登場人物 私:希少性に価値を見出す、古参のアガベコレクター。 店主:馴染みの植物店のオーナー。市場の残酷さを知っている。 『複製された神(クローン)』 その夜、私は震える指先で「入札する」のボタンを押した。 オークション画面に表示された数字は、500,000円。 私の月収を優に超える金額だ。 だが、モニターの向こうにある「それ」には、金銭には代えがたい魔力が宿っていた。 アガベ・チタノタ『カイザー(皇帝)』。 海外の著名な育種家が作出した、伝説的なクローン(親株)の直子(ちょくし)。 黒く焼け焦げたような長いトップスパイン(上棘)。葉を噛み砕くかのように内側へ鋭く湾曲する鋸歯。そして、深海のよ…