大和但馬屋日記

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別にアンチホンダではないのよ

ホンダF1について色々考へてゐる間にぼんやり氣になつて調べて判つたことがある。F1の長い歴史の中で「V型十二氣筒エンジン」を採用したマシンがチャンピオンを獲つたのはただの一シーズンのみで、それがー九九一年のマクラーレンホンダだつた。
V12といへばフェラーリの代名詞だが、當のフェラーリはV12で一度もタイトルを獲つてはゐない。嚴密にはニキ・ラウダの時代の水平對向十二氣筒エンジンが構造的にはボクサーエンジンではなく「バンク角一八〇度のV12エンジン」と定義されるさうなので、それを含むなら一度はタイトルを獲つたことになるが、一般的にはさうは認識されてない。
歴史的な結果論だけで言ふならば、V12エンジンは他のコンパクトなエンジンと較べて明らかに強かったとはとても言へない、といふことになる。
一九九一年のホンダV12は同じV12のフェラーリを下して勝つたけれども、その時の一番のライバルはルノーV10であり、翌年以降はもうV10に全く齒が立たずに終つた。マクラーレン・ホンダMP4/6は、前年のフェラーリ641をコピーしてセナの腕で勝つた、それだけのマシン。ターボ禁止以後のホンダのコンセプト、そしてそれを積むマクラーレンシャシー設計の方向性が明らかに時代遅れであると氣付かれにくくしたといふ點ではその勝利は害惡ですらあつた。
結果論にしてもその言ひ方は酷すぎるつて? そんなことはない。當時の自分はウィリアムズ・ルノーファンだつたし、九一年のマクラーレンMP4/6とウィリアムズFW14を竝べてMP4/6の方が優れてゐるなんて奴が居たら目が腐ってるのかと本氣で思つてゐたのだから。結局、NA轉換後のホンダはターボ時代の樣に「是非うちにホンダパワーを」と求められる存在にはなり得なかつた。コンパクトな無限V10の方は重宝されたのにV12は要らない子扱ひだつたのだ。
その無限V10が存在感を増したところでホンダ第三期がそれを横取りして、シャシーも自前で用意したけど結果はボロボロで、撤退後に殘ったファクトリーで殘つた圖面を基に作つたシャシーを残つたドライバーがメルセデスエンジンで走らせてみたらそれがチャンピオンを獲つてしまつた。ホンダのシャシーにホンダエンジンを載せないことが勝利の秘訣だつたなんて! …といふ事があつてからの、昨日の日記の樣な状況での第四期ホンダF1であるから、自分は未だに「何しに來たの?」としか思ヘないんだよな。ドーセマタヤメルンデショ、と。
第三期ホンダF1の最大の功績は撤退後のブラウンGPメルセデスAMGチームといふ今の最強チームの礎となつたところにあると思ふ。第四期は何かになれるのかな。