らした。しかも、千五百ルーブリの金を持っていた、――一たいそれでは金をどこから持って来たのだ?』と諸君はおっしゃるでしょう。けれど、千五百ルーブリだけ見つかって、あとの半分がどうしても見つからなかったという事実は、その金がぜんぜん別の金、――封筒にも何にも入ったことのない金かもしれぬ、ということを立証するではありませんか。すでに厳密な考究によって証明されている時間から計算しても、被告が女中たちのところから、すぐ官吏ペルホーチンのところへ走って行って、自分の家へもどこへも立ち寄らなかったし、その後も、しじゅう人中に立ちまじっていたことは、予審でも認められ、かつ証明されています。してみれば、被告が…
[#1字下げ]第十三篇 エピローグ[#「第十三篇 エピローグ」は大見出し] [#3字下げ]第一 ミーチャ救済の計画[#「第一 ミーチャ救済の計画」は中見出し] ミーチャの公判後、五日目の早朝まだ九時ごろに、アリョーシャはカチェリーナを訪れた。それは彼ら二人にとって重要な一つの事件について、最後の相談をしたうえ、ある依頼をはたすためであった。彼女は、いつぞやグルーシェンカの訪問を受けた時と同じ部屋で応接した。すぐ隣りの部屋には、譫妄狂にかかったイヴァンが、人事不省のまま横たわっていた。カチェリーナはあの公判のすぐあとで、意識を失った病めるイヴァンを、わが家へ運ばせたのである。彼女は、将来かならず…