルペノイドを含む製品が、がんに作用する機序についてさらに説明していきます。

以下の患者さんは、悪性黒色腫を罹患している女性で、原発巣である左足裏を外科的に切除した方で、化学療法を続けていましたが、左大腿部に転移を認めました。そこで、ミサトールの飲用を開始したところ、4ヶ月後には、皮膚転移性の病巣は激減しました。

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ミサトールの原料である青梅は下右図のように、トリテルペノイドの中でも、ウルソール酸を多く含むものとして知られています。

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下記の論文では、ウルソール酸が、脂肪酸合成酵素の働きを止める効果があることを報告しており、これは、強力な抗炎症作用を持ち、がんの成長・転移を抑える働きがあることを示唆しています。

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また、ウルソール酸の強力な抗炎症作用は、NF-kBの抑制を通して伝達されることも、同じ論文中で示されており、将来的にウルソール酸が、炎症性疾患の治療に用いられるようになる可能性について言及しています。

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このように、天然物の中で民間伝承的に用いられている物質(梅エキスは和歌山の伝統食品)の中には、強力な抗炎症作用、ひいては抗がん作用を持つものが少なからずあります。

これらは薬にしようと思うと、非常に難しくコストがかかり、さらに副作用が出る可能性が出てきますが、伝統食品として、そのままサプリメント的に摂取した場合は安価かつ副作用も少なく済む可能性があると私は考えています。

今後のがん治療は、このような裏付けをしっかりと判断できる医師のもと、治療を進められるようになっていって欲しいと思います。

これまで何度も話に出てきているように、がん治療においては、炎症を如何に抑えるかが重要になってきます。

その上で、ここ3回はミサトールを例として、私の治療方針におけるハーブ・サプリメントの役割について話してきましたが、次回からはもう一つの重要な治療方針について紹介していきます。