gamebook(英)
ゲーム要素を持つ書籍。物語が幾つかの部分(パラグラフ)に分割されていて、そのパラグラフ毎に幾つかの選択が用意されており、読者が自分で選択を行なう事で物語を好きな方向に進めることができる。途中でサイコロを振るなどのランダム要素を盛り込んでいたり、所持品の管理などを行なったりする。
物語は数十〜数百の段落(パラグラフ)に分割されており、それぞれに番号が振られている。読者はまず冒頭に書かれている導入部を読み、続いてパラグラフに進む。各パラグラフの最後には何らかの選択(例:右へ行くか、左へ行くか)が示されるので、読者はいずれかを選択し、各選択毎に示された番号のパラグラフに進む。進んだパラグラフでも同様に選択を行い、この選択を何らかの結末(ハッピーエンド、バッドエンド、等)に到達するまで繰り返す。内容によっては、持ち物の管理・敵との戦闘・罠の解除等を行なう事が有る。
ゲームブックの始祖と考えられるのは、一部では「パラグラフ小説」(branching-plot novel)と呼ばれる形式の小説で、有名なものとして、アメリカのバンタムブックスから児童向けにリリースされた「Choose Your Own Adventure」シリーズ(1979-1998)が挙げられる。このシリーズは、物語に幾つかの分岐が用意され、読者の選択により異なった結末に到達する、というタイプの分岐小説だった(ただしサイコロ振りなどの要素は無し)。
同様にゲームブックの先駆けとされるのは、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)の一人用のシナリオである。これは1970年代後半にアメリカのゲームメーカーであるフライング・バッファロー社が自社のTPRG「T&T(トンネルズ・アンド・トロールズ)」向けにリリースしたものが始まりだとされる。これらはTRPGをゲームマスター無しでプレイできるようにするもので、ゲームマスターの代わりに状況を説明するパラグラフが用意され、プレイヤーはパラグラフの最後に用意された選択肢から行動を選び冒険を行なう、というものだった。
1980年代前半に登場した「ゲームブック」は、前述のTRPG用の一人用シナリオを書籍の形にしたものだった。別売りのルールブックは必要なく、本に必要なルールがすべて含まれており、またキャラクターの作成や様々なルールも本格的なTRPGと比較して簡略化されており、手軽にプレイできるように工夫されていた。
このような「ゲームブック」はイギリス人の「スティーブ・ジャクソン(英)」と「イアン・リビングストン」が考案した。二人はイギリス国内でTRPGを販売する際に、まず概念を知ってもらおうと、TRPGの一人用シナリオを書籍形式に置き換えたゲームブックを生み出して発売した。二人の作り出したゲームブックのシリーズ「ファイティング・ファンタジー」シリーズは爆発的ヒットとなり、本シリーズによりゲームブックの概念が普及した。*1
1984年に社会思想社が翻訳出版したファイティング・ファンタジー・シリーズの第1作目「火吹山の魔法使い(ひふきさんのまほうつかい)」が大ヒットとなり、日本にゲームブックのブームが到来した。以後「社会思想社」を追って無数の出版社が参入し、その後約3年間続いた全盛期には、海外の作品の翻訳版や、日本独自の物(完全オリジナル、アニメ・漫画・ゲームのキャラクターを使ったもの、等)が溢れることとなった。
しかし1989年頃には完全にブームは去り、1990年代以降は殆ど忘れ去られた存在となった。衰退の理由は幾つか提唱されているが、以下のようなものではないかと考えられる。
等々。
その後、ゲームブックは長い間忘れ去られた存在だったが、2001年になって創土社がゲームブック事業に参入した。創土社は過去の名作の復刊と、少数ではあるが完全新作の発売を行っている。また他社でも児童向け書籍などのレーベルで少数だがゲームブックを発売する動きも見られる。
2010年代に入ると、書籍以外にアプリでゲームブックが発売されるようになった。フェイス・ワンダーワークス社は「iGameBook」ブランドでゲームブックアプリを発売している。同ブランドでは、書籍版ゲームブックの移植アプリの他に、ブランドオリジナル作品も発売している。
上記以外に「キャラクターが描かれた専用の書籍を持ち寄り、1対1でプレイヤー同士が対戦する」形式のゲームもゲームブックと呼ばれることがある。アメリカのゲームメーカー「NOVA GAMES」から発売されているファンタジー系キャラクターの対戦ゲーム「Lost Worlds」シリーズや、第一次世界大戦中の航空機同士の戦闘をテーマとする「ACE of ACES」シリーズなどが有名。このタイプはNOVA GAMESの商品名に倣って「Combat Book」とも呼ばれる。日本では1986-87年頃に上記のシリーズが日本ソフトバンクから「LOST WORLDS 失われた世界」「エース・オブ・エーシーズ」の名前で翻訳されて発売された。その後長らく絶版だったが、2000年代に入ってからホビージャパンが、NOVA社のLost Worldsのゲームシステムに日本独自のキャラ(アニメ絵美女キャラ)を組み合わせた「クイーンズブレイド」をリリースしている。