おひっこし(その1)

walkeri2004-03-28

 かわしまさんちでサタスペやってきました。遊んだのは何かのイベントで配った特典シナリオ『おひっこし』ですが、『番外地Vol.7 ドラゴン』のシナリオ名決定表を使ったサブタイトルがついています。『おひっこし:与太郎退魔行 鎮魂歌(レクイエム)』。もう「まぜるな危険」という言葉を地でいくようなタイトルですね。
 ※注意! 以下のプレイレポートにはシナリオのネタバレが含まれています。『おひっこし』を遊ぶ予定のある人は見ないほうがいいかもだ。内容を知ってても遊べるタイプのシナリオだけど、不安だったらDDに許可を取ってね。
 
 さて、今回のチーム「新世界ダイナマイトトロールズ」の面子は以下の通りです。
■「狂い咲きオレンジ」コカコーラ・サラジャニ(34歳、♂)
 路上生活のヲタクな戦闘亜侠。潜水艦のロールプレイを通さないと外界とコミュニケートできないかわいそうな人。海軍の制服を着ているが、ヲタクなので指抜きグローブとウエストポーチも装備している。
 プレイヤーは速水さん

■「朝露に舞うマハラジャマツヤ・ツワナ(15歳、♀)
 チーム内で唯一まともな暮らしをしているアフリカ出身の生活亜侠。ゴスっ娘。チーム最年少にして常識の砦。今回一番かわいそうな人。
 プレイヤーは河嶋さん。

■「沙京星人」エルガイム・マクベイン(31歳、♀)
 路上生活でマーク・ハミル萌えの恋愛亜侠。ボンデージファッションの娼婦で、マーク・ハミルのことしか考えられないかわいそうな人。好きな映画は『地底1999』マーク・ハミルが出てるらしい)。
 プレイヤーははじめましての小林正親さん。『ローズ トゥ ロード』のスタッフの方ですね。RtoLのサプリメントやRole&Roll誌の記事などに携わっておられます。

■「中華街のスーパースター」ビオフェルミン・崔(ツイ)(23歳、♀)
 バット持った赤貧の戦闘亜侠。中華街のボロアパートに住む売れない作家。いろいろかわいそうな人。好きな映画は『シャブ1999』。どうも1999シリーズというのがあるらしい。そしてマーク・ハミルが出てるらしい。
 プレイヤーは魚蹴さん。

 サイコロ振ってるだけで自動的にこれだけ決まるんだからサタスペってスゴイヨネー(棒読み)。

おひっこし(その2)

 ある日曜日の朝。4人がビオフェルミンのアパートにたまっているところへ電話がかかってくる。「大家の牛頭やけど、ビオフェルミンはんでっか? おたくの部屋、今日で契約切れますよって、24時までに立ち退かんと違約金1億J$いただきますさかい、あんじょうよろしゅう」
 ズガーン。受話器を片手に呆然とするビオフェルミン。はっと気付いて振り返る。「み、みんな! ごめん、引っ越し手伝って!」
「引っ越しだそうです、艦長」「うむ、だがライダーとプリキュアを見てからだ」「アイアイサー」一人で潜水艦の艦長と部下のロールプレイをしながらテレビにかじりついて動かないコカコーラ(コカコーラは路上生活なのでテレビを持っていない)。引っ越しに使える時間はわずか5ワーク。このままでは最初のワークにコカコーラが何もしないことになってしまう。そんなのぶっちゃけありえない。ビオフェルミンはバットを振り上げる。


 ビオフェルミン「DD、バットでテレビを叩き壊します」

 DD「いいけど、それやると荷物が一つ増えることにするよ」

 ビオフェルミン「構いませんよ、どうせゴミだし、どうにでもできるでしょう。どうしようもなくなったらどこかに捨てていきますよ」
 これが悲劇の始まりだった。

おひっこし(その3)

 一行は荷造りと物件探しの二手に分かれる。物件探しを担当するのはコカコーラとエルガイムの路上生活者コンビ。
 「マーク・ハミルを探すわよ」エルガイムは宣言する。「『地底1999』でハミルは言ってたわ。「情報がほしかったら俺を探しな」って!」何か致命的に勘違いしている沙京星人エルガイム。「『シャブ1999』ではこうも言ってたわ。「シャブと俺とどっちが大切なんだ」って……」
 マーク・ハミルは見つからない。道行く人に聞いても「さっきまでいたんだけど」「いまそこの角を曲がって行ったよ」とか言われるばかり。ハミノレンとかいうパチモンくさい高校生を恋愛攻撃で虜にしたりしたが、こいつがまた糞の役にも立ちゃしない。コカコーラはずーっと「艦長と部下」ごっこをしている。「艦長! 前方に感あり!」「全速前進!」「全速前進!」(←復唱してる) そして電器屋の店先でテレビにかじりつく。あっという間に時刻は昼を回る。
 一方、ビオフェルミン宅では荷造りがほぼ終わる。壊れたテレビを除いて。
「壊さなきゃよかったね……」
「そうだね……」
 ビオフェルミンは壊れたテレビを恨みがましく見つめる。物件を探しに行った二人からの連絡はまだない。そもそもあの二人は携帯電話を持っていないのだ、と遅まきながら気付いてビオフェルミンマツヤは呻き声を上げる。
「……ちょっと出てくるわ」テレビを抱えてビオフェルミンは立ち上がる。


 ビオフェルミン「それじゃ、どっかそのへんでテレビを捨ててきます」

 DD「じゃあ、中華街の治安10を目標値に犯罪で判定してくれる?」

 ビオフェルミン「(てっきりワンダリングモンスターチェックかと思って)え? なんで? 治安がいいのに、なんで治安を目標値にして判定するの?」

 DD「違うよ。不法投棄の判定だよ」

 ビオフェルミン「……ああ! こっちが犯罪者なのか!
 ビオフェルミンは近所のどぶ川にかかる橋の上からいまいましいテレビを蹴り落とす。黒沢清っぽく寒々しいロングショットで。ようやく厄介払いができた……。すっきりした顔で振り返った彼女は「おかん」6体に囲まれていることに気付く。サタスペの「おかん」はジャイアンのママみたいなモンスターで、結構な強さを誇る。破壊力重視の戦闘亜侠とはいえ、作りたてのキャラが6体を敵に回して勝てる望みはない。
 「ひいっ」「スーパースターだかなんだか知らないけど……町内会の掟は絶対!」「ゴミの捨て方は守ってもらうよ!」「す、スンマセン! ほんとスンマセンしたッ!」
 どぶ川からテレビを拾い上げてとぼとぼ帰るビオフェルミン。もうマジ泣き入ってます。
 帰ってきたビオフェルミンを見てマツヤが目を剥く。
「なんで持って帰ってくるの!?」
「だあってえぇぇ(涙目)」

おひっこし(その4)

 この時点でビオフェルミンは精神点を10点中8点使っており、ほぼ役立たずに成り下がっている。物件探し組からは音沙汰一つない。業を煮やしてマツヤは外に出て行く。取り残されたビオフェルミンは、自販機で缶ビールを買ってプルタブを開ける。ブロック塀に寄りかかって呷ると、きりきりと痛む胃に冷えたビールが心地よい(精神点1回復)。夕暮れである。茜色に染まった空をカラスが飛んでいく。と、そこで携帯電話が鳴った。マツヤからだ。物件が見つかったのだ。それも二件。十三にある二階建ての一軒家と、もう一つは古い洋館だ。どちらも異様に家賃が安い。不動産屋はしきりに売り込もうとする。「これいいよ、ほんとよ。こんな条件のいい物件もうないよ」「なんでこんなに家賃安いの?」「え、それは、まあちょっと。さ、さ、契約するね」
 ものすごく嫌な感じの物件だが背に腹は換えられない。ビオフェルミン(生活2)はマツヤ(生活4)を見る。
「…………」
「え。なに。あたしが出すの?
「……おねがい」
 なお、ここに至ってもコカコーラとエルガイムは何の役にも立っていない。
「コーン……コーン……」「艦長、ソナーに反応ありません!」(パッシブソナーごっこ
「あっ! ハミルがいたわ! あそこよ!」
 引っ越し資金を出してもらったビオフェルミンは、契約書に記入しながらマツヤに言う。「あなたはまだ若いし、こんなところよりもっと相応しいチームがあるのにね。……こんなことになって、ごめんね」ぽたり、ぽたりと契約書に涙が落ちる。「ごめんね。本当に、ごめんね」

 コカコーラとエルガイムが帰ってくる。急いで車に荷物を積み込む4人。だがマツヤのスバルには積み切れない。テレビが邪魔だ。結果、荷物3つとツワナとコカコーラがスバルに乗り、エルガイムが不動産屋を篭絡して自分と荷物を一つ不動産屋のロールスロイスに載せてもらい、ビオフェルミンはテレビを荷台に括りつけた自転車で、それぞれ新居(二階建ての一軒家)に向かうことになった。しかし……。
「艦長! 後方に感あり、敵艦です!」
 荷台に「侠客」と「三下」を満載したトラックが一行を追いかける! 大家の牛頭の差し金だ。牛頭は始めから違約金が目当てだったのだ! 3対1のケチャップになる。スバルとロールスロイスは着々と追っ手を引き離す。だがビオフェルミンは自転車だ。あっけなく追いつかれ、取り囲まれるビオフェルミン
「あー」後ろを見て暗い顔になる残り3人。
「どうしよう。置いていこうか」
「荷物は全部あるしねえ」
「引っ越しはそのものは滞りなく終わるよねえ」
「引っ越しは無事終わって……」
……家主はいない
「艦長!」「だめだ! わが海軍に味方を見捨てる伝統はない! 転舵しろ!」
うるせえ、黙ってろ
 しょうがねえ戻るか。というわけでビオフェルミンの救援に駆けつける仲間たち。
「魚雷発射!」「魚雷発射!」(←復唱してる

 感動の展開だがサタスペの戦闘はそんなに甘くない。侠客2人の日本刀と三下4人のサタスペ(粗製拳銃)で次々に倒れていく新世界ダイナマイトトロールズ。既にグロッキーだったビオフェルミンが真っ先に沈み、コカコーラ、ツワナが続く。気絶したところに容赦なく止めを刺され、コカコーラとツワナは死ぬ。最後まで立っていたエルガイムも、よく頑張ったが、四方を囲まれてぐさり。「よく見りゃべっぴんじゃねえか。命までは取らないでおいてやるぜ」
 気絶したビオフェルミンエルガイムは、血をだくだく流したまま、侠客に髪を掴まれて引きずられていく。実にセックスアンドバイオレンスな絵面である。


 DDエルガイムは強制的に娼館送り。ビオフェルミンは娼館かタコ部屋か選んでいいよ」

 ビオフェルミン「……タコ部屋がいいかな。武器がありそうだから

 DD「じゃあ、マグロ漁船表振ってね」
 こうして新世界ダイナマイトトロールズは全滅した。このお話の教訓は、直前になって慌てないように、引っ越しの準備は前々からちゃんとしとけ、ということである。また、すべてが狂い始めた原因はテレビを壊したことであり、一人のヲタクがライダーとプリキュアを見たがったことである。ここからも何がしかの教訓を読み取ることができるかもしれないが、それは読者の皆さんにお任せする。

おひっこし(その5)

 生き残ったビオフェルミンはダメ人間、エルガイムは親分をゲット。MVPは最後の戦闘で意地を見せたエルガイムでした。いやあ面白かった。避けられない破滅のスパイラルに巻き込まれた感じでしたね。小林さんが楽しんでくださっていたらいいのですが(笑)。
 速水さんの日記(2004/3/27)にもプレイレポートが載ってますのでどうぞ。あ、サタスペ前のエルフェンランドは勝ったよ! 奥まった一つを除いて全部取った。イエー。