1. 黒田が「マルクス主義の土着化」という場合、梅本主体性論が根底にあるのは間違いない。自分自身(戦中軍国主義に対して戦時中に何も抵抗できなかったとか、転向してしまったとか、そもそも自分自身が軍国主義者であったとかいうこと)への反省ぬきにソ連製の「公認マルクス主義」に拝跪するという当時の風潮を梅本は厳しく批判した。それが黒田のいう「舶来品」とか「移植観念性」とかいうことの物質的基礎にあるのではないかと思う。自分自身がマルクス主義者になる前の価値観の自己否定や内的苦闘をつうじてはじめてマルクス主義を主体化できる(梅本のいう「史的唯物論における人間論」)。これが梅本のいいたいことなのだからである。…