ゲオルグ・ビューヒナー Georg Buchner(1813-37) ドイツの劇作家、自然科学者。23歳の若さで夭折し生前にはほとんど無視されたに等しかったが二十世紀に入ると再評価というよりも「発見」され、現在では十九世紀ドイツ文学でもっとも重要な文学者の一人であるとされる。作品にドイツ史上最初の革命劇『ダントンの死』、おなじく最初にプロレタリアートを主人公としたと言われる『ヴォイツェク』、唯一の小説『レンツ』などがある。
Dichtungen, Schriften, Briefe und Dokumente作者:Buechner, GeorgDeutscher KlassikerverlagAmazon ビューヒナー『ダントンの死』第1幕第2場「横丁」より、シモンのセリフ。 SIMON Alter Virginius verhülle dein kahl Haupt. Der Rabe Schande sitzt darauf und hackt nach deinen Augen. Gebt mir ein Messer, Römer! Er sinkt um. 河出書房新社と鳥影社の全集とでは、解釈が異なる…
【読書・語学】 ▼フランシスコ会訳聖書。出エジプト記、マタイによる福音書、ヨブ記を終え、現在は詩編。 ▼ドイツ語の専門はビューヒナーにすることで一応決定した。また『ダントンの死』を最初から読む。 ▼ラテン語はアウグスティヌスを休止し、ウェルギリウスを試している。以前『アエネーイス』読んでいたけれど、一度リセットして最初に公にされた『牧歌』から順に。 ▼筑摩書房の『シェイクスピア全集』を読み始めた。ちくま文庫の新訳ではなくて、古本で安く買える昔の翻訳である。英語はシェイクスピアで決まりだが、現代語のためには新聞を読み、ドラマとニュースを視聴する。 ▼白水社の関根秀雄訳でモンテーニュの『随想録』を…
「いのちに溢れて生き生きとしている人は神の栄光です。」と2世紀の神学者エイレナイオスは言いました。悲しいことに、その説明は多くの人が現代のクリスチャンに対して抱いているイメージを反映していません。良くも悪くも、私たちクリスチャンは、むしろ束縛され、律儀で、抑圧されていると見なされています。活力は称賛されるよりも、非難される傾向があります。クリスチャンは、生命を高める者ではなく、生命を奪う者という評判をどこで得たのでしょうか? イエスご自身も、「彼らがいのちを得るため、またそれをより豊かに得るためにわたしが来たのです」と約束されました。何が私たちをその豊かな人生の実現から遠ざけているのでしょうか…
ベートーヴェンの『第九(合唱付)』は、昔(1974年12/6)東京文化会館にて、東ドイツの「ベルリン音楽祭」来日企画の一環としての、ベルリン(シンフォニー)交響楽団(現ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)の演奏を聴いている。指揮はクルト・ザンデルリンク(ザンデルリングとも表記)。ユダヤ人でナチスに追われてソビエトに逃げ、そこでムラヴィンスキーの指導を受けたり、ショスタコービチと親交を得たりの体験を経て、戦後東ドイツほかで活躍、シベリウスの作品の紹介などにも尽力している。合唱ソリスト:エリーザベト・ブロイル(ソプラノ)、アンネリース・ブルマイスター(アルト)、エバーハルト・ビューヒナー(テノー…
このブログでデタラメだ作り話だと何かにつけ批判しているジュール・ミシュレのLes Femmes de la Révolution (1854)(邦訳『革命の女たち』なおネットで公開されている。)だが、文学作品として面白いのは否定できない。 オランプ・ド・グージュのイメージ受容に関するドイツ語の論文によれば、本作品で描かれる女性たちは「ミシュレが理想に従って作り上げたもので、実在の人物とは何の関係もない*1」。だから私がいちいち文句を付ける必要もない。とはいえ、この本のせいでガブリエルやルイーズ*2はなんの面白みもない「平凡な妻や母」「可哀想な人」として扱われがちだ。私はそれが腹立たしい。 さて…
ゲーテについての論文を書きました 先日発行された『希土』48号(希土同人社)に、「演劇で病を治すことはできるか——ゲーテの『リラ』について」という論文が掲載されました。 こちらからPDFをダウンロードできます。 researchmap.jp ドイツ近代文学講義から出てきたテーマ 関西学院大学のドイツ近代文学の授業で取り上げてきたゲーテの歌唱劇「リラ」を論じています。この授業については、去年も秋ごろに内容をまとめていますが、だいたい3年くらい同じテーマで少しずつ内容を変えて続けています。 schlossbaerental.hatenablog.com 2020年に関西学院大学でドイツ近代文学にお…
つくあやの一汁三菜時短献立: ワン・クッキングムック (ONE COOKING MOOK)作者:つくあやワン・パブリッシングAmazon 最後に学ばなくてはいけないのは(最後ではないかも知れないが)、家事である。 食事はバランスよく栄養が摂れれば、それでよいという人間である。味の変化や見た目の華やかさは求めていない。自分で作るなら短時間で済ませたい。 そこで、15分から30分で一汁三菜を準備しようという時短レシピの本を読んでみた。短時間で全部一から作るのではない。週1回買い物をし、その日のうちに仕分けと下準備を済ませておく(買い物をした日はちょっと大変だ)。当日にちゃんと作るのは1品か2品。あ…
有名な『おおきなかぶ』の作者でもあるロシア(ソ連)の作家アレクセイ・トルストイによる、ビューヒナー『ダントンの死』の翻案 (1919)。 存在はずっと知っていたが、戦前出版で図書館によっては貴重書扱いされているらしいので読むのは諦めかけていた。だがなんと国会図書館デジタルコレクションで読めた。しかも登録不要で。 dl.ndl.go.jp 概観 ロベスピエールとサン=ジュストのカミーユ・デムーラン評 ルイズの自我 心情はよく理解できるが、それでもどこか「コレジャナイ」ダントン その他 戯曲の成立過程
書こう書こうと思っているうちにもう革命記念日が到来してしまった。 先日(7月2日)、宝塚歌劇団『1789 バスティーユの恋人たち』のライブビューイングを観に行った。一瞬だけ宝塚大劇場に行ってみようかな?とはじめは考えたが、超人気だったらしいので断念して映画館でのライビュを選択した。 筆者は現在宝塚歌劇とは縁のない生活を送っている。親会社が阪急グループということで、「阪急ブレーブス*1?」と思ったり、現在は阪神タイガースと同グループで年始には阪神の選手と団員が並んでポスターになると聞けば「直球破壊王子*2は出るのかな。(※出ません)江越*3は羽根背負ったことあるのかな(※ありません)」と思ったり…
今回はロマン・ロランの戯曲『ダントン』の感想。 同じ題材でもビューヒナー『ダントンの死』やアンジェイ・ワイダ監督の映画『ダントン』(原作はスタニスワヴァ・プシビシェフツカの戯曲)の影に隠れている感の強い(そもそもロマン・ロラン自体最近の日本のフランス文学界で影が薄い)この戯曲だが、フランス革命に興味がある人にとっては面白いのではないか。もちろん文学史的価値としては「フランス革命劇」連作における「民衆の声の重要性」などの方が高いんだろう。だがこれはアカデミックな書きものではないので自由に語る。 ダントンは何をしたかったのか? 弱き者の絶望の叫び リュシル・デムーランは「軽薄で愚かな良妻」か? そ…
その誠実な連中ってのが我慢ならなかったんだ。ああいうそっくり返った謹厳居士たちを見てると、蹴っとばしてやらずにはいられなくなるんだ。僕の生まれつきの気性がこうなんだからな。(p. 136) 『ダントンの死』は個人的思い入れの強い作品なので、まずは思い出話から。 ブラック校則なんて吹っ飛ばせ 友情,死,生,リュシル Who is Julie? ブラック校則なんて吹っ飛ばせ 私の学校はブラック校則にほぼ当てはまるような厳しい校則があった。(「ブラック校則」という言葉で束縛の激しい校則が問題視されるようになった3年くらい前の話だ)もっと我慢できなかったのは、過度な制約を受け入れるばかりか他人にも従う…