白土三平の漫画。 小学館の漫画以下2誌で連載された。 『週刊少年サンデー』(1965年〜1966年) 『ビッグコミック』(1982年〜1986年)
物語は、「カムイ伝」第一部で幕府の重要機密を知った がゆえに、追われる身となった抜け忍カムイの逃避行を描く。
1969年4月より、フジテレビ系で「忍風カムイ外伝」としてアニメ化された(全26話)。 2009年9月、崔洋一監督、松山ケンイチ主演で映画化。
ついに『カムイ外伝』最終回となりました。 ネタバレしますのでご注意を。 「伊児奈」 イコナ。 ここでもカムイは偶然母子が心中しようとする場面に出会ってしまい咄嗟に救け金を渡して去っていく。 『カムイ外伝』一部でのカムイは「疑心暗鬼」がタイトルになるほど他人を信じることができず出会う人間が絶えず追手ではないかと怯え緊張し殺気を発していたが第二部の後に行くほど彼は出会う人間を救けていく。 前回の稲葉屋編などは出会った人間しかもカムイを襲って来た人間こそを救け善人へと導く。その姿はここで形容された「風」というより「神」に近い。仏のようとも天使ともいえる。 がそれでもカムイは去ってしまう。 カムイが去…
これは一気に書かねばならない。 ネタバレしますのでご注意を。 「仕掛け崩れ」 前回でカムイに負けてしまった橘左近はチンピラから前金の二十五両を盗まれてしまう。 しかしこれもカムイが奪い返してしまうのだ。 韋駄天と自負する吉次は追いかけてきたカムイをまいてやれと逃げ出したがどこへ行ってもカムイの方はすぐそばに立っている。 完敗した吉次は金を渡しカムイの手下になると言い出す。 カムイはすっかり口入屋の若頭に収まり部下を引き連れて歩く身分となっていた。吉次をその配下においたのだ。 白土氏はリアルなタッチで描写していくが若頭になったカムイが忍びの時のままのポニーテールなのはあり得ないんだろうけどこれは…
実はこの巻だけ買っていないのに気づかないままだったと慌てて購入しました。 そのせいもあるのかちょっと不思議な印象を受けました。 ネタバレしますのでご注意を。 ここまで老人がもしくは子供がカムイに好意を持ち父子のような関係性が築かれる話はあったけど同じ年齢ほどの男との友情を感じさせる出会いは初めてなのいではないだろうか。 むろんこの時点ではあまりに好意的で「追忍では」とこちらが身構えてしまうけど。 カムイはウツセに対しても仲間になろう、という気持ちを見せたのにもかかわらず拒まれてしまった。 今回は逆。 カムイから助けられたとかいうのでもなく「一緒に組まないか」と言ってにっこり笑う。カムイよりも背…
今回の『カムイ外伝』読書は横山光輝氏の作品を読むなかで白土三平氏からの影響を感じて再読しているのですがそもそも両者は同時期の作家であり(白土氏が2歳年上)逆に白土氏が横山氏の影響を受けたことはないのかな、とも考えました。 ふたりのプロフィールを比べると作家活動開始時期は逆に横山氏の方が先である。白土氏は紙芝居製作や劇団の背景などの仕事を経て漫画家になっているので漫画家としてはむしろ横山氏の方が先輩でもあるのだ、となれば白土氏が横山氏の影響を受けていることもあるのかもしれません。 ネタバレしますのでご注意を。 「掛け捕り」 年老いた川漁師の物語だ。が、心臓の発作も時々起こり以前のように思うように…
これが本当にほんとうの『カムイ外伝』で一番心に残った作品です。 いやほんとうにい。 ネタバレしまうのでご注意を。 カムイを詰めた追忍は熊の三本指によって逆襲されカムイに仕留められる。 三本指もまた追忍に瀕死の状態にされカムイも頽れた。 だが雪の中三本指は再び立ち上がってカムイを探しその体を抱きしめたのだった。 再びカムイが目を覚ました時彼は竜神の安兵衛とその仲間たちによって介抱されていたと知る。 そして安兵衛から「クマが子供を抱くようにあなたを抱えておりました」と聞き泣き崩れた。三本指は体を爆破されながら自分を守ってくれたのだ。しかもそれはもしかしたらカムイの忍術・獣遁による死だったかもしれな…
この表紙は非常にカムイらしくていいなあ。 脚の描き方よ。 ネタバレしますのでご注意を。 「心旅」 ご禁制の品を秘して運ぶ裏街道があった。 普通の旅人が通ることのない山道には飢えた狼が現れる。 その狼たちの怒りを鎮めるために生贄となる者が必要だった。 旅を続けるカムイは人前で半裸になって見世物になっている少女が男たちに襲われるのを助ける。 何故と問うカムイに少女は「自分が誰かわからない。それを探している」という。自分でつけた名前は「アキ」だという。 自分の明日を得る為に昔をたずねる心旅か、とカムイは考える。いわゆる自分探しの旅なのだろう。 カムイはアキの目印になるものを凧に描いてあげれば誰かの目…
印象的なこの場面がいつまでも残る。 ネタバレしますのでご注意を。 「草薙」 前回の戦い後カムイは舞様に再会するが一方のウツセは小平太という男児と出会う。 この小平太の物語というか小平太の仕草が忘れられないものだった。 という台詞は本作について何度も書いている気がするが。 小平太は家を出た父を探して旅をしていた。 生まれてすぐ父と別れたため顔も覚えてはいない。 母はせめて父の太刀筋をと教え一年前に死んでしまったのだ。小平太は父ではないかと思う武士に出会うと母から教わった太刀筋を再現して問いかけるのだった。 ウツセはカムイに勝ったと自負しながらもとどめをさせなかった己に思い悩む。 ともに落ちればカ…
『カムイ外伝』の面白さはここから先にあるのではないでしょうか。 ネタバレしますのでご注意を。 この『カムイ外伝』記録は横山光輝『バビル2世』および『その名は101』を読んでいるとどうしても『カムイ外伝』が下敷きになっている気がして本作を読まずにおれなくなったことから始まった。 なのでどうしても比較批判をしたくなる。 確かに『カムイ外伝』第一部は戦闘アクションが主体でよく似ていると言えるが『カムイ外伝』の面白さは第二部から社会の中で働きながら旅をしていくカムイの姿にある。 『101』は『バビル2世』と同じようにアクションを続けていく物語なので意外性が足りなかったのではと思う。 『101』で浩一が…
『カムイ外伝』一筋縄ではいかない。 様々に心に残る物語が綴られるがこの「黒塚の風」が一番と言われる方も多いはず。 その良さが簡単には表せないがなんとか記してみよう。 ネタバレしますのでご注意を。 本編の主人公は上の画像手前に映る綺麗とはお世辞にもいえない中年の醜女である。 名を「黒塚のお蝶」という。 カムイは言わば狂言回しの役目といったところだろうか。 とはいえこれがもしお蝶だけの物語であればあまりにも教訓めいてしまうだろうものをカムイの存在と物語によってより味わい深いものになっているのだろう。 まずは冒頭お蝶という醜い中年女の底意地の悪いという言葉では生ぬるい悪辣な行動と心情が描かれる。 人…
2009年崔洋一監督、松山ケンイチ主演で『カムイ外伝』として映画化された本筋はこのスガル編からきているのもあり翻訳化された単行本もこの編であるので『カムイ外伝』で最も有名なパートかもしれません。 確かに非人として生まれ忍者の修行をして抜け忍となったカムイがもうひとりの女抜け忍と出会い人間社会で生活する道を見る重要なエピソードなのです。 ネタバレしますのでご注意を。 第二部に入った時点で書くべきだったのに忘れていた。 『カムイ外伝』第二部から描写がいわゆるマンガ調から劇画へと変化している。実を言えば私はマンガ調の絵の方が好きなのではあるけれど『カムイ外伝』第一部が抜け忍としてのアクションが主体だ…