Expedition

6月24日の日記*1に記した某君(以下N君)が東京からわざわざ三島まで訪れてくれたので、近所に住む某大学探検部OBの某君(以下M君)と共に対応した。前日にM君と電話で打ち合わせた折、未見のN君の容貌に対し、勝手に「Tシャツに大きめのザック、短パンで来る。足下は普段はピーサンだろうけど、ちょっと遠出するから気合いを入れてスニーカーだろ」とプロファイリングしていた。三島駅の改札口に現れたN君は、足下がビーサンだった以外はまんまプロファイリング通りの出で立ちで苦笑。さすが都の西北にあるバンカラ大学の探検部員。
駅近くの刺身居酒屋に席を設け、いろいろ雑談。N君は、意外と(失礼)良識ある青年で一安心。しかし、良識有る人間はあまり探検に向いていないかも知れない。人間には持って生まれたパワーと言うかエネルギーがある。人間性や技術は後天的に改変や習得が可能だが、パワーやエネルギーは、後天的に伸ばすのが難しい。この関係は、速球派ピッチャーと技巧派ピッチャーの関係と似ている。スピードボールを投げるのは才能で、コントロールや変化球は努力だと言われている。そして、有る程度のスピードボールが投げられないと、どんなにコントロールが良く、変化球が得意でも大成するのは難しいのだろう。探検行為も同様で、成功するためにはまず大きなエネルギーが必要である。そして、エネルギーに満ちあふれている青年に良識が伴っていることは少ない。とは言え、良識の無い青年が必ずしもエネルギーに満ちあふれており、かついずれは大成するとも限らないのが悲しいところだ。
N君の探検計画を聞くとなかなか無謀である。老婆心ながら忠告をしたいが、彼の情熱に水をかけたくはない。知識や技術なんてものは後でどうにでもなるので、ここは志や魂を伝えたいと思い、M君と共に大分熱くなった。N君が話すよりも、M君や私の話す方が多いのだから、まさに年寄りの冷や水だ。N君はまず目標を設定し、その目標を達成するために訓練や準備をするべきだと言う。訓練のための訓練に明け暮れる大多数の探検部員に食傷しているが、経験がほとんどないのに妥当な目標を設定するのは困難なのも事実。議論のための議論に陥りそうだが、彼の意見には半分だけ同感。
N君にとりあえずこれだけ読んでおけ、読んで貰わないと魂が通じ合わない、と『冒険と日本人(本多勝一)』、『新編 山を考える(本多勝一)』の二冊を贈呈する。特に、『新編 山を考える』に掲載されている『「創造的な登山」とは何か』は、探検を志す者にとって通過儀礼のエッセンスのような名稿だ。あまり早い段階でこの名稿に触れ、したり顔で探検を語られたくはないが、自分の方向性に悩む探検家あるいは探検家志望の諸氏にとってはまさにカンダタにっとての蜘蛛の糸のようなものだろう。話しながらM君は興奮して口角泡を飛ばしてる。
久々に熱い時間を過ごさせて貰った。若い娘さんだけではなく、若い息子さん(?)からも若いエキスを吸収出来るものなのだな。エネルギーは高位から低位へと流れる。エネルギーを分けて貰った感があると言うことは、私のエネルギーが低下していたと言うことか。彼の探検を応援していきたいので、とりあえず、ちゃんと整備はされているが、5年程使用されていない自分の洞窟探検装備を贈呈することにした。それなりに思い入れのある装備ではあるが、ものは所詮ものでしかない。有効に活用されてこそ本望であろう。

ザ・ダイバー

米海軍における実在した初の黒人ダイバーの物語。人種差別の現場に身を置いたことのない身としては、現実感がまったく感じられないくらいの人種差別が描かれている。白人集団への闖入者として黒人が描かれているため、同僚との友情はほとんど描かれていない。ロートルと化した教官との対立と和解を中心に作品は進む。物語の中心には原題である” MEN OF HONOR”が示す通り名誉とか、自己実現、黒人の上昇志向がある。アメリカ人の普遍的な価値観なのかも知れないが、「ここは俺が」的な利他的思考の物語が好きな身としては物足りない。

ザ・ダイバー〈特別編〉 [DVD]

ザ・ダイバー〈特別編〉 [DVD]

THE EDGE 新選組#2(工藤かずや/SHINYA)

雨後の筍の様な新選組漫画。工藤かずやが原作と言うことで期待していたのだが凡作。良いヤツは単純に良い男、雑魚キャラ、敵役は奇形っぽいくらいのデフォルメをされた外見で造形されている。中間で魅力的なキャラクターは描けないのか。

ナポレオン獅子の時代#2(長谷川哲也)

男臭いナポレオン漫画。『ベルサイユの薔薇池田理代子)』なんかより、ずっと男心に訴えかけてくる。「グランダルメは世界一〜!!」。

ナポレオン 2―獅子の時代 (ヤングキングコミックス)

ナポレオン 2―獅子の時代 (ヤングキングコミックス)