カオスの縁 ――無節操日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2115-12-31 ご案内のこと このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

『機動戦士ガンダムAGE』各話解説、全話完了しました。

下記の目次からお進みください。

『機動戦士ガンダムAGE』各話解説目次

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2018-01-14 来た見た勝った

 記事は用意してたのに更新忘れてたでござる。もう1月も半分が過ぎようとしているのね……。

[] 2018年の目標 00:01  2018年の目標を含むブックマーク  2018年の目標のブックマークコメント


 達成されないことに定評のある年初の目標を、懲りずに出すだけ出してみる。


 とりあえず毎度おなじみの読書量ですが、一応50冊としておきます。例によって難物ばかりに取り組むことになるでしょうし、60冊には届かないであろうなぁ……。それでも、昨年よりは増やしたいです。切実。


 で、Twitterの方で元日近くに呟いたのは、料理関係の目標。「まだ作った事のないレシピ20種類以上に挑戦」と、「レシピを見ずに作れる料理を5品目以上増やす」。

 事前に作る料理を決めて、材料買ってきて、レシピ見ながら作る……というのはだいぶ安定してきましたが、冷蔵庫に残ってる材料から作るメニューを決めたり、といったレベルに達するには、やはりレパートリーの増加と、それらレパートリーをレシピ見ないで作れるくらい体得する必要が、やはりあるなぁと。そこまでいければかなりレベルアップできると思うのですが、まぁそのために数をこなそうという事ですね。

 まぁ、実家で料理環境が整っているうちに、少しでもスキルを上げておきたいところ。


 ……で、自分用wikiはEvernoteに移行し始めてしまったので昨年までのような目標が立てづらい状態なのですが。

 まぁ、昨年に引き続き、粛々と蓄積を増やしていきたいな、というところです。あと、WikiからEvernoteへの情報移行はできればあらかた済ませておきたいですねぇ。

 あと、折を見て世界史を頭に叩き込む、というサブクエストをこなせればなーというのがあります。


 そんなところでしょうか。

 ついついあっちこっちに手を出す性格なので困りものですが、さすがに目の前の修業期間を抜けないと何もできないので。東京散歩とか、定番映画見るのとかもやりたいけど、まぁ順番に順番に、という感じですなぁ。

 ともあれ、今年も地道に地道にやっていこうと思います。

 そんな感じ。

[] 歴史とは何か 00:01  歴史とは何かを含むブックマーク  歴史とは何かのブックマークコメント



 年越しに読んでたのはこれ。かなり長期間積読されていた新書

 まぁ、歴史哲学みたいな、そっち方面もいずれ読みたいなと思ってる分野の一つだったわけです。年末の空いた期間に、その端緒を開いてみた感じでしょうか。

 Twitterなんかで歴史関係の話する時に、なんとなく、どこかで聞いたような「歴史なんて所詮勝者の歴史」とか「歴史家の主観から逃れられない」とか、その手のフレーズで済ませてしまっている自分、というのは意識していて。でもそれじゃいかんだろ、もうちょっと本気で考えてみる必要はあるんじゃない? みたいには思ってたわけです。だから歴史哲学みたいな分野には、わりと関心の一端が向いていたのでした。


 で、本書を読んでみて、とりあえず上記のようなモヤモヤに対する思考の交通整理はかなり捗った感じです。事実に語らせよ、と言っても膨大な歴史的事実の中から取捨選択をするのは歴史家だ、カエサルがルビコン川と渡ったと言っても、ルビコン川を渡った人は数えきれないほどいる、その数えきれない中から「カエサルが渡った」ことだけをピックアップしているわけで、事実にだけ語らせるなどと言ったら膨大な事実の海に沈むだけである、というような話は、なるほど言われてみればという感じ。

 また、よく歴史学について「現在に役立てる」という擁護を見てて、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」みたいなフレーズを時々見かけるわけですけど、私はこの手のフレーズが実はあまりしっくりきてなくて、「歴史って何の役に立つの」という問いに対する優等生的でタテマエ的な回答なんじゃないの、みたいな感想をわりと持ってたわけですけど。ところが本書の著者によれば、むしろ「歴史上の教訓を現在に役立てる」というのは歴史学をやる上でほとんど必須のコンセプトになるというわけです。なぜなら、「現在の教訓になるような歴史を綴る」という指向性無しに、膨大な歴史的事実の中から拾うべき歴史事実を取捨選択する指針は得られないから、だと言うわけで。この辺りも、「なるほどそういう考え方があるのか」という感じでなかなか目から鱗がおちたところでした。


 他にもいろいろ細かな示唆を受けられたので、年初から収穫ある読書。嬉しい限りです。

 この調子で、どんどん行きますよっと。

[] 星界の報告 00:01  星界の報告を含むブックマーク  星界の報告のブックマークコメント



 自然科学寄り道中。

 言わずと知れた天文学のエピック。まぁ、当面天文学に深入りする予定はないので、さらっと。

 小冊ですが、その中でさらに、論述的な部分よりも、とにかくひたすら観察結果を列挙しているパートが多く、はてどう読んだものか、と戸惑いながらページをめくった感じはありました。が、巻末解説を読んで少し納得。

 要するに、アリストテレス的・観念的な天体イメージが支配的だった中で、望遠鏡という新しい道具を用いた「事実による認識の更新」のビッグウェーブが来たわけなのですね。本書がその流れの中核の一つだった、と。

 こういうの、やはり実際読んでみないと、流れの感じ、感覚が掴めないものです。


 とりあえず上記の認識を得たところで駆け足で本書を閉じました。そんな機会があるかどうか甚だ怪しいものですが、もし天文学にガッツリ取り組む機会があったら、戻って来るかも知れません。

 今回はそんなところで。

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2017-12-30 2017年最後の更新

[] 2017年 23:19  2017年を含むブックマーク  2017年のブックマークコメント


 気がつけばもう年の瀬ですか。というわけで、毎年恒例の1年振り返り記事をば。

 FGOのボックスガチャ周回をしつつお送りいたします(おい


      ☆読書

 今年ですが、ブログに読了済みとして感想を挙げたものだと32冊。その他、年初から職場からの帰りの電車でちまちま読んでいる岩波文庫版『千夜一夜物語』を7冊は読み終えていて、あと職場休憩時間に読んでたこれも岩波の『万葉集』を1冊、大学図書館で『黄金伝説』全4冊のうち3冊目まで読了して、という感じ。以上ひっくるめて40冊くらいですかね、全部で。

 もっとも、『ゲーテ全集14巻 自然科学論』は、一部ちくま学芸文庫に収録されてますがそっちだと3冊になってる分量だし、他にも厚めの本が多かったので、まぁ、といったところ。

 むろんそれも含めて、もうちょっと頑張りたかったですがねぇ。


 春辺りからゲーテにかかりっきりでした。2017年はゲーテを読んだ年、といったところ。思いのほか時間かかってしまったけれど、個人的にすごく気になる作家だったので、ある程度集中して追いかけられて良かったです。ああいうオールラウンダーな作家、やっぱり気になるので。

 あとは、昨年末までに新約・旧約聖書を読み終えた事で、ダンテ神曲』、ゲーテファウスト』、ミルトン失楽園』という学生時代に読みたいなぁと思ってたタイトルを相次いで読み終えられたのが大きかったですか。正直、読まないまま一生終えるかもしれないと諦めてた時期もあったようなタイトルたちだったので。他にも上述の『黄金伝説』に目を通したり、キリスト教関連の作品を重点的にチェックできたし、自分の中でかなりその辺が像を結ぶようになってきたので、それも今年の収穫かなと。まぁもちろん、亀の歩みではありますが。


 『千夜一夜物語』に1年以上かかるとは……というのは誤算ではありました。ま、帰りの電車でしか読んでないので進みが遅いのはしょうがないかな。他にも読みたいタイトルはいくらでもあるので、こちらも早めに片づけたいですねぇ。


 一方で、今年は年頭から、新たに大学図書館通いを再開しました。OBは大学図書館に入れるのだ。書店では入手困難な本や、購入が厳しい大冊をちまちま読んで行こうかと。そんなわけで、まずは以前岩波文庫版に抄訳されてて「全部読みたい!」となったパウサニアスを通読してみたりしたわけでした。ともかく、ガンガン読んでいくしかないので、今後も続けようかなと。その分、旅行に行ったり東京散歩したり映画見に行ったりする時間がなくなりますが、まぁしょうがない。


 結局今年も、西洋近代文学あたりに本格的に入るには及ばず。来年もどうなるか分かりませんし、前途多難であります。そろそろアジアに移りたいんだけどなぁ……w 日本もまだだし。

 ま、頑張るしかありませんね。



      ☆自分用Wiki


 これなんですけど。実は今年からWikiへの書き込みをやめて、Evernoteに切り替えました。

 正直この辺は一長一短なんだけど、バックアップが取りやすいのと、検索も優秀なのと、後は年表なんかはタグを利用する事でWikiよりも自分の思う理想の動的な年表として機能してくれそうなので、とりあえず今後はこちらで進める予定です。なので外部からは見えなくなってしまうけれど。

 Wikiの方に数千項目、ページを作ってあるのをすぐさますべてEvernoteに移行できるはずもなく、それもぼちぼちやっています。

 はてさて、これも使い物になるまでにあと何年かかるんですかね……w



      ☆料理

 丸一年以上続きました。三日坊主な私にしては上出来なことだ。

 シチュー、ロールキャベツなど、新しいメニューに挑戦して、それなりに成功率も高かったので満足。

 今のところはまだ、レシピを覗き込みながら、レシピ通りに作ってる感じですけど。それでも、トマト味ロールキャベツの余ったスープを翌日パスタソースにリメイクする、といった応用も徐々に出来るようになってきてるので。いずれ、もっとアドリブや応用がきくようになれば、もっと面白くなるのかなぁと思いながら。まぁでも、それも当分先でしょうけどね。

 ともあれ、現状楽しく続いているし、来年以降も続けたいと思います。



      ☆ゲーム

 今年は、まぁFGOばっかりやってた。

 昨年無事に終局特異点レイドイベントに参加してから、今年一年、1.5部やらイベントやらをこなし、戦力もそれなりに強化して……まぁ、そこそこ頑張れる程度の戦力は整ってきました。

 なんだかんだで楽しいから良いんだけど、実際のところ通年でとんでもない量のテキスト読んでる気がするし、このゲームやってなかったら優に数冊の本を余分に読めたのでは……的な気もしないでもない(笑)。

 とはいえまぁ、そこはそれ。以前Twitterでは書きましたが、ゲームの本質は蕩尽だと思っているので。「もったいない」などという気分があるうちは本当に遊ぶことはできません。遊ぶ時は遊び三昧に。FGOはその蕩尽に見合った楽しさを返してくれているので、現状は意欲が落ちないまま進められています。


 あとは、何気に今年、Steamで『レゴシティ アンダーカバー』というゲームを買ってどっぷり遊んでいたり。

 たびたび私が呟いたり書いたりしている、「オープンワールドゲームやりたい! けど別に血ィどばどば出たり人間の頭が吹っ飛んだりするゲームがしたいわけじゃないんだよ……」という例の個人的要望があったわけですが、そこを完璧に押さえてくれたゲームがなんとレゴだったという(笑)。

 アレです、ドラクエとかで、世界救うのそっちのけで街中の宝箱漁ったりするのが大好きな人には非常に楽しめるんじゃないでしょうか、というゲームでした。とにかくマップ内にやたら大量の隠し要素がばら撒かれていて、それをひたすら回収する至福の時間をすごしていましたとさ。ああいうゲーム、もっと無いかなぁ。


 そんな感じ。



      ☆総じて

 相変わらず地味な修業期間が続いております。あと数年は続くでしょう。

 正直なところ、迷うことはたびたびあって、さっさと実作に戻るべきなのでは、作品を作りながら学ぶべきなのでは、みたいな事も度々思うわけですが。しかしやはり、かつてそういう事をやっていて「これじゃだめだな」と思って今の修業期間を始めた事を安易に忘れちゃいかんよな、とも思ったりなんだり。

 まぁ、基本書、定番書を読むって言ったって、何を基本定番とするかでいくらでもキリがない部分もあるわけですけど。その辺も随時見極めをしつつ、もうしばらく粛々とやっていく予定です。

 さてさて。ま、来年も頑張りますかね。

[] 種の起原 23:19  種の起原を含むブックマーク  種の起原のブックマークコメント


種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)


 ちょっと自然科学方面に寄り道を。

 とは言っても、今年ゲーテの自然科学系の著作にも挑戦してたわけで、ダーウィンの進化論もゲーテの形態学の発想などと地続きのものですから、そういう意味ではスムーズに関心が動いた結果ともいえます。

 ま、いずれ読もうと思ってたタイトルの一つですし。


 ダーウィンの進化論については、以前軽い読み物でアウトラインを見た事はありました。が、改めて読んでみると、そのとんでもない視野の広さ、カバーしている領域の広さに感嘆した、という感じ。まぁ、考えてみれば当然ではあったんですが。生命誕生以来の、全世界の生物を対象にした壮大な仮説の話なわけですからね。

 事前に知っていた知識と比較して意外だった事と言えば、立論の発端と根拠の多くが飼育動物や家畜の品種改良の話だったこと。ダーウィンの論証の矛先が、生態学、古生物学、地学や発生学辺りまで縦横に展開されていること、でしょうか。やはりそれくらい広汎にカバーしてないと、この規模の仮説を論じられないのだろうな、というような感慨が。

 まぁ、急いで書かれた著作でもあるらしく、あちこちで「詳細な論拠を挙げたいけど紙面が足りない」とされているのが若干目につきはしました。むしろ存分にエビデンスとなる事実を散らした完全版が読みたいなと思ったくらい。


 目新しい発見があった読書、というよりは、半端だった知識を整理する読書、という感じでしたが。まぁ、それが現在やっている定番書読みの目的でもあるので。順当に目的に近づいたという感じです。

 まぁでも、それゆえにあまりのんびりもしていられないので。来年もガンガン進めていきたいところです。

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2017-12-05 その日、運命に出会う

[]  ゲーテとの対話 23:49   ゲーテとの対話を含むブックマーク   ゲーテとの対話のブックマークコメント



 今年、ゲーテを中心に読み進めていたのもいよいよこれで一旦最後とします。というわけで、ゲーテと親しかった著者によるゲーテ晩年言行録


 大変面白く、また有意義な読書でした。

 単に名言や格言を集めた本ではなく、ゲーテと会話した日のエッカーマンの日記のような体裁なので、なにげない会話とか、冗談とか、ちょっとした意見の相違やケンカのようなことまで手に取るように書かれているのが新鮮。

 本書への批評や感想で、「読むというよりはむしろ聞く、とでもいうべき読み味」だという主旨のものをいくつか見かけましたが、正にそんな感じでありました。


 私事ながら、私は師というものを持ったことがなくて。大学でもゼミに参加しないままでしたし、特定の誰かに師事して物事を学ぶ、というようなことをほとんどしたことが無い人間です。なんとなくフラフラと独学だけできてしまったというか。

 そういう人間なので、本書が仮想的にゲーテという師に長期間学んだような気分にさせてくれた事が、非常に面白く、また有り難かったという感じがしたわけでした。

 もとより、ゲーテの、文学芸術にも自然科学にも歴史にも政治にも通暁している視野の広さは私の憧れているところでもあり。しかしそれにしても、そうしたゲーテの様々な側面が本書に活写されているという事は、聞き役であるエッカーマンにもこれらすべての話題についていけるだけの素養があったということで、そちらもなかなか凄いし、そうした巡り合わせも含めて幸運な作品であることだなぁと。


 さすがゲーテ、という至言は無論たくさんあるので、そういうのを目当てに読むのもアリですけれども、どちらかといえばゲーテという世界的文豪の人柄を残すことができた稀有な本なので、そういうところに注目して読んだ方が良いような気がしたことでした。光学に関する自説に自信満々のゲーテ、それに対して若干の反論を試みたエッカーマンに対して意固地になるゲーテ、けれど数か月後検討した末にエッカーマンの説をやんわり認めるゲーテ。精神的に不調になったエッカーマンを気遣って元気づけようとするゲーテ、自作への好意的な批評を読んでまんざらでもないゲーテ、親しい人の訃報に落ち込みつつも気丈に振る舞うゲーテ。そんな個々の場面の中に、ゲーテという人の人柄を浮かび上がらせた、本当に貴重な仕事だと思います。

 特に、個人的に感銘を受けたのは、ゲーテが時に聞き役に回る時でした。下巻にて、エッカーマンが(この人もはなはだ凝り性なので特定の話題にはめちゃくちゃ詳しい)自分の趣味で研究したことを話し始めると、はるかに年上なゲーテが積極的にエッカーマンの話を促し、質問し、エッカーマンの精力的な研究の取り組みを誉めてその内容を学ぼうとするんですよね。ゲーテほど博識で、既に名声もあり、高齢でもある人が、自分よりはるかに若い相手から知らない事を学ぼうとする時の熱心さと素直さに、とにかくやたら感動したのでした。私が想像するより、ずっと難しい事のはず。

 以前、何かの雑誌の対談記事だったかと思いますが、荒俣宏氏が、若い大学院生(山下清について研究してる人だったはず)と話す企画で、徹底して「山下清についてはあなたの方が詳しい。どうか教えてください」という姿勢を崩さなかった事に、異様に感心したことがあったのです。あの荒俣宏が(私の中でやはり荒俣氏の博識ぶりは強く印象付けられてますから)、ごくごく自然な感じで、一貫して教わる側に回っていたのを見て、なるほどこうか、と思ったという。本書を読んで久しぶりに思い出しました。


 とかく。

 ボリュームがボリュームなので時間はかかってしまいましたが、それに見合った充実した読書でしたよ、っと。

 ともあれこれで、ようやくゲーテ関連の読書は一旦一区切り。まだまだ後が詰まってますので、どんどん行きたいと思います。

[] 食卓歓談集 23:49  食卓歓談集を含むブックマーク  食卓歓談集のブックマークコメント


食卓歓談集 (岩波文庫)

食卓歓談集 (岩波文庫)


古書店で見かけて気まぐれに手に取った本。息抜き読書にちょうどいい軽い内容でした。


 宴会での話題を採録したという形式なこともあって、かなり「どうでもいい」話も多かったりはします。お酒に酔いやすいシチュエーションとその理由とか。

 とはいえ、そこがこの手の本の逆説的なところなんですけれども、2000年前の「どうでもいい話」はどうでもよくない、むしろ貴重な話なんですな(笑)。現代の我々にとっては十分価値がある。

 天下国家の大問題みたいなのは、重要なだけにいろんな人が記述したりしてますけど。どうでもいい話はそれらに比べると残りにくいわけですよ。だからこそかえって貴重だったりして。

 本書も、プルタルコスの時代のローマの風俗や日常がいろいろ垣間見えたり、興味深い話がちらほら拾えたりする楽しい本でありました。

 この本の内容は『倫理論集(モラリア)』の中の一部だそうなので、将来よほど余裕があったら、全体も読んでみたいですな。

 そんな感じ。

[] TYPE-MOONの軌跡 23:49  TYPE-MOONの軌跡を含むブックマーク  TYPE-MOONの軌跡のブックマークコメント


TYPE-MOONの軌跡 (星海社新書)

TYPE-MOONの軌跡 (星海社新書)


 最近FGOやってることもあり。たまたま目についたんで買って来た。

 Twitterの方では何度か言ってるわけですが、初音ミク、TYPE-MOO、あるいは東方とか、あの辺の同人誌やネット発の文化である程度以上にメジャーな方にまで影響力を持っているタイトルや人や作品について、後世ちゃんと経緯や背景がわかるように歴史的にあとづけておく仕事はもっと必要だよな、と。初音ミクについては『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』という労作があって、かなり上出来だったので少し安心しましたが、まだまだきちんと記述されてないものは多い気がする。TYPE-MOONもその一つだよなと思ってました。

 本書を手に取ったというのは、だから、そういう応援の意味が多分にあります。


 とはいえ感想は率直に書くけれども。

 うむ。作者の型月愛はすごく伝わって来るんですけれども、むしろ好きだからこそまとまってない感じがすごいした、というのが正直なところ。まぁ、とことん愛着あるものを語るのって難しいんですよ、好きであればあるほど客観的になれないから。

 章立てはすごく整っていたと思います。TYPE-MOONのこれまでの動向を語るにはちょうどいい配分と構成かなぁと。しかし中身については、ちょっと食い足りない感じが否めないという。

 型月作品以外への言及はほとんど無いので、同時代の流れの中でどう位置付けるかみたいな議論が弱いし、一方で制作裏話として読もうとするとあまりにもその辺の記述が少ないし。まして、奈須きのこの長大で複雑でこんがらがった作品世界を、作品未読の人にも分かるようにこの分量で語るのはいくらなんでも難しい。

 結果として、かなりどっちつかずな内容だと感じた次第でした。


 まぁでも、「Fate/Grand Orderとかいうゲームがやたら売れてるけど、あれ何なんだ?」という、主にマーケティングとか経済関係の人が下調べのつもりでこれ読んで、目を廻して混乱したりするならそれはそれで楽しくもありますが(笑)。

 FGOがなんであんなに売れてるのか、に関する業界での分析とかをたまに見ても、なんか全然実態を掴めてないような印象がけっこうありまして。『空の境界』がいきなり劇場版7本で公開とかいうのも含めて、業界のセオリーからは考えられないようなことをあの作者あの会社はよくやってるわけですけれども、「にも関わらずなんで売れてるのか」みたいな事を、経済や売り上げ方面から観察してる人が全然、ニュアンスすら掴めてないような。

 でも、けっきょくそこが掴めない限り、せっかく面白くなりそうな作品も「売るための都合」でつまらなくしてしまってダメになる、みたいな馬鹿な事をいつまでも続けることになるわけで、その辺を考えてもらうちょっとしたきっかけにでもなるなら、十分良い仕事になったんじゃないかという気もします。

 そんな感じ。

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2017-10-13 人間って 飲み物の形でしか見たことないの

[]  ヴィルヘルム・マイスターの修業時代(上・中・下) 23:29   ヴィルヘルム・マイスターの修業時代(上・中・下)を含むブックマーク   ヴィルヘルム・マイスターの修業時代(上・中・下)のブックマークコメント



 集中的にゲーテを読んで来たのもぼちぼち大詰め。というわけで、ビルドゥングスロマンの嚆矢として著名なヴィルヘルム・マイスター。


 学生時代に、いわゆる「教養小説」というのを一つだけ読んだ事がありました。山本有三の『路傍の石』で。しかし、まだあまり読書経験が無かった頃でもあり、ほとんど印象に残ってなかったんですよね。

 ご存知の通り、このブログの管理人は妖怪とか魔術とかの胡散臭い話に興味関心の中心がある人間で、社会における等身大の成長とかいうところにあまり関心を向けていないダメ社会人でありますから、教養小説ってあまり身近に感じたことがなかったのでした。本書もどれくらい楽しめるかなーと思いながら読み始めたのですけれども……。


 とりあえず、難しいこと抜きにして、物語として純粋に楽しかったというのが一つ。登場人物の意外な過去が終盤明らかになったり、謎の秘密結社が登場したり。想像していた以上の波乱万丈ストーリーでした。こんなエンタメ的な楽しみ方のできる作品だと思ってなかったので嬉しい誤算。

 あと、やはりミニヨンには引っかかってしまう私でありました。『ガンダムZZ』でプルに転んだり、『ガンスリンガー・ガール』に転んだりする私にミニヨンが何も引っかからないわけがなかった(笑)。ミニヨンがエッグダンスを見せるシーン、やっぱりああいう不器用でいじらしいのに弱いっぽい。


 で、ビルドゥングスロマン、というヤツについて。

 結局私が、教養小説、人間形成についての小説というのに食指が動かなかったのは、ありていに言ってしまえば「日本社会の中で称揚される完成された人間像、というものにまったく興味が持てなかったから」というどうにもアレな理由であったりもしました。身も蓋もありませんが(笑)。

 そんな私が本書を読んで「なるほど」と思ったのは、『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』においては、「人間形成が完了するまでの話」では無かった事でした。むしろ本書のテーマは、「そもそも人間形成とは何か」という根本への問いです。そして、当初はあまりにも夢想的に「演劇に専心する人間」を「理想の人間形成」だと思っていた主人公が、様々な体験を経て「理想の人間形成像」を様々に変遷させていく、その変遷こそが「人間形成」だという、そういう風に読めたのでした。

 だとすれば……なるほどこれなら分かる、と思えた次第です。初めから「成長した人間の完成像」という所与の正解があってそこに徐々に近づいていく話ではなくて、むしろ「人間の成長とは何なのか」の探求こそが教養小説の主題なのかな、と。

 そのように理解して良いのなら、確かに私の関心にも触れて来るなと。そう思えただけでも本書を読んだことは収穫だったかなと思ったのでした。今後、他の作家ビルドゥングスロマンを読む際にも、だいぶ違った心構えができそう。


 閑話休題。

 なにげにゲーテ小説は、俗説や民間信仰に関する知見でも面白い素材がいろいろあって楽しかったりしました。この作品であれば、ドッペルゲンガーとか、あと死んだ人の骨を集めて蘇生させるモチーフが印象的に取り入れられてました。とりあえずメモっておいたり。

 そんな感じで、やはり読んでみるとなんだかんだ発見があるものです。楽しみつつ、では次へ。

[] 写真民俗学 23:29  写真民俗学を含むブックマーク  写真民俗学のブックマークコメント


写真民俗学 東西の神々

写真民俗学 東西の神々


 寝しなにパラパラ読んでました。日本、そして世界各地の祭りで撮った写真をテーマ別に編集したフルカラーな一冊。

 たまにこういう本を読むと楽しいのです。深さや厳密さが重要な読書も多いけど、たまには興味本位で薄く幅広く、気楽に眺めて回る。そういう時こそ、視野が広がるわけですからね。

 やはり、こう、ビジュアルのインパクトってあるわけです。文章で百言を費やしてもいまいち掴めなかったことが、写真で見たら一目瞭然なこと。私も普段はどちらかというと文字偏重な人間ですけれども、たまにこういう、ビジュアルを通覧するような読書も良いものだなと改めて思った次第。

 また、いくつか興味深い情報が拾えたり、「そういえば日本にも巨人が登場する祭あったね」と記憶の整理ができたり、いろいろ有意義でした。文章量はそんなに多くないので、気楽に手に取って読むのにちょうどよいと思います。

 そんな感じ。

[] 『東方鈴奈庵』完結 23:29  『東方鈴奈庵』完結を含むブックマーク  『東方鈴奈庵』完結のブックマークコメント



 最近あまり東方関連に時間を割けてませんが、この漫画は毎回買って読んでました。


 まぁ正直、絵柄の可愛さで買っていたのが動機の8割で(笑)。「これは私にとってのごちうさである」とかTwitterで言ってたわけですけれども。特に1巻のレミリア様可愛すぎた。

 とはいえ、読み進むうちに、この作品のテーマとか方向性が楽しくなってきた感じもありました。人間の里側にスポットが当たって、既存作品と違った角度から東方の世界観が眺められた楽しさだったわけですが。個人的に、なかなか興味深かったです。


 おそらく、こんな面倒臭い読解をするもの好きなんて私くらいだろうと思うので書きますが(笑)。かなり現実での世情を意識しての、時事的な問題意識と不可分に構想されたプロットだと思うのですよ。人間側から見た妖怪、人間側視点から人間の里を考えるって、要は武力で絶対敵わない相手に対する安全保障の話だからです。純粋な武力によるパワーバランスで見れば均衡するわけが無いのだけれど、特殊な依存関係により、安全保障が成り立っているわけですね。この辺、安全保障というととにかく武力を拮抗させるという発想しかない言説が溢れる昨今に対するカウンターに読めます。

 そして最終盤。小鈴が焦って道を踏み外しかけるわけですが、その経緯も非常に面白い経過だったと思います。

 小鈴が何を見誤ったかって、私見ではおそらく、「人間」と「妖怪」の二項対立で考え、「敵か味方か」の単純な二分法で理解しようとした結果、暴走したんですよね、あれ。そうした単純な二分法で考えようとすると、霊夢のような立場が理解できなくなってしまう。

 ところがラストで示されたのは、「博麗神社の宴会」という、敵と味方、人間と妖怪の境界の中間地帯のようなグレーゾーンがあったわけです。この中間地帯の存在が知らされることで、小鈴は安定するのでした。


 一般論として、敵と味方、向こうとこちらに分かれているように見える状況でも、必ず中間のグレーゾーンというのが存在するものです。そして大抵、そのグレーゾーンでこそ最も大事な事が起こっている。

 紛れもなく、東方という一連の作品はこのグレーゾーン、中間地帯、つまりは「境界」の魅力と重要性をこそ描き続けていたんですよね。主人公の博麗霊夢は現実と幻想郷の境界である博麗神社の主で、また作中最大の力を持つ妖怪、八雲紫も「境界を操る能力」を駆使する。

 人間の里にスポットを当てた『東方鈴奈庵』は、そういう「東方がずっと描いてきたこと」を改めて認識させてくれる、そんなプロットになっていたと思います。



 もう一つ。東方が描く関係性には必ず「タテマエ」があって、その「タテマエ」の重要性をこそ強調しているのだということ。

 阿求は、人間にとって妖怪は敵であるということが、そうであるべきであると選択された真実……要するにタテマエであるという事を述べています。分かりにくいけれど、これを見失ってはいけない。

 実のところ、東方はWIN版最初である『東方紅魔郷』から、一貫してこのタテマエの魅力と楽しさで世界観を保っているわけでした。

 レミリアは「咲夜は優秀な掃除係、おかげで首ひとつ落ちていないわ」とか、「こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ」とか、物騒で剣呑な事を平気で言う。しかし実際は彼女たちは、そういう命がけの真剣勝負という「タテマエ」で、実際には死人が出ることのないごっこ遊び、「弾幕ごっこ」に興じているわけです。ごっこ遊びだから、咲夜のナイフも妖夢真剣も、それで実際に相手が死んだりはしない。

 おまけに幻想郷住人たちは基本的に異常にノリが良いので(それはもう、射命丸のフリに対して即座に「ぎゃおー! たべちゃうぞー!」とか言ってくれるくらいにw)、物騒なノリを持ちかけても大体応じてくれる。プレイヤー(読者)は、ですから、東方キャラたちがどこまで本気で、どこまでごっこ遊びなのか、その真意が容易に推測できないように、そういう風に描かれています。

 そしてもちろん、この「タテマエ」としての真剣勝負と、実態としてのごっこ遊びの、その両面があるから東方の弾幕戦は魅力的なわけです。

 今回の『鈴奈庵』は、こうしたタテマエが人間の里を維持するための方便としても機能している事を暗に明かしています。だいぶ今までよりも踏み込んだ描かれ方をしていたかと思います。

 こうした、東方作品における「タテマエ」としての構図と、そこに隠れた実態とのバランスをどう見るか、そして彼女たちが何故「タテマエ」をこうも大事にしているのか、そこを考えるのが、『鈴奈庵』を、ひいては全体としての「東方」を読み解くポイントだと思うのですよね。

 東方のシューティングボスやEXボスたちは、本気で能力を行使すれば災害級の惨事を引き起こすことも可能な、強大な存在でしょう。その彼女たちが、あえて「ごっこ遊び」に興じているのは何故なのか。その辺のことを改めて感じ入った、本書の読後でありました。

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