学生時代から30歳になったころまで岩波書店発行の月刊誌「世界」を定期購読していた。そのころよく読んだ常連の寄稿者は桑原武夫、丸山眞男(真男)、加藤周一そして伊東光晴らであった。 私は桑原武夫は偉い人だと思い私淑した。その後、岩波から出た10巻の全集も買ってだいたい読んだほどだ。晩年の著作である「文学序説」(岩波全書)が出たとき当然買って読んだ。全部ではないが。実は、その中のいくつかの論説は「世界」や他の雑誌で読んだことがあったものだった。たとえば、「悪の文学」だったかは確か「世界」に載ったときに読んだ。ちなみに、桑原の「文学入門」(岩波新書)も読んだ。出だしが印象的で、文学の意味を問うことはむ…