『賢くはたらく超分子』有賀克彦

 超分子とは、共有結合(一般的な分子を形成する力)のような強い力ではなく、もっと緩い力で特定の形をとったり、複数の分子が組み合わさったもののこと。それぞれ特徴的な立体構造を生かして色々な働きをするので、ナノテクノロジーの基礎技術ともなりうる化学物質である。
 超分子研究のきっかけは、1967年、デュポン社のベターセンによるクラウンエーテルの発見だった。王冠のような形のこの分子は、特定のイオンを選択的に取り込む機能を持つ。
 一方、ロタクサンは紐のような形の超分子。これと輪のような構造の分子を組み合わせると、ちょうどビーズに糸を通したような形の超分子となる。これは分子スイッチや、果ては分子コンピュータへの応用が考えられると言う。また、ロタクサン同士を輪っかで繋いで網目状にすると、トポロジカルゲルとなる。単に繊維が絡み合ってるだけのゲルと違い、輪状の分子で繋がってるのでかなり丈夫。これで8000倍も膨潤可能なゲルを作ることが出来るらしいのだから凄い。
 更にUFOキャッチャーの要領で水中の特定の分子を掴み取る「アメンボ分子」、G-C T-Aと特異的に塩基対を作ることを利用した「DNAコンピュータ」、広い意味での超分子であるフラーレンカーボンナノチューブ軌道エレベータの話もあり)まで、様々な超分子の構造と働きを、平易な言葉で説明してあって面白い。叢書の性質上、それぞれのトピックの紹介は表面的であまりこみいった話はしてないが、それだけに、門外漢にも楽しく読むことが出来るのが嬉しいところだ。

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