カオスの縁 ――無節操日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2016-10-27 全て遠き理想郷

[] 新約聖書外典 23:40  新約聖書外典を含むブックマーク  新約聖書外典のブックマークコメント



 先日の旧約聖書に続き、新約聖書外典も読んでみました。

 まぁ、「旧約聖書外典」というのは、「ギリシャ語に翻訳された聖書には入っていて、現在のユダヤ教における旧約聖書正典には入っていないもの」という事で明確に指すものが決まっているわけですが、新約聖書外典というのは現在の新約聖書に入っていない文書がいろいろ含まれるため膨大な数あるらしく、この講談社文芸文庫に入っているのはそのうちの一部という事のようです。それに、中身も若干抄訳。

 とりあえず、気になったのは性嫌悪モチーフの多さだったりしました。『新約聖書』の福音書あたりに比べて、性交渉に対する忌避を示唆する部分が圧倒的に多い。また、聖人の話によって熱心な信仰を得た若い女性が夫との性交渉を拒否、夫が起こって聖人を讒訴、処刑しようとするという展開がほとんどパターン化しているように見えます。

 どうもその辺含め、ちょっと首をひねりながら読んでいたような感じ。

 その他、注釈にさかんに指摘されているグノーシスの思想という辺りはあまり詳しくないため、その辺もちょっと読むときにネックになっていたかも。

 まぁそんなわけですんなり飲み込めた感じではなかったですが、魔術師シモンの逸話とか、いくつか面白い話も読めたのでとりあえず良しとします。一度目を通してさえおけば、後で用事があってもすぐ戻れますし。

 とりあえずそんな感じの読書でした。

[] 自省録 23:40  自省録を含むブックマーク  自省録のブックマークコメント


自省録 (岩波文庫)

自省録 (岩波文庫)


 自分の将来の創作とかその他もろもろに使えそうな事をメモっている自分用Wikiですが、先日ちょっと編集形式を変えまして。そしたら、今までスルーでも良いかなーと思えてたタイトルにも手が伸びるようになったんで、ローマに引き返してこんな本を読んでみたり。ローマ五賢帝の一人、皇帝マルクス・アウレリウスの警句集という感じ。


 とにかく読んでて驚いたのは、一国の統治者の言葉とはとうてい信じられないくらい、圧倒的に自己完結した哲学が語られてた事でした。称賛も名誉も、自分とその周辺の人が死んでしまえばすべて塵に帰る程度のものであり、永劫に続く宇宙に対してはほとんど意味を為さないのだから顧みる必要が無い、みたいな、万事そんな調子であって。それが権力者として謙虚であるべきとかそんな生易しいものじゃなく、もっとストイックで内向的な倫理なので。正直、タイトルと著者その他全部伏せて読まされたら、とても世界史に冠たる大国の皇帝が書いたとは信じられなかったと思います。しかも、善政をしいていたという……。

 ほんと、人事をどうしようとか、人民の統治とか、そういう話が全然出て来ないの、異様ですらある。


 同じ意味のことを繰り返し書いているのも、自分に繰り返し言い聞かせているようで、なんともいえないストイックさを感じます。

 確かに、こういう人が善政を敷くというのは分からなくもない(実務方面で優秀な人材が部下にいれば)。けど、たとえばこの人が選挙に出たら勝てるかっていったら勝てないよなぁ多分、とか、まぁそういう事も考えてみたりw

 いろいろ思うところがありました。こういう箴言集的なものはなんだかんだ好きなので、折を見ていろいろ読んでみようかと。

[] ユートピア 23:40  ユートピアを含むブックマーク  ユートピアのブックマークコメント


ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)


 有名古典を着々と読み進めております(ペース遅すぎですが

 そんなわけで、これも。


 とりあえず、学生時代は厭うていた「古いものから順番に読む」というのの有り難さを感じつつの読書でした。プラトン『国家』を読んでおいたのが、この作品の理解にかなりプラスだったのは間違いない。あれが後世に与えた影響って大きかったのだなぁと。


 読んでいる間の所感としては、だからプラトン『国家』読んだ時とかなり似ていた感じでした。理想的な国家像を突き詰めていけばいくほど、多様性が失われ管理社会化が進んだディストピア的な国になっていってしまうのだなぁという感慨。

 とはいえ、本書はそうしたところを『国家』から引き継ぎつつ、そうした「理想」から微妙に距離をおこうとしているところにクレバーさを感じたところもあって。具体的には、ユートピア国の見聞を話す人物と、書籍全体としての語り手トマス・モアが別人であり、最後にトマス・モアから「ユートピア国のすべてを現在のヨーロッパで実現可能とは思えない」と述べさせたこと。というか、そもそも本書がフィクションとして綴られている事、でしょうか。このわずかな距離の取り方のおかげで、読者私と本書との溝がだいぶ埋まったような感じでした。

 『国家』の感想の時にも書いたけれど、一度徹底的に、「理想の国」「理想の全体像」を構想しシミュレートしてみることはすごい重要なんだと思うのです。理想だけが、現実を相対化する。場当たり的に現実の問題に対処しているだけでは、社会全体はどんどんチグハグになってしまう。

 しかし理想は、理想であるがゆえに、どんどん先鋭化し暴走してしまう。理想国家は容易くディストピアになってしまう。なので、そこでちょっとだけ最後に「理想」から距離をとっておく、というのは見事な処し方だなぁと思ったわけでした。


 いやしかし。こんな極めてポリティカルな内容の本が、がつがつ読まれてたんだとしたら、大したもんだとは思います。個別の政治問題を云々する前に、こういう国全体に対する思考シミュレーションを体験したかどうかって、けっこう大きいのかなという気も。こういうのが日本と西欧の政治感覚の違いとして出るのだとしたら、まぁそりゃかなわんなぁ、みたいな気分にもなったりしたのでした。

 まぁそれでも、本書を日本語で読めるというのはだから、ありがたいことなのでしょうね。


 とりあえずそんな。

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2016-09-30 約束された勝利の剣

 ひょんなことからFGO始めました。ガチャ回す系のゲームやるの久しぶり。

 まぁ読書ペースに差支えない範囲でのんびりやってます。私の場合、なぜかこの手のゲームではビギナーズラックがけっこうあるらしく、始めて半月セイバーアルトリアさん引いたりしてるんで、わりと順調なのかなー。

 気が向いたらそちらの進捗状況も記事にしますかね……。

[] 文語訳旧約聖書 00:04  文語訳旧約聖書を含むブックマーク  文語訳旧約聖書のブックマークコメント


文語訳 旧約聖書 II 歴史 (岩波文庫)

文語訳 旧約聖書 II 歴史 (岩波文庫)

文語訳 旧約聖書 IV預言 (岩波文庫)

文語訳 旧約聖書 IV預言 (岩波文庫)


 今年読む予定だったものとして一番の大物、と年初から言っていた旧約聖書ですが、どうにか読み終えました。さすがに難物だったものの、『ローマ帝国衰亡史』ほどではなかったので、まぁどうにか(感覚がマヒしてきたとも言う)。


 旧約聖書には大昔一回トライしてたんですよね。新共同訳のものだったんですが、なにせ字が細かいんで、けっこう頑張ったけど士師記の辺りで力尽きてたのでした。数年越しのリベンジマッチに成功した次第。いやしかし、文語訳なせいもあって、疲れました。


 創世記出エジプト記なんかも読み返してみるといろいろ発見があって面白かったわけですが、その後のダビデ、ソロモンの逸話なんかにも気になるところが多く。

 そして何よりすごかったのはやはり「ヨブ記」でした。これはもう、読んでいくうちに自然と背筋が伸びていくような、緊張感のある内容でした。事前にいろいろと聞いてはいたのですが、それにしても想像以上の、何とも言えない迫力があった。

 正しい者は報われ、律法を守らぬ者は報いを受けると言いつつ、世の中では義人がひどい目に遭い悪人がはびこっている、なんでだ? ……というのは疑問として当然起こるわけですが、そこに真っ向から挑むヨブと神とのやりとりに、さすがに色々と考えさせられました

 構成が上手いですよね。冒頭で神様自身に、ヨブが極めて善良な義人であることを保証させているわけで、だからヨブに詰め寄る友人たちの「ひどい目に遭ってるなら何か悪い事したんだろ、気づいてないだけで」という、ある意味意地の悪い指摘が実際には的外れである事が読者には分かってるわけですよね。だからこそヨブの苦悩を読者も共有できるようになっている。で、その苛立ちが最高潮に達したところで、ついに神様と対話することになるのでした。

 その返答も実に奮っていて、圧倒されつつ読んだわけですが……。こういう理解で正しいのかどうか分かりませんけれども、要するに善人でなければ救われないけれども、だからといって善人だから必ず救わなければならない義務は神様には無いわけですね。神様に義務の履行を迫れる存在なんて存在しない。そして、“だからこそ必死に祈って努めなければならない”、と。

 個人的に、親鸞の「善人なおもちて往生をとぐ、いわんや悪人をや」を思い出していました。自分は善行を行っているから間違いなく救われる、という慢心こそが信仰にとっては一番のボトルネックで、だからどれほど善に努めても救われるという保証がないこと、保証がないからこそ必死に祈り続けることが重要なのかな、という理解です。

 まぁでも、ヨブ記はもう一度、現代語訳ででも読み直してみたいなとも思いました。それだけ気になる存在になりました。


 他にも、ヨナ書なんかも刺激的で面白く読みました。基本的に同じような神様賛美と、神様からの不信への糾弾が中心だったりするのですが、時たまヨナ書みたいな思わぬ変化球が来るのが面白く、油断できない本だなと。

 全般的に殺伐とした内容が続く中で、時に後世のキリスト教につながる萌芽のようなものが見えたりとか。さすがにいろいろ示唆的でした。


 そんなわけで、苦戦しましたがそれに見合った発見もあって、なかなか充実した読書だったと思います。

 それに、こいつをクリアしたことで、ようやくミルトンの『失楽園』とかダンテの『神曲』あたりにも手を出せるかなと思えたのも嬉しいところ。この辺が未読だったのもずっと引っかかってたんですよね。

 とはいえ、その前にもう少し読んでおきたいものがありまして。

[] 旧約聖書外典(上・下) 00:04  旧約聖書外典(上・下)を含むブックマーク  旧約聖書外典(上・下)のブックマークコメント


旧約聖書外典(上) (講談社文芸文庫)

旧約聖書外典(上) (講談社文芸文庫)

旧約聖書外典(下) (講談社文芸文庫)

旧約聖書外典(下) (講談社文芸文庫)


 現在続けている古典読みですが、一応、延々とこればかり続けているつもりはなくて。飽くまでも自分の実力の底上げのためであり、いずれは終了する予定です。それも、できれば早めに。

 なので何もかも読んでいられないという気持ちもあって、読む読まないの選定はけっこう考えています。

 本書についても読もうかどうしようか迷っていたのですが……結果的には、読んで大正解でした。


 西洋魔術周辺をうろうろしていると、ソロモン王の名前をわりと見かけたりするわけですが、旧約聖書の列王記を読んだだけでは、なぜそうなったのかあまりピンときませんでした。それが、本書、外典所収の「ソロモンの知恵」の方からは、のちの魔術とかそっち方面につながるような記述がチラチラ見られて、あぁなるほどとなったわけです。

 他にも、ビヒモスとレヴィアタンの名前が出てきたり、巨人の出自と性質についての言及があったりと、主に私の魔術とか怪物とかへのイカガワシイ関心にビビッと響くような記述が多くて、ああこれは読んで良かった、とw


 また、黙示録といえば新約聖書のヨハネ黙示録しか知らないわけですが、実際には「黙示文学」という1ジャンルがあるぐらい、いろんなものが残っているのですね。その辺も含めていろいろと示唆を受けました。

 そんな感じで、久しぶりに私の伝奇脳が活性化される楽しい読書でした。これは新約の外典も読まねばなるまい

[] アーサー王の死 16:04  アーサー王の死を含むブックマーク  アーサー王の死のブックマークコメント



 アーサー王伝説はもちろん気になってたわけですが、いまいちどれを読んだら良いのか判断つきかねる状態だったりしました。最近、ちくま文庫に比較的古いものが訳出されて入ってる事を知ったので手に取ってみた次第。


 まぁ、なんというか、中盤以降どちらかというとランスロットが中心の話になってたりしていろいろ意外だったわけですが。その辺も含めて発見が多々あって楽しかった読書でした。聖杯のイメージとかもね、もちろんTYPE MOONの『Fate』シリーズのイメージになるわけですけれども(笑)、その辺とはかなり違った登場の仕方をしてて、ははぁこうなのか、と思ったり。

 アーサー王に戦いを挑むローマ軍が「巨人」を軍勢に加えてて、先日読んだ『ヘーオウルフ』の巨人や『旧約聖書』のゴリアテはじめとしたペリシテ軍の巨人なども含め、キリスト教文化における巨人の意味がかなり違って見えてきたりとか。


 また、やっぱりいわゆる「騎士道」というのについて、読んでいてある種の気持ちよさは正直あるわけです。敵同士でも相手の技量の高さには必ず感服し褒めるとか。特撮ヒーローについてよくある「変身中に攻撃してはならない」というネタじゃないですが、相手が鎧を身に着けて準備万端整うのを待って「では始めよう」みたいな戦いの段取りとかね。もちろんこれは物語なわけで、現実の戦いがこのようであったかどうかは私はあまりよく知りませんが……うーん。私がTwitterなんかでたびたび言及している『ガンダムW』のトレーズ閣下のセリフ、「礼節を忘れた戦争は殺戮しか生まないのだ」というアレと合わせて、やっぱり色々考えてしまうのでした。


 そんな感じで、なんだかんだ原典に当たると様々に考えるテーマが見つかるもので、充実していたと思います。

 気になったのは本書では一部原書に対して省略があるところと……あとはおそらく原文では「ドラゴン」になってると思われるところを何故か「恐竜」って訳してあることくらいかな(笑)。よもや中世騎士道物語に「ダイナソー」なんて出て来ないよね?w

 海外翻訳ものをここ2年くらい読んでて、やはり「これ原文どうなっとるんや」と思うことはたびたびあり。どうも、いよいよもって英語くらいは読めるようにならんといかんかなーというぼんやりとした意識を持つようになったこのごろです。まぁ、語学はどうにも苦手なんで及び腰ですが。

[] 中世イタリア民間説話集 00:04  中世イタリア民間説話集を含むブックマーク  中世イタリア民間説話集のブックマークコメント





 最近出た新刊。『イル・ノヴェッリーノ』の完訳ということで、たまたま目についたので買って読んでみた。いやいや、こういう本が翻訳されて日本語で読めるというのはありがたいものです。


 今年はじめに読んだ『皇帝の閑暇』に比較的近いですかね。古今の有名人や英雄の逸話から、名も無い一般民の艶笑話までを幅広く収めた物語集。総計100話。そんなに長い話は無いので、わりとサクサク読めました。

 基本的にこういうのは、本格的に取り組むなら同系統のいろんな説話集を読み込んで、時系列に並べて変遷を調べたりするのでしょうが、私はそういうレベルには全然達していないので、まぁとりあえず中世イタリアの空気を感じるくらいの読書でしたが。それでもいろいろと楽しく読めました。自分用お勉強メモに逐次書き写し。

 この前に読んだマロリー『アーサー王の死』の序文でも気になってたんですが、アーサー王伝説中のとあるエピソードの初出がこの本だそうで……つまり、アーサー王伝説ってイギリスの話なのに、大陸側での流布の方が早かったのかしら、というような辺りはけっこう気になったり。この辺はちゃんと調べないと言い切れないところですが、とりあえず頭の片隅にピックアップしてメモしておきました。

 差しあたって深入りせず、こういう注意点を拾い集めるための古典読みです。今するべきことは深入りではなく絨毯爆撃なのだ


 他にも、アレクサンドロス大王の逸話は知られてるけど、それ以前の古代ギリシャとなるといろいろ怪しくなってたり、まぁその辺のニュアンスが面白かったです。ソクラテスがなぜかローマ人になってたり(笑)。そういうニュアンスを掴んだところで、とりあえずこの本からはいったん離脱することにします。

 さて、では次の本を。どんどん行かないといつまでたっても修業期間が終わらないからね……。

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2016-09-04 カワバンガ!

[] レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 23:25  レオナルド・ダ・ヴィンチの手記を含むブックマーク  レオナルド・ダ・ヴィンチの手記のブックマークコメント



 がつがつ基本文献や有名な(というか私が名前を聞いたことがある)本を読んでいくキャンペーン。まぁ主に岩波文庫などを読んでいるわけですが。そんなわけでこれ。いきなりルネサンスに飛んだり古代に戻ったり忙しいけれど気にしない。


 まぁなんだ、気難しい人だったんだろうな、というのがヒシヒシ伝わって来る内容でありました(笑)。時を隔ててその才能に感嘆しながら触れるのは良いけど、友人付き合いしたら色々大変だろうな的な。


 一つのまとまった著作として書かれたものではなく、多年にわたる手記を編集し直したものなので、内容は雑多です。が、ダ・ヴィンチというオールラウンダーな才能ある人物の多才さを感じるにはその方が合ってるのでしょう。非常に楽しみました。

 居丈高に自身の能力を誇示したと思ったら書簡で金策に右往左往してたり、世間に流布している自然科学関連の説に目くじらを立てたと思ったらTwitter大喜利的な言葉遊びに嬉々として興じていたり。そういう振れ幅の広さが楽しい。

 また、以前アリストテレスの『動物誌』読んだ時にも感じた、「当代の天才が、興味関心の赴くままにブルドーザーのような力技で真理を探究している様子」、そのパワープレイぶりを見るのが楽しい(笑)。なんというか、知に対するスタミナが半端じゃないんですよね。


 いろいろな話題に触れているわけですが、一番面白かったのはやはり絵画技法について述べたところと、自然科学関連の記述。特にその双方の関係性。

 ダ・ヴィンチ自身は、流体力学や地学や気象学、生物学や何やらについて極めて実証主義的に取り組んでいるわけですが。一方で、この時代にはまだ科学のための言葉、科学用語が整備されていなかったわけで。その結果、すごく文学的な表現で科学が語られているのですね。

 一方で、ダ・ヴィンチにとって絵画技法は科学的な裏付けと不可分だったようで、人を描くには解剖学的な知識が必須だし、風景を描くには気象学や地理学の知見を込めるべきだと考えていたようです。

 この双方からの接近のおかげで、文と理が分かたれていなかった頃の幸福な同居を見る心地でした。

 もちろんのこと、今日の科学的知見から見れば誤ってる記述なんてのも少なくないのでしょうけどね。けどそれをあげつらったって何にもならない。そういう事よりも、分野を分かたずあらゆる知と創作へ自由に関心と活動をドライヴさせることができた時代の空気を味わうのが良いのだろうな、と思いながら読んでいました。

 何より、雑食的にあちこちつまみ食いするような読書しか出来ない私のような人間にとって、こういうあり方は非常に勇気づけられたり。


 そんな感じで。楽しみ方が分かって来るまで少し時間がかかりましたが、それに気づいてからは大変に楽しい読書になってくれました。

 さて次。

[] ケルトの薄明 23:25  ケルトの薄明を含むブックマーク  ケルトの薄明のブックマークコメント



 たまたま、Twitterのタイムライン辺りで、「柳田国男『遠野物語』のケルト版みたいな本」として本書の名前が挙がっていたので、なんとなく手に取ってみた次第。予備知識はほとんどなしでした。訳者である井村君江さんが妖精関連の本をたくさん出してる方だってことを知ってたくらいかしら。


 とりあえず、序文を読んだ時点で既に「あ、これめちゃめちゃ好みの本だ」と直感しました。言葉の選び方だけで分かる場合がありますよね、そういうこと。なので冒頭部分読んだだけで期待値が跳ね上がったのですが、その期待に違わない内容でした。

 小説であればストーリーや展開を楽しむとかセリフの機微を楽しむとか、あるいは評論やその他の書籍であれば新知見との出会いを楽しむとか、本にはいろんな楽しみがありますけれども、中でも言葉運びが醸す全体的な雰囲気に包まれるような、そうした気分を楽しむことが出来る読書というのがマレにあって。個人的に、読書体験の中でもそういうのは最上なのですよね。本書は正にそれでした。


 読むならエッセイとして読むべきなんでしょうが。著者自身もけっこう幻視とかしちゃったりもしている。ただ、妖精や怪異たちへの距離感とまなざしが良い。

人々の想像力というものは、夢想的なそして気まぐれなものに宿っているからで、その夢想や気まぐれを、悪とか善とかに結びつけるなら、その生命の息吹ともいえる、自由さが無くなってしまうからだ

 この何気ない一文が言い当ててることに、ゆっくりと頷かざるを得なかったというか。私が中学時代からずっと妖怪だの何だのに興味を惹かれて追いかけ続けてきたのも、要するにそういう「気まぐれ」な「自由さ」に魅せられたからだよなぁ、と思うわけです。

 善でも悪でもない、そして善や悪に結び付けようとすればたちまち霧散してしまう、そういう連中が好きだったんですよ、きっと。

 本書は、そういう自由で気まぐれな連中の息吹を久しぶりに私に吹き込んでくれた、とてもありがたい本でした。

 私自身、たまたま偶然の気まぐれで手に取ったわけですけど、気に入ってしまったのでいずれイエイツの他の本も読んでみようかなと思っているところです。まぁ、またいずれ。


 とりあえずそんな感じ。

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2016-07-21 れっどほっとちりぺっぱー

[] 機動戦士クロスボーンガンダムゴースト 完結 23:51  機動戦士クロスボーンガンダムゴースト 完結を含むブックマーク  機動戦士クロスボーンガンダムゴースト 完結のブックマークコメント



 コミックの発売日をチェックする習慣がないので12巻発売を見逃してて遅れてしまった。ともあれ、ついにクロスボーンガンダムゴースト、完結であります。めでたい。


 結論だけ言えば、最後まで大満足でありました。

 フォントという、戦闘のプロではないし武闘派でもない主人公が最終決戦でプロの軍人と戦い抜くには、やはり初代ガンダムアムロにとってのニュータイプ能力のような、何かしらの力が必要で……実際、ニュータイプを想起させるような言葉も散らしてあるんだけど、そこに「テクノロジーとの協調」を匂わせた辺り、さらにそこでそういう能力を変に神格化せずに現時点での限界も描いて見せた辺りのバランス感覚と手並みが非常に私好みでした。そしてこのテーマは、実は∀ガンダムテーマをも受け継いでいけるテーマなんですよね。

 このブログで再三感想として述べたように、スーパー能力で超強い主人公より、力は並だけどその場の機転で乗り切る系主人公が好きなので、フォントの活躍は最後まで本当に楽しかったです。


 そして、物語がエンジェルハイロゥ戦後に至った事で、長谷川先生は現在、宇宙世紀ガンダムの最先端を走っている事になるのですよ!w(Gセイバーを除けばw)

 さらに続編もあるという事なので期待しております。今、おそらく宇宙世紀を先に進められる位置にいるのは長谷川先生しかいないんですから。長い間、宇宙世紀ガンダムは年表の隙間を埋める事でやってきたけど、クロスボーンガンダムだけは、宇宙世紀を先へ進められるのだ! 私はそこが嬉しいんですよ。

 Vガンダム後の「宇宙戦国時代」の設定は、『Gのレコンギスタ』が見せた「すべてが統一されるのではなく、異なった文化や思考・思想を持った組織をむしろどんどん引き入れていく事で対立を相対化していく」可能性にもスイッチしやすい舞台だと思います。


 というわけで、今後も引き続きフォントの活躍が見られることに心うきうきしつつ。

 願わくは、敵役の人物造形にもっとクセがあると良いのかも知れません。キゾ中将のキャラクター的な魅力がもっと出せてたら、もっと面白くなってたんじゃないかなと思うので。

 ガンダムの敵役って、シロッコハマーンシャアもすごい屈折してて、その屈折が魅力だったりするんですよね。その辺が入って来たら、もっとガンダムらしくなるかなという個人的希望もあったり。


 とはいえ、作品的な厚みを積み重ね続けた今のクロスボーンなら、続きもきっと良いものになるだろうと期待しております。

 そんな感じ。

[] ベーオウルフ 23:51  ベーオウルフを含むブックマーク  ベーオウルフのブックマークコメント


ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩 (岩波文庫)

ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩 (岩波文庫)


 こうなったら文庫で手に入る英雄叙事詩は手あたり次第読んでやれ、という志が高いんだか低いんだか分からないノリで手に取ってみました。中世イギリスの英雄叙事詩。つい先日までタイトルすら知らなかった作品でした。


 なかなか印象深くて面白い作品でした。序盤に登場するのが、旧約聖書で「人類最初の殺人」を犯したカインの末裔だという巨人。このカインは犯した罪の呪いから様々な怪物魔物を末裔として残すことになったのだと説かれていて、キリスト教世界の「悪」の源泉がそんなところにもあったのか、と興味深く読んだのでした。


 他にも、道具立てや展開など興味深いところがいろいろありましたが……特に印象的だったのは、やはりベーオウルフが魔法とか神秘の力をほとんど借りずに、自分の武人としての実力ひとつで巨人や竜などの怪物を倒していく展開になってることでした。さながら「レベルを上げて物理で殴ればいい」の世界(笑)。

 また、ベーオウルフ、そして地の文あるいは語り手も、それが作中怪物扱いの巨人であるにも関わらず、相手を武人として扱うんですよね。何年にもわたって害をなし暴れ続けてきた怪物に対して、「相手は素手でいるのだから、自分も剣は使わずに正々堂々相手をしよう」と申し出るベーオウルフは、なかなかに異様です。

 思い出すのは、日本の酒呑童子退治などの鬼退治説話。平安の貴族の時代までは、呪的なアイテムや超常的な力、陰陽師などの呪術的な力が魔的なものに対抗する手段だったのが、源頼光たちは純粋に武力で鬼を退治してしまう、という「妖怪退治プロセスの変化」を、この『ベーオウルフ』という作品は思い出させてくれた感じです。……まぁ、訳文がヨーロッパの叙事詩というよりも完全に軍記物で、セリフ回しとか完全に日本の武士になってるあたりもそういう連想を助けたかも知れませんが(笑)。でも、訳した人もその辺意識して軍記物っぽく訳したんじゃないかとも勘繰りたくなるんですよね。


 ともあれ、いろいろと示唆的で楽しい読書でした。今は超有名古典を読む期間と定めているので、『ベーオウルフ』くらいの知名度の作品って読もうか読むまいか迷うんですけど、だいたいそういう微妙なところほど読んでみると面白かったりするから、なかなか悩ましいですw

 もういっそ、腰据えて気になったの全部読んじゃったほうが良いのかもな……。修業期間が二年くらい延びそうだけどw

[] スパイスなんでも小事典 23:51  スパイスなんでも小事典を含むブックマーク  スパイスなんでも小事典のブックマークコメント



 実は、6月半ばくらいから、自炊というか、料理を再び始めました。

 このブログの黎明期にちょっとだけやっていたんですが、結局やめちゃったんですよね。あの頃は一人暮らしでしたが現在は諸事情あって実家。食事はずっと家族に任せきりだったんですけど、自分なりにいろいろやってみたいという希望はあったので、再開した次第です。


 で、それに合わせて、メイン読書の合間に料理関係の本もちょこちょこ読んでたりします。レシピ集とか料理の基本みたいな本もですが、それ以外に、自分で料理始めてみた事で新たに興味関心の幅が広がったので、そこをちょこちょこ突いてみようかと。

 以前、東京散歩企画を始めたと同時に東京の歴史や地理に関する本を読んでた時期がありましたが、あれと同じノリです。新しい事を始めると、新しい好奇心の扉が開くわけで。


 本書は、見たまま、スパイスに関する雑学を詰め込んだ手軽な新書。非常に楽しみました。

 今まで踏み込んだことの無かったジャンルに初めて踏み込む読書ってやっぱり楽しいんですよ。誰も足を踏み入れてない、足跡が一つも無いまっさらな積雪の中をずんずん歩く感じ。

 料理や食材については、興味を向けたことが無くても、今までの人生でずっと身近にありつづけたモノでもあるんで、関連する知識を仕入れるのは非常に楽しかったです。それに、何でもそうですが、意外と知らない事が多い。


 「柚子こしょう」は胡椒ベースじゃない、とか、ローリエって実は月桂樹の事だとか。いちいち感心しながら楽しく読了

 今後も、引き続き古典読みがメイン読書ではありますが、息抜きにこういうのもちょっとずつ読んでいきたいです。

[] 小規模マルチ日記:ひきこもり生活 23:51  小規模マルチ日記:ひきこもり生活を含むブックマーク  小規模マルチ日記:ひきこもり生活のブックマークコメント



 いつも、シングルでプレイする時は野っ原に一軒家を建て、周辺に畑を設置するのですが。今回は山岳のえぐれた山肌に秘密基地的な拠点を建てております。

 こっから各種生産施設を周辺の平地に作ってもいいけれど……どうせならとことん秘密基地的に潜んでみてもいいのでは、という事になりまして。


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 山岳バイオームの岩山の中をくり抜いて、畑を作ってみました。

 さらにブランチマイニング坑道への入口も拠点内にありますし、植林場も山をくり抜いた中に作りました。なので初期に必要な生産活動は、大体拠点から外に出る必要なく、昼夜もモンスターも気にせずに行う事が可能です。

 何気に過去、清々しい朝の空気と共に植林場で木を切ってたら突然背後で「シュー」→即死、とかいう経験もありますからね……w ブランチマイニングから帰って来たら夜だった、モンスターを倒さないと拠点に戻れない、とかいうのも地味に面倒ですし、拠点から直接つながっている恩恵はけっこう大きいのです。

 なんだかんだで、ちょっと快適になってきた。


 というわけで、軽く初期拠点の内側を紹介しますと。


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 入り口を入ってすぐの一階。

 ゆくゆくは内装に工夫を凝らす建築もするかもですが、とりあえず初期拠点は装飾はあまり考えない感じでいこう、という事になっておりまして、岩山の元々の岩肌はもちろん、ちょっと土も見えていたりする(笑)。中央の柵は、半端に広い敷地に変化を持たせるパーテーション。動線を分断したりはしていないので、見た目ほどは邪魔になりません。

 で、このスクショの左側方向に


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 二階への階段と、地下ブランチマイニング場へのトロッコ


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 一方奥側の通路の先は二手に分かれてまして、左手側はエンチャント台、右側は


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 当面のアイテム貯蔵のための倉庫。柱は弟氏考案。


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 二階。まだ何に使うべきか決まってないスペースもけっこうあります。

 画像向かって左から順に、植林場、サトウキビ畑、そして小麦畑へとつながる入口。


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 植林場も完全に屋内になっています。


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 三階へは外階段でつながっており、


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 ベランダで弟氏によるガーデニングなども。

 話は少し前後しますが、地図埋め遠征時に入手したサボテンも、ここで地味に育成・収穫しています。


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 3階スペースもまだ空き室。いずれはポーション製造所でも作ろうかと思ったりもしておりますが、さてどうなるやら。



 ざっとこんな感じの拠点で過ごしております。

 マルチプレイというのも慣れないもので、相方がブランチマイニングや洞窟探索等で夜になってもベッドで寝られない(もしくは夜に気づかない)事もあるかと思いますが、こういう拠点なら朝が来るまで畑仕事や木材確保などで時間を潰せるし。なんだかんだでけっこう快適です。


 まぁ、畑や植林場はいずれもうちょっと大規模なものを作らざるを得ないですが……それはまた、いずれ。


 次回は地図埋めその他の様子などを軽くお送りしようかと思っております。

 毎度毎度スローペースの更新ですが、まぁ気長にお付き合いください。そんな感じで。

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