あたらしい哲学の創造 マルクスは、なぜ、へーゲル弁証法を批判し独自の論理を新たに解明しなければならないと考えたのか。このことを百木は何ら理解できないのである。ヘーゲルの弁証法とは、対象的現実を思惟のなかで再生産し思惟の中で再興する、つまり解釈するための方法である、といえる。これをマルクスは『ヘーゲル弁証法と哲学一般との批判』(『へ弁哲』と略称する)のなかで抉り出している。重要なのは、ではマルクスはヘーゲル弁証法から何を批判的に摂取したのか、ということである。マルクスは『へ弁哲』のなかで次のように言う。「ヘーゲルの『現象学』とその最終的な成果とにおいて――運動し産出する原理としての否定性の弁証法…