ネットの性暴力情報から子供守れ・警察庁が研究会

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060410STXKB039610042006.html

警察庁によると、子供を性の対象とするアニメなどの影響を受けて子供を狙う性犯罪が誘発されることがある一方、インターネットで殺人などの画面を見た少年が「実際にやってみたい」という気持ちになり、加害者となった例もあるという。
研究会は月1回程度、開催。これらの現状を踏まえて問題点を夏までに整理し、規制の在り方も含めて改善策を探る。専門家で意見が分かれている子供のゲーム依存の影響についても話し合う。

「研究」するのは悪いことではないと思いますが、

「暴力的ゲームの販売禁止は言論の自由に反する--米地裁がミシガン州法に違憲判決」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060405#1144239675

アメリカの裁判官が述べているように、上記のような、警察庁が主張する「誘発されることがある」「気持ちになり、加害者となった例もある」というのは、あくまで、「そういう人もいた」ということであって、関連性を科学的、合理的に証明することは極めて困難でしょう。逆に、警察が敵視するゲーム、アニメで楽しむことにより犯罪を犯さなかったという人は(かなりいるようにも思いますが)、せいぜいマスコミの取材に答える程度の存在でしかなく(昨夜のニュースでそういう人が紹介されていましたが)、結局、無視されてしまう可能性が高いように思います。
個人的には、この種の情報に積極的な保護価値までは見出せませんが、だからと言って表現としての保護の枠外に追いやってよい、ということにはならないというのが、表現の自由の優越的地位を認めるということでしょう。
私としては、こういう分野で「子供を守る」ことは、まず親に任せてもらい、警察には、我々一般人には到底解決することができない、世田谷一家殺害事件とか、警察庁長官銃撃事件とか、北朝鮮による拉致事件、といった、いつまでたっても解決されない事件を早く解決してほしいと思います。

不当要求従えば賠償責任 蛇の目元社長ら敗訴へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060410-00000165-kyodo-soci

中川了滋裁判長は「不当な要求に対し、警察に届けるなどの対応をする義務があるのに、従った過失がある。また好ましくない株主に権利行使させない目的で、利益供与したのは商法違反に当たる」として旧経営陣の賠償責任を認定。請求棄却の2審東京高裁判決を破棄、審理を同高裁に差し戻した。同高裁で賠償額が算定され、株主側の逆転勝訴となる見通し。

記事でも紹介されているように、この件は、刑事の恐喝事件にもなっており、要求したほうは実刑判決を宣告されています。そういった被害者の立場に立ってしまった場合でも、経営者は、コンプライアンスのため、警察の届け出など、できること、なすべきことをすべきであり、それを怠れば過失が認定される、という、近時のコンプライアンス重視の流れに沿った(逆に言えば経営者には厳しい)判決という印象を受けます。

新司法試験:受験予定者は2125人 法科大学院58校で

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20060411k0000m040098000c.html

初年度の合格者数の目安は900〜1100人とされており、4〜5割が合格する見通し。

非常に素朴な疑問ですが、900名から1100名が「必ず」合格すると思って良いのでしょうか?司法試験が要求するレベルを満たしていない人が予想以上に多ければ、予定した合格者数を割り込む可能性も否定できないのではないか、と思うのですが。
杞憂かもしれませんが、「4〜5割が合格する見通し」などと楽観するのは危険ではないか、という悪い予感がします。

内調「機密流出の恐れ」、首相に届かず…領事館員自殺

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060411-00000001-yom-pol

特に報告書が不自然だと指摘しているのが、〈1〉自殺した館員が、「公安の隊長」と初めて接触した03年12月から、自殺する04年5月までの経緯が詳細に記されている中、同年2月からの約1か月間分だけが、接触の日時や回数を「自分でも分からない」などとあいまいになっている〈2〉同僚への遺書には「総領事には例のナンバーは言っていない」といった文言があり、総領事あての遺書に真実がすべて書かれていない可能性がある――といった点。
総領事や同僚への遺書などには、「日本を売らない限り私は出国できそうにありません」など情報漏えいを否定する記述があり、報告書は「意図的な漏えいがあったと断定はできない」としている。しかし、館員が暗号コードなどを扱う「電信官」の立場だったことから、「館員が日常的に触れていた機密情報について、相手との一般的な会話の中で漏れた可能性もあり、再度、徹底調査する必要がある」と結論付けている。

このニュースを読んで、何となくもやもやとしていた点が、かなりクリアになったような気がしたのですが(私自身、そこまで見通せていなかったという面もありますが)、中国における不適切な交遊関係があったにせよ、脅された、でも国を売りたくない、という、公表されている遺書の内容程度で自殺する、というのは、心理的に追い込まれていたとしても、やや飛躍があると思います。
いろいろなやり取りの中で、必ずしも意図的ではないとしても、漏えいさせてしまった情報があって、そこをさらに弱みとして握られ、進退窮まり、自責の念も募って自殺に至った、ということになると、自殺という極めて重大な選択をした理由も理解できます。
内閣情報調査室は、さすがに情報のプロだけあって、分析すべきところを分析しているな、と思いました。
しかし、この報告について、きちんと対処された形跡がないことは、非常に大きな問題でしょう。
暗号解読により、一式陸攻で移動中の山本五十六連合艦隊司令長官が攻撃され戦死した後、海軍による調査が不徹底で、暗号が解読されていることが究明されず、その後も同様の事態が続いたことを思い出しました。

愛媛県警、GPS情報端末を参考人の車に無断で設置

http://www.asahi.com/national/update/0411/OSK200604100083.html

この文書は「行動確認報告書」。1980年代に同県内で起きた殺人事件に関するもので、計4通あり、作成日はいずれも02年6月。5日付の報告書によると、県警の捜査員が午前9時ごろ、女性の自宅を訪問。車がなかったため、大手警備会社の位置情報提供サービスの携帯端末で、近くのスーパーの駐車場にあることを確認し、その後は捜査員が尾行した、と書かれている。
9日付の報告書でも、女性が高速道路のインターチェンジの料金所そばに駐車していることを端末で確かめ、捜査員が現地で確認。車に取り付けた端末を充電のために取り外し、2時間半後に取り付けたと記していた。22、29日付の報告書でも病院と喫茶店にある車を確かめたとしている。

「任意捜査の限界」という、刑事訴訟法上の論点に関わる問題をはらんでいます。
従来、警察が、張り込み、尾行といった方法により捜査対象者の行動を調査することは行われてきており、外部に現れた人や車の行動状況を、捜査の必要から、目で見て確認して行くことを、直ちに違法とは言えないと思います。
ただ、無断で他人の車に機器まで設置する、ということになると、プライバシーに関する調査の密度が格段に高まり、「無断設置」という点も相俟って、是認されるためには、通常よりは高い捜査の必要性、緊急性を要し、そうでなければ違法、という考え方も十分成り立ちうると思います。
この種の捜査の適法性を判断する際には、必要性、相当性、緊急性、といった要件により判断すべき場合が多いと思いますが、相当性に問題がある以上、ある程度高い必要性や緊急性が認められなければ、違法捜査の疑いは残ると言うべきでしょう。
愛媛県警におけるウイニーによる情報流出問題は、なかなか知ることができない警察捜査の実態を白日の下にさらし、刑事手続に関する新たな論点も提供しつつあって、その意味でも、歴史的な不祥事と言えるかもしれません。