Hatena::ブログ(Diary)

京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-09-17 講座:がんは代謝疾患である!?-5- このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、がんの代謝をおとなしくするためには、何が重要なのか、ということについてお話してきましたが、食習慣の改善と、それに加えて抗炎症作用の高いサプリメントを併用することで、かなりの効果を発揮するということをお伝えしました。

ではなぜ、このような食習慣の改善とサプリメントの併用だけで効果が出るのか、今回から数回はそのメカニズムについて、お話したいと思います。

まず前回もお話したように、癌化した細胞はいくつかの代謝特性を持っており、結果として尿中のpHが強い酸性を示すようになります。こうした状況になると、癌化した細胞では、より多くのエネルギーを生み出すために糖質を細胞内に取り入れるグルコース輸送体1(GLUT1)の発現が亢進し、さらにエネルギー生成の過程で細胞内に蓄積し細胞内の酸性度を上げてしまうプロトンを、ナトリウムを取り入れる代わりに細胞外に吐き出すプロトンナトリウムイオン交換器(NHE)の発現も亢進してしまいます。

ここで重要なのは、二つの特徴に関係している糖質とナトリウムですね。これらの摂取量が多くなればなるほど、がんが喜ぶということにつながることは容易に想像できるかと思います。

f:id:wadahiromi:20160917090821p:image:w360

f:id:wadahiromi:20160917090820p:image:w360

逆説的に言えば、上に示したような、がんが生き残るような形質を発現しているのであれば、当然代謝に変調が生じていることになります。

すると、まず思いつくのは、NHEやGLUTの働きを止めてしまえということですが、NHEやGLUTの働き自体は癌細胞に特有な訳ではなく、生命活動の維持において重要な機能でもあるため、この働きを止めてしまうような薬物は生命を脅かす副作用を発生させることから利用できませんでした。

f:id:wadahiromi:20160917090819p:image:w360

f:id:wadahiromi:20160917090817p:image:w360

ちなみに、癌細胞にはNHEを含めて交換器が7個以上あるとされていますが、一番良く働くのはNHEであると考えられています。

つまり元の話に戻りますが、ナトリウムの制限はとても重要だということです。ナトリウムがなければがんは細胞死に導かれます。また、糖質に関しても同じことが言えます。がんはとてもたくさんの糖質を取り入れることで、転移・成長しようとしますので、糖質制限はとても有効なわけです。

この2点だけ見ても、がん治療において食習慣はとても重要な位置づけにあることがわかると思います。

f:id:wadahiromi:20160917090816p:image:w360

また、同じく代謝変調による疾患である糖尿病とも密接な関係があることがわかってきています。糖尿病の治療薬で現在では非常に安価なメトフォルミンというものがあります。これは、糖代謝の活性化を促すAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化する薬で、同時にAMPKの活性化がmTORというキナーゼの活性を抑えることが知られています。mTORは細胞のサイズ、分裂、生存などの調節に中心的な役割を果たすことが知られていますが、活性化すると癌細胞の成長にも影響することがわかっています。

つまり、メトフォルミンは糖尿病薬であると同時に抗がん作用を持つということになるわけです。

f:id:wadahiromi:20160917090815p:image:w360

実際に私のクリニックでは、がん患者の方にメトフォルミンを勧め、寛解に向かった例がありますが、次回はその事例をご紹介したいと思います。

2016-09-03 講座:がんは代謝疾患である!?-4- このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、日本のがん治療の現状について、米国の比較から探っていきました。

日本よりも、米国の方ががんによる死亡率が低い水準となってきており、その一因として食習慣に対する意識の違いがあるのでは、という内容でした。


今回は、がんの代謝をおとなしくするためには、何が重要なのか、ということについてお話していきたいと思います。

癌細胞には、酸素があろうとなかろうと、酸素を利用せずにATPを獲得する手段に依存して生きていることをこれまでに説明しましたが、それによっていくつかの代謝的特徴を持っています。

一つは、ATPを獲得することで副産物として細胞内に溜まる乳酸をうまく外へ追い出す交換器の活性が高いという特徴があり、特にその中でもナトリウム・プロトン交換器が重要だとされています。他にもブドウ糖を細胞に取り入れる機能を持つGLUT-1の発現が強くなったり、成長因子IGF-1の活性が高まったり、癌細胞のアポトーシスを阻害する脂肪酸合成酵素の活性が高まったり、癌細胞の転移・増殖に関与しているNF-kBの活性が高い(CRPの値が高くなる)といった特徴があります。

結果的に、尿中のpHが強い酸性を示すことになるのですが、このような特性を制御するような生活を心がけつつ、抗がん剤等を適量投与すれば、がんが沈静化して来ます。

f:id:wadahiromi:20160831231524p:image:w360

例えば以下の患者さんは、舌難治性潰瘍で来院した方で、以前、甲状腺がんの手術を受けており、最近になって口内炎が頻繁に出るようになり、病院では切除・生検を勧められていました。この患者さんは、強迫観念が強くストレスも強いタイプの方でした。

私のところでは、まず食習慣を改善するよう指導するとともに(食習慣の具体的な内容については、『和田屋のごはん』という著書に詳しく書いておりますので、ぜひお読みいただければ幸いです)、炎症を抑えるために夏白菊茶と紅豆杉茶という2つのお茶を患部にしみこませるようにしてうがいし、飲用するように勧めました。これらのお茶の原料は、抗炎症作用が高いとされるもので、当クリニックでは食生活の補完として活用しています。

この患者さんは結果として、1ヶ月半ほどで、患部の炎症が治まり、予後も良い状態が続いています。

f:id:wadahiromi:20160831231523p:image:w360

f:id:wadahiromi:20160831231522p:image:w360

もう一例、以下の患者さんは、悪性リンパ種で、病院では入院の上、抗がん剤療法を勧められたものの、副作用が心配で私のところに来ました。また、受診時には右口腔粘膜に潰瘍があり、開口が少し困難な状態でした。この方には、食習慣の改善とともに、紅豆杉茶と、やはり抗炎症作用の高い和歌山の伝統食品である青梅エキスを原料とするミサトールというものを摂るように勧めました。結果、抗がん剤治療を受けることなく、治療から2年8ヶ月後に91歳にて天寿を全うされました。

f:id:wadahiromi:20160831231520p:image:w360

f:id:wadahiromi:20160831231519p:image:w360

このように、炎症を抑える(免疫を上げる)ことがとても重要な要素になってくるのですが、抗がん剤は1本数十万円など非常に高価、かつ副作用も強く出る可能性があるのに対して、紅豆杉茶は一月に1万円程度、ミサトールも一月に2万円程度で済み、副作用なく効果も出ます。

ではなぜ、このようないわゆるサプリメントを食習慣の改善とともに併用するだけで効果が出るのか、そのメカニズムについては次回、お話したいと思います。

2016-08-20 講座:がんは代謝疾患である!?-3- このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

前回は、癌細胞がATPを獲得する方法について詳しく説明しました。癌細胞は、酸素があろうとなかろうと、通常は酸素がない状態でATPを獲得する手段によって、エネルギーを生み出しているということがおわかりいただけたかと思います。

今回は、少し視点を変えまして、日本のがん治療の現状について少しご説明したいと思います。

日本のがん死亡率は、1947年以来、右肩上がりで推移しており、みなさんもご存じの通り死因の第1位となってしまっています。国立がん研究センターによれば、2014年にがんで死亡した人は368,103例(男性218,397例、女性149,706例)で、2012年に新たに診断されたがん(罹患全国推計値)は865,238例(男性503,970例、女性361,268例)とされています。男性、女性ともに、肺、胃、大腸などのがんは死亡者数が多いですが、罹患者数に関しては、男性だと前立腺、女性は乳などが上位に来ており、性別特有のがんの罹患が多くなっています。

f:id:wadahiromi:20160822155021p:image:w360

このように増え続ける日本のがん患者・死亡者の現状を見ると、世界的な兆候かと思いますが、実は米国では、がんは1990年頃から年々がんの死亡者が減少し続けています。がん死亡率のデータを見ても、もともとは米国の方が高い値を示していたにもかかわらず現在では逆転して日本の方が高くなってしまっています。

この話は、あまり病院などで話をされないようですが、非常に重要な示唆を与えてくれている情報です。

f:id:wadahiromi:20160822155020p:image:w360

このような背景には、さまざまな要因がありますが、米国で上院特別委員会として立ち上がったマクガバン委員会が報告した1977年のマクガバンレポートで打ち出された食生活指針が中〜高所得者層を中心に浸透したということが一因にあるのではないかと私は思っています。食生活指針では、野菜をたくさん取り、エネルギー源には脂質ではなく炭水化物、それも精製されていないものを極力選ぶようにすべきとされていますが、こうした指針はそれまでの米国の食生活とは真逆の性質であり、かつ多種多様な品目を摂取しないといけないことから費用もかかるということで、高所得者層が高所得者層たらしめる生活というステータスを生み出し、健康意識を高める結果となったのだと考えられます。(一方で低所得者層は、ファストフードなど安価ではあるものの健康にあまり良くないとされるものを食べる選択肢しか選べないという社会問題もあります)他に、運動習慣などでも日本より遙かに浸透していることから、より一層、米国では健康的な生活を心がけることが一般化しているように見えます。

それに対して日本の(特に中高齢者の)中〜高所得者層は、質素な食生活を幼少期に経験し、高度経済成長期に伴い、所得水準が上がってきた頃に米国のリッチな食生活が一般化されステータスとなったことで、なかなかもとの健康的な生活に戻りにくいという背景があるようにも見えます。

このような状況を見ると、医療の現場でも食をはじめとする生活習慣により一層、着目すべきですが、現在のがん治療ではこの辺が軽視されてしまっているということが大きな問題であると私は考えています。

次回は、がんの代謝をおとなしくするためには、何が重要なのか、ということについてお話していきたいと思います。