松江地裁で検察官が涙の求刑 「感極まった」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091105/trl0911052214008-n1.htm

公判では、結婚間もない夫を亡くした妻が「生きる希望をなくした」と号泣しながら意見陳述。その後の論告求刑で、検察官は「遺族の方々の心中は察するに余りある」と涙を流し、傍聴席からもすすり泣きが漏れた。公判終了後、検察官は記者の問い掛けに「遺族からずっと話を聞いていたので、感極まった。お恥ずかしい」と振り返った。

「被害者とともに泣く検察」と言いますが、本当に泣いてしまってはいけないのではないかという気がします。泣いている姿を見ているのは被害者やその関係者だけではなく、例えば、被告人や弁護人が見れば、検察官は感情に動かされて偏頗な言動に及んでいるのではないかと不信感を抱くということもあり得るでしょう。プロとして、あくまで冷静に、被害者やその関係者の気持ちや実状を公判に反映させるよう努め、それと同時に、被告人についても、不利な事情だけでなく有利な事情も意識して、適正な科刑を得るよう公判活動を行うべきではないかと思います。
責めるようなことではありませんが、検察官としての心構えを見直してほしいという気がします。

マイクロソフトが1位=9月の世界サイト利用調査

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091107-00000040-jij-int

コムスコアによると、9月時点の15歳以上のネット利用人口は世界で約12億人。マイクロソフトは家族・知人らとの写真共有や、検索、電子メールとの関連を強化したサービスを原動力に、成長著しい中南米、中東・アフリカ市場で全滞在時間の3割強を占めた。
また、動画投稿サイト「ユーチューブ」を含め北米などで好調なグーグルが全世界で48%増の25億1200万時間で2位。ヤフーは日本を含むアジア太平洋地域で堅調だったものの世界全体では14%減の16億9900万時間で3位にとどまった。

私の場合、ヤフーのサービスに何となく慣れていて、惰性で使っている面が強いですが、例えば、検索は、どうでもよい検索はヤフー、きちんと精査したい検索はグーグルを、それぞれ使うようになっていて、徐々にヤフー離れは進んでいますね。ヤフーの日本語サイトは、オークションやショッピングは堅調のようですが、他のサービスでは新味が感じられず、つまらないサイトになったものだと思います。
MSNも、以前は、これはいかがなものか、といった貧弱な面が目立ちましたが、最近の充実度はすさまじく、今後は、ヤフーを、既に提携が決まっている検索以外のサービスも含め、徐々にその内側に取り込んで行く可能性が高いでしょう。
今後は、マイクロソフトとグーグルが「2強」としてしのぎを削り、ヤフーは、「1弱」として、日本を中心とする世界のごく一部でガラパゴス化ネアンデルタール化しながら細々と生きながらえる(あるいはいつの間にかなくなっている)という構図になる可能性が高いように感じます。

坂の上の雲 第1部―NHKスペシャルドラマ・ガイド (教養・文化シリーズ)

今月下旬から、遂に放映が開始されますが、ざっと読んでみて、どういうドラマになるのかがわかりました。亡くなった脚本家の野沢尚氏による「脚本家のことば」も掲載されていて、そこに示されたこの作品に向けた意気込みとその後の死を思うと、この作品を手がけたことが、やはり、かなりの負担になったのではないかと思わずにはいられませんでした。坂の上の雲では、日露戦争の勝利へ向け精魂を傾けた陸軍大将児玉源太郎が、戦後間もなく亡くなりますが、なぜかそのことが思い出されました。

坂の上の雲』〜脚本家の言葉〜 [ドラマ]
http://nozawahisashi.blog.so-net.ne.jp/2009-11-03

あらすじの中で、東郷平八郎が、「決断は一瞬じゃっどん、正しい決断をもとめるなら、その準備に何年、何十年とかかる。」と語る場面があって(132ページ)、読むもの、検討するものを多く抱えて凹みそうになる自分にとって教訓になる言葉であると感じ入りました。
今月下旬に、日弁連の業務改革シンポジウムで松山へ行く予定なので、坂の上の雲ゆかりの地も、可能な範囲内で訪ねてみたいと考えています。

東京地検特捜部(戦後史開封2)

戦後史開封〈2〉

戦後史開封〈2〉

既に文庫化されていますが、私は単行本で読んでいて、第2巻(全3巻)の冒頭に、東京地検特捜部というテーマで昭和時代の捜査が振り返られていました。私が読み返したかったのは、その中で、造船疑獄の際、娘にピアノを買うため一生懸命資金をためていた運輸省の課長が、部下を介して業者から資金提供を受けた(部下が介在していたため原資についての認識が欠如しているか薄かった)ことで、かなり無理に起訴され有罪にはなったものの、民間に転じて名をなした後に、当時の事情を知る元検事が書き記した体験記を読み、「私等夫妻にとって思わぬ救いとなりました。」と礼を言った、というエピソードでした。
上記のピアノの件だけでなく、昨日もコメントした

検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)

検事総長 - 政治と検察のあいだで (中公新書ラクレ)

以前に読んだ、伊藤元検事総長

秋霜烈日―検事総長の回想

秋霜烈日―検事総長の回想

また、前にざっとしか読んでいなかったため、同じ著者の「検事総長」を読んだ今、きっちり読もうとしている

指揮権発動―造船疑獄と戦後検察の確立

指揮権発動―造船疑獄と戦後検察の確立

のいずれにおいても、造船疑獄事件の捜査には、事件の筋立て、収集された証拠の評価など、かなり問題があったことが指摘されていて、指揮権発動という問題も、そういった事件の中身とともに見て行かないと、歴史の中で正確な評価を下せないように思います。
刑事事件で、よく、上からの圧力で事件がつぶされ、といった話が出ますが、確かにそういうことがないとは言えないものの、つぶれた理由の主たるものが、そもそも事件としての性質上、証拠上、「駄目な事件」であった、ということもよくあって、その辺は、事件を知らず証拠を見ていない人にはわかりにくいので、関係者の中の不満分子が言う「上からの圧力」説が広く流布され定説化する(間違いなのに)ということも、よくあることです。造船疑獄についても、そのような側面を意識しながら慎重に見て行く必要性を今の私は感じています。

刑事訴訟法(安冨潔)

刑事訴訟法

刑事訴訟法

安冨先生からは、第1刷を贈っていただき、私は、執務机の側に置いて、必要な時に参照しているのですが、最近、これを、来春から出講する可能性がある法科大学院刑事訴訟法の教科書として使用しようかと考えている旨、安冨先生へのメール(本題はそれではなく別)の中で書いたところ、ご好意により、三省堂から第2刷を1冊送っていただきました。ありがとうございました。>安冨先生、三省堂の担当者
その際の三省堂担当者からの連絡で知ったのですが、第2刷で、

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/roppou/keiji/keisohou_yasutomi/html/additional_chapter.html#4

のような補充、訂正が行われています。なお、サイト、第2刷ではまだ反映されていないようですが、152ページ「(5)必要な処分」の2行目で、221条1項とあるのが、正しくは222条1項である、ということです。
私がこの本を教科書として使用することを考えているのは、

1 内容が詳しくてわかりやすく、実務についてもよく目配りされている
2 裁判例の引用が豊富
3 著者が現役の弁護士でもあり、今後も適宜改訂が期待できる

といった理由によるものであり、私が、今、法科大学院生、司法試験受験生であれば、これを常に手元に置いて読み込み、自分なりの刑事訴訟法観のようなものを形成しつつ勉強を進めて行くでしょう。
基本書選択で迷っている司法試験受験生には、検討の対象にする1冊としてお勧めできます。

余罪と執行猶予

例の「お塩先生」の件で、今後、余罪が立件された場合に執行猶予が付される余地があるのか、ということも話題になっているようですが、執行猶予付きの有罪判決を受けた後に、そのような事態になった場合の処理ということについて、ちょっと整理しておきたいと思います。なお、お塩先生が、今後、余罪で立件されるとか有罪になる、といった趣旨で言っているのではありませんので、誤解のないようにお願いします。
なお、手元にあった

裁判例コンメンタール刑法 第1巻

裁判例コンメンタール刑法 第1巻

がわかりやすかったので、それを参考にしています。
刑法では、

(執行猶予)
第25条 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その執行を猶予することができる。
1.前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2.前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

という規定がありますが、ここで注意しなければならないのは、本件で余罪が立件された場合、それは、刑法で

併合罪
第45条 確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

とある、確定裁判の前の併合罪関係に立つ余罪である、ということです。そういった余罪については、

(余罪の処理)
第50条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。

とされていて、その「処断」の際、執行猶予を付すべき条件はどうなるかが問題になります。
この点については、上記のコンメンタール471、472ページに

余罪と執行猶予との関係では、執行猶予を言い渡された罪の余罪について刑を言い渡す場合には、何らの限定なく25条1項によって執行猶予を言い渡すことができるが(最判昭和32・2・6刑集11・2・503)

とあって、25条2項の問題ではなく、1項の問題として、そこでの要件を満たすことで執行猶予は付し得ることになります。ここは、よく、2項の問題と誤解されやすいところなので注意が必要でしょう。
それでは、余罪について執行猶予が付されず実刑になった場合、前に執行猶予が付された件はどうなるのでしょうか。刑法では、その点について、

(執行猶予の必要的取消し)
第26条 次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第25条第1項第2号に掲げる者であるとき、又は次条第3号に該当するときは、この限りでない。
1.猶予の期間内に更に罪を犯した禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
2.猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
3.猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

と定められ、上記の中の2号により、前に執行猶予が付された件については、執行猶予が必要的に取り消されることになります。したがって、後から起訴された事件につき判決を宣告し実刑とする裁判所は、前刑の執行猶予が取り消されることを考慮した上で量刑を決めるはずであり、刑期を予想するにあたっては、そういった事情も考慮しておく必要があると思います。
この点について興味ある方は、上記のコンメンタール等で確認してみてください。