昭和9年生まれの父。この夏で90歳になる。 背筋もしゃんとして、マンガに出てくるようなヨボヨボの爺さん、という感じでは全くない。高齢になると食が細くなるというが、そんなことはなく朝からご飯をおかわりする、そんな衰え知らずの父だ。まだまだ長生きしそう。 この父、ちゃっちきの大工だった。今のように建設会社に所属する作業員とは違い、父の時代は棟梁に弟子入りをしてそのまま棟梁の元で働くか、または数年で一人立ちをするかだった。父は後者だ。いわゆる一人親方であった。 昭和30年代~50年代は、建築バブルと言われる時代で父はよく働いていた。盆と正月くらいしか休んでいなかったのを覚えている。 父は、左手人差し…