藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

改善の余地

ガストのITを利用したマーケティングの記事。
1300店舗もあるとセット商品一つの100円の上げ下げでも大きな影響が出る。
同じことは小さな一軒の店でも同様で、どんな工夫をいつするか?ということの改善の余地は無限にありそうである。
別に飲食店に限らないけれど。

日々の仕事をまずは一定の「ルーティーンにはめる」というのは仕事の基本だけれど、それが決まってくれば来るほどそのルーティーンからははみ出しにくいものである。
そう思うと、何かの工夫をして、まだ見ぬ顧客が自社のことを知って、ひょっしたら興味を持ってくれるかもしれない可能性は無限にあるのかも…と考えると何だかわくわくして来る。

今どこにでもあるお客さんのメルアド登録とかも、利用方法はまだまだこれからなのじゃないだろうか。

記事中にある顧客へのプッシュ型のメールの開封率が「翌日・三日後・一週間」というので、行きつけの店の女将に聞いてみた。
「お礼状を送るのは来ていただいた丁度一週間後です。丁度いい頃なので」と即答。
サービスの達人は皮膚感覚で知っていたのに驚いた。

ガストの目玉商品値下げ、決断させた実験の正体
2014/7/14 7:00日本経済新聞 電子版


 ファミリーレストラン「ガスト」は今春、「チーズINハンバーグ」の値下げキャンペーンによって、客数を10%以上伸ばし、粗利を拡大できた。同メニューは主力商品だけに、値下げしても客数が伸びず、客単価も大きく下落していたら、痛手は計り知れなかった。それでもキャンペーン実施に踏み切れたのは、事前にきめ細やかな「A/B(エービー)テスト」ができたからだ。ITの進化で、複数の施策を試して消費者の反応がよい方を選ぶA/Bテストを、より実践的に行いやすくなった。今回の結果は、ガストにとってほぼ「想定通り」だったのだ。



すかいらーくが運営するファミリーレストラン「ガスト」。全国に約1300店舗ある
 ガストでは定番メニューの「チーズINハンバーグ」が人気だ。ガストを運営するすかいらーく(東京都武蔵野市)は2014年4月、499円の低価格が売りである主力商品のチーズINハンバーグの価格を、さらに100円値下げするキャンペーンを実施した。すると客数が10%以上も伸びた。

 値下げしたもののセットメニューの追加オーダーなどが増えたので、客単価の下落は2%以下にとどまった。テレビCMやチラシのコストを差し引いても、粗利益が大きく伸びた。この4月は消費増税という逆風が吹いていたにもかかわらずだ。

 すかいらーくが思い切ってチーズINハンバーグを値下げできたのは、事前に実施したA/Bテストで成功を予測できたからだ。4月の値下げに先立つ3カ月前の2014年1月から順次、一部のガストで値下げ効果を検証するためのA/Bテストを実施し、導入効果を見極めた。

■全国の似た店を海外ソフトで抽出

すかいらーくは「チーズINハンバーグ」のキャンペーンで、A/Bテストを使って導入効果を予測

 すかいらーくは2つのフェーズに分けて、A/Bテストを実施した。第1段階が、キャンペーンを試す「実験店」と、効果を見比べる「比較店」を抽出することだ。実験店と比較店はノイズを取り除くため、特徴が似通った店でなければならない。単純な地域別の比較だと、例えば近隣にある学校の入学式の時期が違うといった特殊要因が紛れ込むだけで客数が変動してしまう。こうした地域ごとの違いが極力少ない店舗群同士で比べないと、“ピュア”なキャンペーン効果を測定できない。

 全国に約1300店あるガストから、実験店と比較店をいかに抽出するか。この作業をすかいらーくはITシステムで自動化。米アプライド・プレディクティブ・テクノロジーズの「Test&Learn」を使った。

 Test&LearnはPOSや商圏内の競合店の数といったデータから、売り上げのパターンや客数、商圏の特徴などが似た店舗群を選び出す機能を備える。人が選ぶ場合と比べて、少ない店舗数で、効果測定の精度を高めることができる。

 すかいらーくの神谷勇樹マーケティング本部インサイト戦略グループディレクターは「キャンペーンの有効性を評価するため、売り上げや客数の変化を0.1%の単位で見極める必要があった。本当に特徴が似通った店舗を抽出できないと、0.1%の差分までは測れない」と話す。

 第2段階が、キャンペーンの効果を検証し、全国に本格導入するかを判断するフェーズだ。すかいらーくは「売り上げ」「客数」「単価」「粗利益」の4つを評価指標に設定。これらの指標の変化を捉えて、全国展開の是非を判断した。実際に、単価の下落を抑えつつ、売り上げ・客数・粗利益が順調に伸びたことで成功を確信。4月の全国展開を決めたのである。


サイバーエージェントの写真共有サービス「Simplog」
■翌日、2日後、3日後…いつなら響く?

 A/BテストのPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを素早く回し、短期間にたくさんの判断材料を得て、予測精度を高めているのがサイバーエージェントだ。同社はスマートフォンスマホ)などで写真や短文を投稿できるブログサービス「Simplog(シンプログ)」で、この手法を実践している。

 スマホを使ったネットサービスでは、登録はしたもののすぐに使わなくなってしまうユーザーも多い。継続利用を促すため、シンプログでは「今日の人気ランキングを見てみよう」といったメッセージを配信することにした。

 問題は、それをどんなタイミングで送るかだ。あまり頻繁に送ると、うっとうしがられて会員登録を解除されてしまう危険もある。そこでシンプログでは、登録者を無作為に抽出し、登録の「翌日」「2日後」「3日後」…「7日後」の7パターンで、それぞれ同じ内容のメッセージを送付するというA/Bテストを実施し、評価した。

 すると「翌日」「3日後」「7日後」という3つのタイミングでメッセージの開封率が高かった。サイバーエージェントはA/Bテストの結果を受けて、登録の翌日・3日後・7日後に利用を促すメッセージを送るやり方に改めた。

 メッセージを送る時期は、登録日からの日数だけでなく、曜日や時間帯など様々な検証ポイントが浮かび上がる。また、時期以外にも、メッセージの内容をどうするかもある。これらの組み合わせを変えることで、効果を高めていける。サイバーエージェントは個別のPDCAを数日から数週間という短いサイクルでどんどん回し、成功確率を高める判断材料をできる限り集めている。


サイバーエージェトはA/BテストのPDCAサイクルを素早く回し、効果的な施策を予測

 A/Bテストで見つけたノウハウをシンプログに反映することで、「継続率(新規登録から7日目以降も使い続けたユーザーの比率)」が当初の15%から25%近くに、約10ポイントも高まった。

■複数の案をネットで集めて審査

 約30万人が会員の転職支援サイトの「Green」を手掛けるI&Gパートナーズ(東京・港、新居佳英代表取締役)。同社はインターネット経由で外部に仕事を委託するクラウドソーシングとA/Bテストを組み合わせることで、利用者の琴線に触れるサイトデザインを探り当てた。

I&GパートナーズはクラウドソーシングとA/Bテストを組み合わせ、転職支援サイト「Green」を刷新

 I&Gパートナーズの“予測”の流れはこうだ。まず、米サンフランシスコに本社を置くKAIZEN platform(須藤憲司CEO)が提供するサービス「planBCD」を利用。planBCDは外部のエンジニアに対してサイトデザインの改善案を募り、効果的な案を見極めるもの。Greenではこのサービスを使って、ユーザー登録画面の刷新案を外部のエンジニアから募集した。

 集まったアイデアのなかで、KAIZEN platformの審査を通ったのは12案。これらをI&GパートナーズでGreenを担当する井端康氏らが3つにまで絞り込んだ。

 ここで、I&GパートナーズはA/Bテストを実施した。Greenの利用者に対して3つの画面を一定期間出し分け、それぞれの期間での登録者数の推移を検証した。その結果、登録の流れを「階段」に見立てたデザインを採用するアイデアが最も効果が高く、従来と比べて約1.7倍の新規登録者を獲得できた。
日経情報ストラテジー 山端宏実)

日経情報ストラテジー2014年7月号の記事を再構成]