歌人・作家・翻訳家。哲学者の黒崎政男は夫。 東京大学理学部生物学科をへて、同大学院比較文学比較文化修士課程修了。白百合女子大学文学部教授。専門は英米ファンタジー。 『ファンタジーの魔法空間』(岩波書店)により第27回日本児童文学学会賞、『歌う石』(O・R・メリング、訳書、講談社)により第43回サンケイ児童文学賞受賞。 裏千家茶道準教授、藤間流名取でもある。
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 11番目の題は「あざらし」です。また動物かぁ。 北限のあざらしを狩れ連弾のわれらに開くピアノの翼 (一郎次郎) 世界経済わづかに傾ぐ午後を離れ手帖をあざらしに見せてゐる (七福猫) 鉄線が咲き洗濯機まわる道横抱きにしてアザラシ買い来ぬ (ぐるぐる) 北限のあざらしを狩れ連弾のわれらに開くピアノの翼 (一郎次郎) 「一郎次郎」の歌は、(実在のものかどうかは分かりませんが)あざらし狩りをテーマにした曲を2人で弾いているのかなぁと思いました。「ピアノの翼」はグランドピアノの蓋…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 前回までの10回で1日目が終わり、次からは2日目になります。2日目はまたルールが変わっています。幕間ではその理由や歌合にかける熱い思い、以前行った歌合で提出された歌とそのコメントなどが語られていますが、「注意書き」に書いたように歌合に提出されたもの以外の歌の引用は差し控えます。2日目ルールおよびチーム分けも「注意書き」に書いているのでご参照ください。 1試合目の題は「ふらここ」。ブランコのことで、ブランコ、鞦韆、ゆさはり、ふらんど、半仙戯など、どの呼び方を使ってもいいよ…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 1日目の対戦はあらかじめ題と対戦相手が伝えられており、当日までに歌を準備してくるという方式で行われています。最初の題は「海」。 奪うため破壊するため(力あれ)海道をゆく倭寇のように (田中槐) 連綿と海老の種族を生みだしてわが惑星(プラネット)のくすくす笑ひ (井辻朱美) *(プラネット)はルビ これをどう読むか。作者はコメントしないのがルールで、つまり「正解」はないので、基本的には自チームを応援するということになります。自分だったらどうかなって考えました。 まず田中槐…
書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 井辻朱美 想うとは水ににじんでふるえる声紋 けばだちながら積まれゆく雲 全体的に宇宙とか、遥かなる存在のようなものを感じさせる歌が多いなーと思いながら読みました。 水球にただよう小エビも水草もわたくしにいたるみちすじであった なんかも、球状の水槽の中の水草とか小エビとかを見ながら、そこからはるばる自分に連なってくる生命とか時間を思い起こさせる感じです。しかし、一つどうしても分からないものがあるのですが、 死にいたるまでの愛とふ言葉もて北半球に生れたる甲冑 …
[私の百人一首] その3 65 眉根よせて眠れる妻を見おろせり夢にてはせめて楽しくあれよ (上田三四二1964『雉』、妻が「眉を寄せて」眠っている、辛い夢を見ているのだろうか、「せめて夢くらいは楽しくあってほしい」と妻をいたわる) 66 あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ (小野茂樹『羊雲離散』1968、作者1936~70のごく初期の歌と思われる、詠まれている相手は、東京教育大学付属中学~高校と一貫して作者の恋人で、後の妻の青山雅子、海辺でデートをしたのだろう、ただただ美しい歌) 67 はかなかりしわれに破れし恋ありてただおびえゐき美貌のまへに (香川進『湾』1957、作者1…
// ピーター・S・ビーグル〈最後のユニコーン〉鏡明訳と、続編〈旅立ちのスーズ〉井辻朱美訳。後者には「二つの心臓」「スーズ」の2編が収録されている。 いずれもハヤカワ文庫FTから2023年秋に改めて刊行されたものを、読み終わった。 最後のユニコーン 旅立ちのスーズ 最後のユニコーン 私は本を開いている間、特に中盤以降ずっと、ハガード王のことを考えていた。 少し前にマキリップの〈妖女サイベルの呼び声〉を読んで、あのドリード王に延々と思いを馳せていたみたいに。 あーあ、また「何かを信じられなくなった王様」のこと考えてるよ、この人……って自分に対して呆れていたら、この〈最後のユニコーン〉のあとがきで…
2016年に「かばん」誌に提出した文章。 みつめ・られる(あう)・たんかとみいえひろこ 大阪は震度四だったみたいですが、地震怖かったです。会社の帰りに見たいつもの川が、異様にきれいに見えました。まだ自分の感覚がすこしふわふわして、パラレルワールドな感覚が近しくなりました。できることはできるうちに×こわい×そのほかいろいろな感覚を自覚的にはっきり立たせようとしている、うちに、書いて提出しよう。 ロバートは聴衆の方を見やりました。「私たちに知的障害があるから、あなたたちが私たちのことをどう考えているか知らないと思わないで下さい」。 私たち=「健常者」の急所を突く発言である。一先ず、私たち=「健常者…
つぶやく現代の短歌史(1985-2021) 「口語化」する短歌の言葉と心を読みとく作者:大野道夫はる書房Amazon大野道夫『つぶやく現代の短歌史 1985-2021』*1で、1990年代の「時代背景」として先ず第一に挙げられているのは「バブル崩壊」である; 一九九〇年代の時代背景は、やはりバブル経済の崩壊であろう。金融引き締め政策により株価、地価が急落してバブル経済が崩壊し、社会は長期的な不況となった。「ライトヴァース」のような「明るい・かるい」歌は、もはや手放しではうたえなくなっていったのである。(p,94)そのほかに、「阪神・淡路大震災」、「オウム真理教事件」、「平成の大合併」、「非自民…
第五章「物語は「神なるもの」をどう描いて来たか」 ①「SF小説に見る宗教性と反宗教性」 ②「科学合理性の魅惑と限界」 ③「後期クイーン問題と神」 ④「酸鼻と陰惨のゴシック・ホラー」 ⑤「ナルニアへ続く箪笥」 第六章「性と聖」 ①「推し活は「性的消費」なのか」 ②「エロティシズムと聖なるもの」 ③「泣けるゲームやアニメの神聖な構造」 ④「愛という言葉すら忘れ去られて」 ⑤「詩人が見た夢」 ⑥「性と聖を統合し昇華する」 第七章「推し文化のスピリチュアルなかたち」 ①「ふたつの殺人事件」 ②「共食いの匣」 ③「悪の華、咲きそめる」 ④「尊くもグロテスク」 ⑤「その都市の名はオメラス」 ⑥「実存的空虚…
【対談】「図書新聞」2022年4月2日号で樺山三英さんとの対談「内宇宙からのゲリラ戦」 訂正「月の呼ぶ村」→「月の飛ぶ村」【広告】「図書新聞」2022年4月2日号に、『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』(小鳥遊書房)【批評】「詩界」No.269(日本詩人クラブ)に「形而上詩の課題――武子和幸『モイライの眼差し』論」【翻訳監修】『ユーベルスライク冒険集』(ホビージャパン)【共訳】『ウォーハンマーRPG キャンペーン・シナリオ 眠れぬ夜と息つけぬ昼』(ホビージャパン)【被言及】大和田始さんによる「SF Prologue Wave」に『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』書評」【筆頭訳】『ライクラ…
毎日の朝ラン、続いてます。 外をゆっくり10キロから12キロJOG 日々、少しずつ疲れて弱っていく感じと ほんのちょっと強くなってきて楽に走れる感じと 両方あります。 弱っているけど走れる これは良いことなんだろうか そして、休日の昼間はエアコンの効いた室内で 本を読んだりしてダラダラと過ごす 外は照り付ける太陽。 スマホの天気予報を見ると、現在の気温35℃だって 「危険な暑さ」と。 夏は暑いものだけど、「危険」って何よ 外は本来、楽しくて美しくて気持ちの良いところ いったい、いつから危険な場所になってしまったんだろう それでも朝は若干涼しく、毎日少しずつ違う景色が見られて 楽しい 走りながら…
今日も今日とてTwitterを見ていたら(何、X? 知らないな)、なぜか水野良の『ロードス島戦記』がトレンド入りしていました。どうやらブックウォーカーでセールをやっているおかげらしい。 あるいはこのツイートが原因なのかもしれないけれど、よくわからない。 このキャラの名前と、登場するアニメの名前を知っている方いるかなぁ。 pic.twitter.com/eQTGYdLa1G — 賢龍帝 (@koutei007) 2023年8月2日 いまとなってはファンタジー小説の古典というか、「過去の名作」の位置づけで、あらたに読もうという人もそれほど多くはないと思うけれど、ぼくにとっては青春の一作です。 ぼく…
※notionで書いていたものの転載 antique-bicycle-5ae.notion.site 7/14 Fri 仕事が比較的少なく、計4時間くらいで与えられたものを終えた。これは河野咲子さんの「走り書き日記」を読んで私もやりたい!と始められた。Notionに書く形式は丸パクリしている。いつも何かに触発されて中断していた日記を再開するが、またたぶん中断がある。図書館で『存在の耐えられない軽さ』を借りてきて、第三部まで読む。文はテンポのよい進みでわりと乾いた感じがするが、出てくる女が情念系のところがいい。クンデラが一昨日亡くなって、はじめて読んでみている。今下のゴミ箱ボタンにうっかり手が触…
「幻想文学46 特集:夢文学大全」(アトリエOCTA 1996年) 文学系雑誌の夢特集続き。「幻想文学」は、準備号だった「金羊毛」を含め創刊号から10年ぐらい(36号まで)は毎号買っていました。当時は通読することはなく新刊展望と気に入った記事だけを読んでいました。この号も買ったときに、いくつか読んだ形跡がありました。今回はあらためて通読してみて、「夢文学大全」という名にふさわしく、夢に関する文学のいろんな領域にまたがった論評を網羅しているのに感心しました。とくに、石堂藍の「夢文学必携」の膨大な量には唖然。あえて言えば、詩(短歌、俳句)の分野が少し手薄か。これを読んで、読みたい本がたくさん出てき…