「つまらない忖度《そんたく》をして 悲しがる女房たちですね。 ただ今のお言葉のように、 私はどんなことも 自分の信頼する妻は許してくれるものと 暢気《のんき》に思っておりまして、 わがままに外を遊びまわりまして 御無沙汰をするようなこともありましたが、 もう私をかばってくれる妻が いなくなったのですから 私は暢気な心などを持っていられるわけもありません。 すぐにまた御訪問をしましょう」 と言って、 出て行く源氏を見送ったあとで、 大臣は今日まで源氏の住んでいた座敷、 かつては娘夫婦の暮らした所へはいって行った。 物の置き所も、してある室内の装飾も、 以前と何一つ変わっていないが、 はなはだしく…