年経つる 苫屋《とまや》も荒れて うき波の 帰る方にや 身をたぐへまし 源氏が人目を忍んで送った手紙‥ 明石の君は自分の気持ちをそのまま書いた返歌をする🪷 (源氏の君に by 明石の君) 〜長年住みなれたこの苫屋も、 あなた様が立ち去った後は荒れはてて つらい思いをしましょうから、 いっそ打ち返す波の方に 身を投げてしまおうかしら 【第13帖 明石 あかし】 言うともなくこう言うのを、源氏は恨んで、 逢《あ》ふまでの かたみに契る 中の緒《を》の しらべはことに 変はらざらなん と言ったが、 なおこの琴の調子が狂わない間に必ず逢おうとも言いなだめていた。 信頼はしていても目の前の別れがただただ…