マルクス疎外論のヘーゲル疎外論への還元 百木は、廣松渉と同様に、マルクスの疎外という概念を、ヘーゲルの疎外という概念と同じものとみなし、本来的な人間を想定していると断罪して否定するのである。百木の論述は、廣松のそれよりももっと粗雑であるとしても、そうである。 廣松は、ある思想家が、彼に先行する思想家の概念を批判的に摂取して創造した概念を、彼によって批判的に改作された概念と同一のものとみなし、それに還元するかたちで解釈する。当の思想家の概念の独自的な意味内容をつかみとることができないのである。すなわち、廣松は、マルクスがヘーゲルの疎外という概念を唯物論的に転倒して創造した独自の疎外という概念を、…